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日本臨床歯周病学会 第37回年次大会 開催される
 6月22日(土),23日(日)の両日,札幌コンベンションセンター(札幌市白石区)にて標記大会が「歯根膜を活かす」をテーマに開催され(大会長:今村琢也氏/北海道),歯科医師,歯科衛生士を中心に1,400名ほどの歯科関係者が参加した.
▲新設されたInternational Sessionの演者,座長,学会理事長各氏
▲歯科医師ケースプレゼンテーションの演者,座長,学会理事長各氏
 歯科医師セッションの特別講演「歯根膜を活かす 基礎・診断編」(座長:菅野寿一氏/北海道,江澤庸博氏/東京都)では,冒頭で菅野氏が「ぺネトレーションによってプローブ先端は上皮を穿孔するか」「歯内歯周複合病変の合理的診断法は」「外傷性咬合によって生じた歯周ポケットに細菌性の炎症が生じることによるアタッチメントロスの喪失は起こりうるか」との問題提起を行った.
 それを受けて菅谷 勉氏(北大)は「移植再植・垂直歯根破折・剥離破折から考える歯根膜の基礎と臨床」と題し,ペネトレーションとはプロービングによって検出されるアタッチメントロスと組織学的に観察できるアタッチメントロスの差として考えられるとしたほか,自身で行った動物実験での結果から,歯根膜による歯槽骨の再生は近くに骨(骨壁)がある場合に期待できること,セメント質や歯根膜の再生量は特に再植症例においてはきわめて少ないことを示した.
 高橋慶壮氏(奥羽大)は「歯内歯周複合病変における歯根膜の役割」と題し,同病変の診断についてはプロービングの有用性と不確実性を理解し,X線写真やBOPの有無といった情報と組み合わせて臨床推論を行うべきとした.外傷性咬合については,それによりセメント質剝離や歯根破折が生じてアタッチメントロス・感染が生じ,歯周炎が発症するとの仮説も考えられるが,その解明には複雑系科学によるアプローチが必要であり,いわゆる力の問題については結論を得る段階にないことを強調した.
▲左から高橋氏,菅谷氏
 歯科衛生士シンポジウム「『臨床の疑問に基礎が答える』~歯根膜,付着の不思議を考える~」(座長:谷口威夫氏/長野県,蒲沢文克氏/北海道)では,三上 格氏(北海道),西東聖子氏(歯科衛生士),金子 至氏(長野県),伊藤美穂(歯科衛生士)が症例を提示し,下野正基氏(東歯大)が病理学的な視点から解説を加えた.天然歯とインプラントの周囲組織の違いや歯肉のクリーピング,タバコによる歯肉のメラニン色素沈着と禁煙による改善などについて,臨床的な対応や実際の口腔内の変化,そして病理学的なメカニズムを理解する貴重な機会となったようである.
▲左から金子氏,伊藤氏
 歯科衛生士教育講演(座長:岩野義弘氏/東京都,佐藤 禎氏/北海道)では,「メインテナンスが得意な人,不得意な人」山本浩正氏(大阪府)と「超高齢社会を迎えて歯科衛生士に必要なペリオ・インプラント重要キーワード」和泉雄一氏(医歯大,総合南東北病院)の講演が行われた.
 山本氏はメインテナンスを知識とスキル,感度(異変を察知すること),コミュニケーションの4つのテーマから解説.聴講者が自身のメインテナンスの内容を多角的に見直せる内容であった.最後には「メインテナンスの得手不得手はわずかな差であり,歯科衛生士自身が仕事を継続することが大切である」と会場にエールを送った.
 和泉氏は,糖尿病や喫煙,根面齲蝕など最新のトピックスや話題のキーワードを取り上げ,それぞれ影響力の大きい関連論文を紹介.口腔と全身との関連性を示し,NCDs(非感染性疾患)の対象疾患に歯周病を,その原因・リスクに口腔清掃不良を加えることを提唱し,生活習慣や全身疾患を含めたより包括的なアプローチの必要性を訴えた.
 次回,第38回年次大会は,2020年6月6日(土),7日(日),名古屋国際会議場(名古屋市熱田区)にて開催予定である(大会長:村上 卓氏/愛知県).

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