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第61回秋季日本歯周病学会学術大会 開催される
 10月26日(金),27日(土)の2日間,標記大会がリーガロイヤルホテル大阪(大阪市)にて「高齢者の健康寿命をサポートする歯周病予防の進展と展望~歯周病撲滅のための第一歩~」をテーマに開催され,約4,000人の参加者を集めた(大会長:梅田誠氏・大歯大).
 特別講演Ⅰ「Periodontal Tissue Engineering and Regenerative Medicine」では,Simon D. Tran氏(McGill大)がGTRや再生細胞シートに始まる再生治療に関し,世界的に行われている研究の紹介をし,また,3Dプリンタや高圧電気などによるadditive manufactureingで,スキャフォールド作製などの進歩と今後の展開について,氏の研究室での成果も含めて解説を行った(座長:栗原英見氏・広大).
 シンポジウムI「若手研究者の集い:10年後の近未来を見据えた歯周病予防に向けたEvidenceの構築」では5名の演者が登壇し,自身の研究報告と海外留学時のエピソードをまとめ,場内の若手歯科医師へ向け情報提供を行った.はじめに,五十嵐(武内)寛子氏(日歯大)は「歯周病予防に向けて!喫煙および禁煙が歯周組織に与える影響および効果について」と題し,歯周組織の線維化と喫煙の関係について,結合組織増殖因子(CCN2/CTGF)に着目した研究報告を行った.廣島佑香氏(徳島大)は「生体抗菌ペプチドの動態と歯周病予防への応用の可能性」と題し,高齢者や要介護者の口腔感染症予防をターゲットとした,カルプロテクチンを応用したバイオオーラルケアシステムの構築についてまとめた.片岡宏介氏(大歯大)は「生体抗菌ペプチドの動態と歯周病予防への応用の可能性」について,歯周病原細菌感染予防のための受動・能動免疫型粘膜ワクチン開発の展望について述べた.沖永敏則氏(大歯大)は「Host-parasite relationshipの観点からのEvidence構築」と題し,分子生物学と細菌遺伝工学を融合させた口腔細菌叢・口腔環境における細菌研究についてまとめた.最後に,藤田 剛氏(広大)は「歯周組織における慢性炎症の制御からセンテナリアン到達へ」と題し,遺伝的要素以上に慢性炎症の制御が重要とされる百寿者研究と,lipid raftに着目したコレストロール調整による歯周組織の慢性炎症制御の可能性について解説した(座長:山本松男氏・昭和大).
 シンポジウムII「歯周炎・インプラント周囲炎予防のためのバイオロジー ~マテリアルと医療デバイスの観点から~」では,非吸収性骨移植材として連通多孔性ハイドロキシアパタイトの材料学的特性について(土井一矢氏・広大),吸収性骨移植材としてβ-TCPやFGF-2等の臨床応用について(秋月達也氏・医科歯科大),医療デバイスとして光線力学療法(PDT)を用いた歯周組織再生療法およびインプラント周囲炎等への臨床応用について(田口洋一郎氏・大歯大)などが解説された.
 歯科衛生士シンポジウム「プロフェッショナルの奥義」では,最初に川崎律子氏(長谷川歯科医院)が「生涯現役~長く続けたからこそ見えること~」と題し,理想のメインテナンスは健康を健康のまま守ることであり,歯の保存のための歯周治療の重要性を述べた.チーム医療におけるカンファレンスでは歯科医師ときちんと話せるための知識が必要であり,また,経験値という武器の大切さも指摘した.次に貴島佐和子氏(南歯科医院)は「臨床経験を通して変わってきたものと変わらないものとを考える」と題し,卒後すぐの症例からこれまでさまざまに学んだ症例を,氏のライフイベントや仕事との両立などと合わせて紹介.そのようななかで,サブカルテの作成や歯科医師の総合診断への同席など,これまでずっと続けていることを解説した.歯科衛生士が仕事をしていくうえでは知識・技術・人間力の3つが必要であり,歯周治療における歯科衛生士の仕事の大切さを強調した(座長:野村正子氏・日歯大).
 ランチョンセミナー4「リグロスを用いた歯周組織再生療法における生物学的背景と臨床的キーポイント」では,牧草一人氏(京都府)がリグロスの作用機序や血管新生能に優れるといった特徴を述べた後,2度の根分岐部病変や2,3壁性の垂直性骨欠損症例,歯冠長延長術実施症例に対し同薬剤を用いた歯周組織再生療法のケースを供覧した.
 スイーツセミナー1「化学的プラークコントロールの活用法と提案」では,座長の鈴木秀典氏(大阪府)と演者の大月基弘氏(大阪府)により液体製剤による化学的プラークコントロールの有効性が述べられ,機械的プラークコントロールとデブライドメントによる対応が基本ではあるが,患者の状況や口腔衛生に対するモチベーションに応じて用いることで,プラーク堆積と歯肉炎の制御に一定の効果があることを示した.
 認定医・専門医教育講演「根分岐部病変の治療」では,八重柏 隆氏(岩手医大)が登壇.術者によって治療の多様性が大きいとされる根分岐部病変の治療について,「攻める治療(歯根分割,分割抜去等による清掃性の確保)」「作る治療(II度までの再生療法)」「見守る治療(MIに基づく歯周基本治療)」の3つに整理し,各治療におけるメリット,デメリット等を解説したうえで,治療計画立案時に求められる総合的判断のポイントをまとめた(座長:吉成伸夫氏・松歯大).
 次回,春季学術大会は,2019年5月23日(木)~25日(土),横浜市にて開催される(大会長:五味一博氏・鶴見大).

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