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日本歯科衛生学会 第13回学術大会 開催される
 9月15日(土)~17日(月・祝),福岡国際会議場(福岡市博多区)にて「口から食べる倖せの追求」をメインテーマに,標記学会が開催された(大会長:天本和子氏/福岡県歯科衛生士会会長).

 大会初日にはワークショップが開催され,「研究をしよう!! -研究の進め方-」「在宅訪問はじめの一歩 -歯科診療所から地域を支えるために-」「学生の立場から臨地実習を考える」「災害時の歯科衛生管理 -DHUG(Disaster Dental Hygiene Unei Game)をやってみよう-」「新人歯科衛生士の成長支援 Part3 新人育成のあり方を考える」の5つのテーマにわかれ,事例報告や討論が行われた.

 大会2日目の県民フォーラム「ペコロスの母に会いに」では,漫画家・音楽家の岡野雄一氏が登壇.認知症を発症し,数年前に他界した母親の介護の日々を描いた漫画や,写真や動画を示しながら,認知症の母親との想い出や当時のエピソードなどを語った.また,認知症症状が出現した時の状況,高齢者施設への入所や胃瘻の造設を決断した理由など,家族としての思いを伝え,一般参加者を含め,多くの聴講者の関心を集めた.
 特別講演「栄養状態から考える口腔と全身の健康―糖尿病と歯周病の関連を中心に―」では,西村英紀氏(九州大学大学院教授)が登壇.はじめに糖尿病について,発症機序から社会的な背景までをわかりやすく概説した.加えて,糖尿病と歯周病との関連はもちろん,「経口摂取」も含めた歯科との深い関わりを紹介し,さまざまな研究データを供覧した上で「重視すべきは栄養状態である」と述べた.壮年期の患者では歯周病を含めた過剰炎症を極力抑え,高齢期では適切な経口摂取を目指すという歯科的管理がそれぞれ糖尿病治療につながるとし,メインテナンスをとおして患者と深く関わる歯科衛生士が,糖尿病や栄養に関する総合的な理解をもって臨むことの大切さを訴えた.
自身の著書を示しながら,当時のエピソードを語る岡野氏
講演する西村氏.会場の歯科衛生士に温かいエールを送った

 3日目のシンポジウム「口から食べる倖せの追求-地域包括ケア時代の多職種連携-」では,浜村明徳氏(小倉リハビリテーション病院名誉院長/医師),岩佐康行氏(原土井病院歯科部長/歯科医師),大森政美氏(戸畑共立病院/言語聴覚士),髙野ひろみ氏(筑紫歯科医師会 歯科医療連携室/歯科衛生士)が登壇し,各氏による講演後,会場からの質疑によるディスカッションが行われた.
 はじめの浜村氏は「地域包括ケアの時代に歯科衛生士に期待すること」と題して,まず地域包括ケアシステムの概念,今後のあり方を整理し,チーム医療を実践する自身のリハビリテーション病院の取組みを紹介.そのうえで歯科と医科が協業する医療・リハ・ケアシステムの構築が必要不可欠であるとして,自身の立場から歯科衛生士への期待を述べた.次いで岩佐氏は「在宅における歯科医師の取り組み」として,歯科訪問診療をはじめた経緯や当時の様子を振り返ったうえで,現在行っている歯科訪問診療について,認知症の患者さんや終末期の患者さんなどのケースを例に,食支援をはじめ歯科と多職種が連携し支援することの重要性を示した.そして大森氏は「病院における言語聴覚士の取り組み」として,歯科衛生士とともに摂食嚥下障害に対する「口から食べる」行為を専門的,直接的に支援する言語聴覚士の役割ついて言及したうえで,自身が所属するリハビリテーション病院における摂食嚥下リハビリテーションにあたっての訓練,評価から,多職種と連携して行う食支援について紹介した.最後に髙野氏は「地域における歯科衛生士の取り組み」として,地域特性に応じた連携システムの構築を図ることを目指す,在宅歯科医療連携室における取組みを紹介.在宅における「口から食べる」ことの支援にあたってはさまざまな課題があり,その解決には,歯科のかかわりが必要不可欠であるとし,多職種が連携を行い胃ろう造設を拒否した患者さんが経口摂取に至ったケースを紹介し,医科と歯科の連携の重要性を訴えた.

会場からの活発な質疑に答えるシンポジウムの演者.「地域包括ケアの実現のために,歯科衛生士がすべきことは何か」など活発な議論があがった

 大会3日目の教育講演では,柿木保明氏(九州歯科大学教授)が「口から食べて治癒力を高めよう」の演題で登壇.自身のくも膜下出血発症とそこからの生還エピソードを交えながら,薬剤の作用・副作用による神経伝達の抑制と摂食嚥下機能の関係,人体内の水分の量と口腔のつながり,筋肉の解剖や機能に即したトリートメントケアの効果,さらには口腔領域における漢方薬の効果など,幅広いトピックを取り上げて講演を進めた.

 

教育講演演者の柿木氏

 その他,教育研修「WHOが日本の歯科診療へ推奨する新たな禁煙支援法の展開」(埴岡 隆氏/福岡歯科大学教授),研究討論会「『口腔衛生用具・製剤に着目した口腔衛生管理』に関する研究討論会」(吉田幸恵氏/神戸常盤大学短期大学部教授,吉田直美氏),ランチョンセミナー,口頭発表42題,ポスター発表142題などがなされる,全国から歯科医療従事者が集った.

会場の様子

 次回大会は2019年9月14日(金)~16日(月・祝),ウインク愛知(名古屋市中村区)にて開催予定.

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