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日本顎咬合学会 第37回学術大会 開催される
 6月22日(土),23日(日)にかけて,標記の学術大会・総会が開催された(会場/東京国際フォーラム・東京都千代田区).大会長は上田秀朗氏(福岡県)で,テーマは『真・顎咬合学 最新歯科医療最前線―夢ある歯科界の再構築』であった.
 22日午前午後にわたる特別講演では,南カリフォルニア大学歯学部顎顔面口腔外科臨床准教授のBach Le氏が登壇.“Horisontal and Vertical Ridge Augmentation――myths versus reality”(水平的垂直的顎堤造成術――幻想と真実)との演題で,幅広いテクニックや造成用材料が存在する水平的垂直的顎堤造成術において,おおむね良好な結果を出しているこれらの技術の数少ない失敗にあえて着眼し,現在認識されているエビデンスを批判的に評価した.水平的垂直的顎堤骨欠損部分にインプラントを埋入する様々な症例を引用し,あらゆる大きさの骨欠損に対して高い予知性を発揮するための方法について示した.
 22日午後におこなわれた骨増生をテーマとする講演(座長/城戸寛史氏)では,堀内克啓氏(奈良県)が「インプラント治療における歯槽堤造成術のガイドライン」との演題で,インプラントポジション確保のための歯槽堤造成術それぞれの長短について解説したのち,部位や欠損様式ごとのガイドラインを提示した.
 先達より叡知を学ぶ「日本顎咬合学会の歴史から学ぶこれからの歯科臨床哲学」(座長/三輪一雄氏)では,最初に舘野常司氏(静岡県)が「先達から受け継いだ私の臨床哲学-60年の臨床経験を踏まえて-」と題し,Dr.Beachとの出会いからPankeyフィロソフィーなど,氏のこれまでの出会いと先人の言葉を紹介し,哲学に学ぶことの重要性を説いた.次に桑田正博氏(ボストン大)が「近代歯冠修復治療はどこからきたのか」と題し,アメリカに渡ってPFMの研究を行い,天井と底への注目や支台歯形成,プロビジョナルレストレーションやオクルージョンについて考察してきたこれまでの歩みを紹介した.最後に細山 愃氏(新潟県)が「先達から学ぶ歯科臨床哲学」と題し,世界的なナソロジーとオクルージョンの流れから日本の咬合学における保母須弥也氏の業績の紹介をし,医療をめぐる現状から今後の見通しまで解説した.
 23日午前におこなわれた「歯列矯正」のパート(座長/渡辺隆史氏)では,「矯正治療が必要な理由(わけ)―低侵襲治療時代の矯正―」と題し,矯正専門医ではない5名のGPが登壇し,それぞれ次のタイトルで講演をおこなった.
 「一般臨床に矯正治療を取り入れる」/田上浩三氏(埼玉県)
 「矯正治療を有効活用し,低侵襲な補綴治療を目指す」/青山貴則氏(北海道)
 「成長発育から見た矯正治療の意義」/糠沢真壱氏(福島県)
 「GPの行うべき矯正治療とは~顎関節や全身の健康を考慮して~」/徳永哲彦氏(福岡県)
 「咬み合わせが人生を変える―矯正編―」/松崎浩成氏(茨城県)
 各演者の発表はいずれも「矯正治療こそがMI」であることを強調する内容であった.

 座長の渡辺氏は,「矯正専門医=全顎矯正,GP=MTMという構図はもはやナンセンスであり,正しい知識のもとGPこそが矯正治療を行っていく必要性は疑いのない時代になってきている」と締めくくった.
 歯科医科連携「睡眠時無呼吸症候群」(座長/上濱 正氏)では,最初に林 俊成氏(埼玉県)が「睡眠時無呼吸症の診断と治療~より良い歯科医科連携を目指して~」と題し,歯科と連携を行って治療を行う内科医の立場から睡眠時無呼吸症についての解説を行い,歯科医師にはOA製作だけではなく睡眠の知識ももってほしいことを述べた.次に片平治人氏(東京都)が「睡眠歯科専門医の睡眠時無呼吸症への取り組み」と題し,専門医としての立場から実際に行っている歯科の治療について,具体的に解説した.最後に今井俊広氏(鳥取県)が「咬合と閉塞性睡眠時無呼吸症候群とのかかわり」と題し,顎口腔系を全体的にみて咬合が上気道にもアプローチするAirway-Prosthodonticsの紹介と解説を行った.
 23日午後のテーブルクリニックセッション5(テーブル1)では,村川達也氏(福岡県)が「歯周組織再生マテリアルの選択と臨床的ポイント」と題し,早期創傷治癒を観察することでリグロスやエムドゲインといったマテリアルの特徴を把握し,その選択をどう考えるべきか提示した.

 同日午後のテーブルクリニックセッション6(テーブル7)では,白土 徹氏(福岡県)が「臼歯部のインプラントの補綴処置を再考してみよう!」と題し,機能的な回復のみを期待されがちな臼歯部のインプラント治療において,隣接する天然歯や歯周組織に調和したインプラント補綴修復を目指す意義について,実際の症例を交えながら検討した.
 DHプログラム「歯周病」(座長/村上和彦氏)では,最初に鍵和田優佳里氏が「歯周治療を成功に導くために~歯科医師との連携,歯科衛生士の判断~」と題し,咬合維持における歯周治療の重要性から歯周病の特徴を整理し,歯周病への具体的な対応を治療ステップごとに解説した.それを踏まえて次に鷹岡竜一氏(東京都)が「考える歯周治療への招待」と題し,慢性疾患である歯周病の治療において,患者に未来を伝えるために必要な治りやすい症例と治りにくい症例の判断や歯科医師と歯科衛生士との連携について,X線写真などの分析をもとに解説した.最後に上野道生氏(福岡県)が「歯周治療を楽しもう-諦めない大切さ-」と題し,氏の医院でのシステムから,患者と長くつきあい歯周治療に取り組むための歯科衛生士の重要性を,具体的な症例で紹介した.

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