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第24回日本摂食嚥下リハビリテーション学会 学術大会 開催される
 2018年9月8(土),9日(日),仙台市の仙台国際センターを中心として第24回摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会が開催された.大会長は出江紳一氏(東北大)で,テーマは「摂食嚥下の地域リハビリテーション 集い,語り,動く」.およそ5,700人の参加者を集めた.
 8日のシンポジウム,「認知症の経口摂取維持」では,まず山本敏之氏(国立精神・神経料研究センター・医師)が「認知症の分類と摂食嚥下」として,認知症を引き起こす原因となる疾患(アルツハイマー病,脳血管疾患など)の紹介と,それに応じた摂食嚥下の問題点を紹介.続く平野浩彦氏(東京都健康長寿医療センター病院・歯科医師)は「認知症の進行にともなう摂食嚥下機能の問題点」の演題で,最もポピュラーなアルツハイマー型認知症の患者にたいして経口摂取を促す場合のコツや考え方を具体的に解説した.最後に清水充子氏(埼玉県総合リハビリテーションセンター・言語聴覚士)は「認知症患者に摂食嚥下リハビリテーション的なアプローチは有効か?」とするテーマのもとに,認知症患者によくある摂食嚥下行動における問題のある行動についての解釈,とそれに対する対応策を紹介した.
 
 続くシンポジウム「地域連携と嚥下障害」では関係する各職種が,摂食嚥下を軸に地域連携の取り方を議論.金成健太郎氏(長町病院・医師)は自身の医院で行っている摂食嚥下リハの地域連携の形を紹介.千吉良尚志氏(宮城県・歯科医師)は宮城県の白石歯科医師会と近隣の病院が行う摂食嚥下やNSTによる連携を解説.豊田美和氏(リハビリ訪問看護ステーションハピネスケア・看護師)は,東京都新宿区で行っている訪問看護の実際を示した.塩野崎淳子氏(むらた日帰り外来手術WOCクリニック・管理栄養士)は在宅訪問栄養指導を,渡邉理沙氏(東北大・歯科衛生士)は在宅における摂食嚥下機能評価における歯科衛生士の役割を発表した.
 質疑応答では「摂食嚥下機能の再評価をいかに行うか」「摂食嚥下の地域連携を始めるにはなにをきっかけとするか」など,さまざまなトピックで議論が進められた.

シンポジウム「地域連携と嚥下障害」で会場からの質問に耳を傾ける演者

 ワークショップ「災害時の嚥下障害への対応」では,前田圭介氏(愛知医科大学病院・医師),嶋津さゆり氏(熊本リハビリテーション病院・管理栄養士),白石 愛氏(熊本リハビリテーション病院・歯科衛生士) が登壇.前田氏は,熊本地震時の医療支援経験から,避難所においては続発症(主に誤嚥性肺炎)の発症予防が重要で,高齢者や有病者等の災害弱者を速やかに同定し,口腔衛生支援や食支援へと繋げることも摂食嚥下リハの一環であるとした.嶋津氏は熊本地震・震源地(益城町)から約1kmにある勤務先病院における災害時の食事管理について,日頃から取り組んでいて奏功した備蓄消費システムや,食具の工夫,院内チームワークの重要性等を詳説した.白石氏は指定外避難所へ医療班として支援に入るなか経験した,極度の物資不足,避難者状況の把握や支援物資管理の難しさ,災害弱者への優先対応の必要性について述べ,今後の震災対策に活かしてほしいと訴えた.


 交流集会「歯科」では,本領域の検査のゴールドスタンダードであるVE(嚥下内視鏡検査),VF(嚥下造影検査)以外の,補助診断装置の可能性が検討された.摂食嚥下機能の定量化・数値化へのアプローチとして,「超音波診断装置」(山口浩平氏/医科歯科大),「機能時舌圧測定」(皆木祥伴氏/阪大),「高解像度マノトリー」(谷口裕重氏/藤田保健衛生大)の基礎知識・臨床応用について,デモンストレーションを交え,解説された.


 9日のシンポジウム「患者および家族にどのように寄りそうか?:終末期の経口摂取について考える」では歯科医師,歯科衛生士,管理栄養士,言語聴覚士,看護師の各職種が登壇.大野友久氏(国立長寿医療研究センター・歯科医師)は「がん終末期の経口摂取を支える歯科的対応」として,終末期の一般的な病態と,歯科において考えられる対応法について解説.続く高柳久与氏(聖隷三方原病院・歯科衛生士)は「がん終末期における経口摂取サポート〜歯科衛生士の立場から」として病院勤務の歯科衛生士として自身が行ってきた終末期患者の経口摂取を支える取り組みを紹介した.そのほか,田中弥生氏(関東学院大学・管理栄養士),田村佳奈美氏(福島学院大学・管理栄養士),熊倉勇美氏(千里リハビリテーション病院・言語聴覚士),妻木浩美氏(静岡県立静岡がんセンター・看護師)がそれぞれ登壇.各職種の得意な点や特徴的な患者との関わり方を通して終末期患者の「食べること」を支えた経験を紹介した.
 各職種に今後期待される取り組みとして,歯科については「がんの初期段階の患者では,まだ地域の歯科医師が対応に当たる.こうした段階から積極的な対応ができることが望ましい」(大野氏)といった意見が出された.

大会最後のシンポジウム,「終末期の経口摂取について考える」の演者
 この他,11の教育講演を始めとして数多くの口頭発表やポスター発表が催され,多くの会場では立ち見や,満室で会場外のモニターに人だかりができるなど,大盛況のうちに2日間の日程を終えた.
 次回学術大会は2019年9月6日(金),7日(土)の日程で新潟県の朱鷺メッセにて行われる予定(大会長:菊谷武氏/日歯大).


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