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第48回日本口腔インプラント学会学術大会 開催される
 9月14日(金)~16日(日),大阪国際会議場(大阪市北区)において標記学会が「インプラント治療が拓く未来 超高齢社会への責任」をテーマに開催された〔大会長:馬場俊輔氏(大歯大),名誉大会長:川添堯彬氏(大歯大)〕.
 シンポジウム1「インプラント治療時の患者年齢と補綴方法を考察する」では,座長の武田孝之氏(東歯大)による企画意図の説明ののち,椎貝達夫氏(東歯大)が「通院できる間の変化と対応」として,長期経過症例において患者が通院できる間に起こるさまざまな状況を解説した.菊谷 武氏(日歯大)は「高齢者の口腔機能はどのように変化するのか?」と題し,口の終い方という考え方の紹介から加齢による運動障害性咀嚼障害の増加やその状況改善の難しさなどを述べた.最後に黒嶋伸一郎氏(長崎大)が「高齢患者に対するプレシジョンインプラント補綴治療の提案」として,認知機能やフレイル,栄養状況などの評価の必要性を踏まえ,70歳で分岐点を設定して2通りのディシジョンツリーを提案し,患者の健康年齢に合わせた補綴計画を呈示した(座長:武田氏,関根秀志氏・奥羽大).
 シンポジウム8「ソフトティッシュインテグレーション~軟組織付着に関する臨床と研究の現状と将来~」では,船登彰芳氏(近畿・北陸支部)が「臨床におけるインプラント周囲のソフトティッシュマネージメント」として臨床家の立場から,インプラント治療における清掃性確保のために角化歯肉の獲得が望ましいこと,審美性の確保のために歯肉の垂直的・水平的厚みを確保し骨吸収を防ぐ手立てが求められることを文献的に考察.歯肉退縮を防ぐうえでSupracrestal tissue attachment(生物学的幅径)を維持するための軟組織の封鎖性とその予知性の獲得の重要性を指摘し問題提起とした.これを受けて研究者の立場から軟組織の封鎖性を獲得するために取り組んだ研究の報告がなされ,まず鮎川保則氏(九大)が「インプラント周囲組織における生物学的幅径と軟組織封鎖性」としてインプラント体の表面性状について研磨面,粗造面のメリット・デメリットを整理したうえで,表面の塩化カルシウム水熱処理により天然歯と同等の上皮付着や細胞接着を獲得できたとした.さらに山田将博氏(東北大)が「バイオミメティックインプラントによる軟組織付着獲得への挑戦」としてナノテクノロジー応用によるインプラント体のへセメント質模倣チタン表面付与による結合組織付着の評価から,ナノ表面に密な線維再構築とインプラント体への垂直的線維配向が見られたとした.
 シンポジウム10「海外の基礎研究はインプラント治療をどう変えたか?―From Basic to Clinic―」では,加来 賢氏(新潟大)が「骨質をコラーゲンの生合成から理解する―個別化インプラント治療を可能とするための基礎研究―」として骨のコラーゲン架橋を個別化診断のマーカーに応用する/人為的に制御する可能性について,神野洋平氏(マルメ大)が「インプラント周囲組織の反応 種々の検証から見えてくるもの」としてアンダーサイズドリリングでの埋入が周囲骨に与える影響について,鬼原英道氏(岩医大)が「インプラント周囲炎予防のための基礎的研究―ハーバード大学との共同研究―」としてインプラント周囲の上皮付着の温存ならびに剥離後の再付着の可能性について,研究知見を示した.
 日本デジタル歯科学会,日本歯科技工学会と共催で行われた専門歯科技工士委員会セミナー「デジタル技工の周知,専門歯科技工士の増強『デジタルと歩むインプラント技工』」〔座長:佐藤博信氏(福岡歯科大学口腔医療センター)〕では,十河厚志氏(デンタルデジタルオペレーション)が昨今注目を集めている口腔内スキャナーの特徴,及びそこから派生するデジタル技工の現状と将来像を紹介した.口腔内スキャナーの特徴として印象に要する時間・患者の負担の低減や,形成状態・クリアランス量等をチェアサイドで可視化できること等を説明.反面,アンダーカットによる影があったり,ヘッドを動かすスピードが速すぎたりすると採得不備につながるという,機械特有の印象不備も生じうると述べた.また,光学印象の場合はラボ側が3Dプリンター等のデータから模型製作を行う機器を備えていなければマージン等の事前の調整は難しく,そういった場合の負担はチェアサイドが大きく被ることになるという懸念も示した.
 続けて行われた専門歯科技工士教育講座「歯科用CBCTの基礎と臨床」〔座長:末瀬一彦氏(大歯大)〕では,清水谷公成氏(大歯大/歯科放射線学講座)が医科用MDCT,通常のX線写真やMRIなどとの違いを中心に歯科用CBCTの特徴を解説.照射野を狭め,硬組織の診断に特化させたことによって,医科用のCTに比べて被曝量を大きく低減していると述べた.また,X線写真に比べた最も大きな違いは頬舌的な像を見ることができることであるとして,歯根部の破折線や上顎洞へのパーフォレーション等は2次元像だけでは判断が付かないことがあると,実際のCT像を狂乱しながら説明した.
 研究推進委員会セミナー「学会ポジションペーパー“訪問診療におけるトラブル対応”を語る」では,大久保力廣氏(鶴見大)が「ポジションペーパー作成の経緯と概要」として,12月刊行予定のポジションペーパーの解説を行った.佐藤裕二氏(昭和大)は「訪問歯科診療におけるインプラントの現状と問題点」として,学会アンケート調査をもとに現状分析と超高齢社会に向けた学会の動き,口腔機能検査についての紹介を行い,インプラント治療でも機能評価が大切になることを述べた.梅原一浩氏(青森インプラント研究会)は「インプラント上部構造におけるトラブルとその対応」として,訪問診療におけるインプラント周囲炎やインプラント体破折,スクリューの緩み・破折など,実際のトラブルと対応について解説した.柴垣博一氏(日本歯科先端技術研究所)は「訪問歯科診療現場におけるインプラント治療の実際と展望」として,氏が訪問診療に至った背景の説明から,在宅と施設の違いなど,実際に携わる立場の実感を踏まえた解説を行った(座長:井汲憲治氏・日本インプラント臨床研究会).

 次回大会は2019年9月20日(金)~22日(日)に福岡国際会議場(福岡市博多区)にて開催予定.

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