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日本歯科医学会 重点研究委員会研修会 子どもと保護者を支える「口腔機能発達不全症の管理」開催される
 3月31日(日),日本歯科医師会館において,標記の研修会が開催された.日本歯科医学会 重点研究委員会は2013年に日本歯科医学会の内部に設置されたもので(委員長:田村文誉氏・日歯大),5年間,小児の摂食などについての調査や研究を重ね,口腔機能発達不全症の概念の提案と昨年の診療報酬改定による保険収載にまで至った.今回の研修会は同委員会最後の活動ということで開催された.
 冒頭,主催者からの挨拶として住友雅人氏(日本歯科医学会)が上記の経緯を説明,5年間研究を続けた各委員をねぎらった.
 続けて,「企画意図」として,木本茂成氏(神歯大・日本歯科医学会)による「口腔機能発達不全症の現状」が解説され,医療保険における口腔機能発達不全症の各項目の説明や管理の流れの実際を示した.
 続く講演として,田村文誉氏による「食事相談の現状」として,上記重点研究の成果の一つである「子どもの食事で心配なこと」のアンケート調査の結果解説や,実際の臨床の場面で寄せられた子どもの食事にかんする相談とそれに対する対応が示された.田村氏は「子どもの食の問題の背景には,口腔の問題のみならず社会や発達,親子関係なども影響する.歯科として口腔へのアプローチのみならず,子どもや家族の背景を見ることも必要」と語った.
 パネルディスカッションでは,コーディネーターの弘中祥司氏(昭和大・日本歯科医学会)の進行のもと,まずは各パネリストによる講演が行われた.
 田沼直之氏(東京都立府中療育センター小児科)は「哺乳・離乳困難な乳幼児への支援」として,発育不全児に対するアプローチや,重症心身障害児(者)に対する摂食嚥下・経口摂取開始への流れ,さらには腸内フローラを考慮した経管栄養の重要性などを示した.
 根ヶ山光一氏(早稲田大人間科学学術院 人間環境学科)は「子どもの食と母子関係」の演題で,食をめぐる親子関係について社会学・心理学的な観点から考察.「食は子どもの生きる原点であり,母親の期待通り食べてくれないことも子どもの能動性や自律性の表れともいえる.食を巡り時に親子の衝突が起こることもあるが,適切な解決に向けて父親など(アロマザー)がサポートすることも必要となる」と述べた.
 井上美津子氏(昭和大)は「哺乳期・離乳期の食べる機能の発達支援」として,出生直後の哺乳期から乳歯列が完成する時期までの口腔内の発達や摂食の特徴などを解説.各段階に応じた食形態や調理の工夫などを示した.
 杉山千尋氏(大阪大顎口腔機能治療部・言語聴覚士)は「話す機能の発達と支援」として,言語聴覚士の視点から,構音の基本と構音障害の種類,構音訓練の実際を解説.口腔機能発達不全症の項目でもある「構音機能」の診かたを示した.
パネルディスカッションの様子
 4人のパネリストおよび木本氏,田村氏が登壇したパネルディスカッションでは,演者間相互の質疑のほか,口腔機能発達不全症の浸透(学校検診への導入やマニュアルのダイジェスト版などの作成)が議論されたほか,「ロコモやメタボのような,わかりやすい愛称を付けて国民への浸透を図りたい」など,今後の展開についてさまざまな意見が出された.
 日本歯科医学会重点研究委員会としての活動は今回の研修会で幕を閉じたが,口腔機能発達不全症をはじめとするその成果と今後の展開は日本小児歯科学会や日本障害者歯科学会など,日本歯科医学会の専門分科会に引き継がれていく.

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