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第37回日本歯科医学教育学会総会および学術大会開催される
 7月27日(金)~7月28日(土),奥羽大学(福島県郡山市)にて,標記学会総会および学術大会(大会長:大野 敬氏/奥羽大学歯学部)が,「東日本大震災から7年!今後の歯科医学教育の方向性」をテーマに開催された.
大野 敬大会長
 特別講演では,「勝利への伴走者」をテーマに川本和久氏(福島大学人間発達文化学類教授)が登壇.川本氏は走り幅跳び日本記録保持者の池田久美子選手や400m日本記録保持者の丹野麻美選手らを送り出した,福島大学陸上競技部監督兼コーチでもある.選手(学生)を育てるには,「自信がなくても1歩前に出る勇気をもたせること」「目標をもたせること」「ダメだと思う前に,できるかもしれないと思わせること」を教員が後押しすることが必要であると熱弁.また,自分で理解して行わないと意味がないため,“教える”ことは最小限にして,自ら考えさせる力をもたせることも重要と.そのうえで,「教員は人を幸せにする,天から授かったすばらしい仕事である」と締めくくった.
川本和久氏
 シンポジウム1では,「東日本大震災において歯学部がなすべきこと」をテーマに,奥羽大学,東北大学,岩手医科大学の3大学から,2011年から現在までの取り組みが発表された.
 瀬川 洋氏(奥羽大学歯学部)は帰宅困難地域の仮設住宅入居者を対象に被災地口腔ケア推進事業を継続している状況を,佐々木啓一氏(東北大学大学院歯学研究科)は,発災直後から歯学教育機関として行うべきこと・できうることを模索しながら活動を続けてきたことを,岸 光男氏(岩手医科大学歯学部)は,大学院生や連携大学であるハーバードからの学生が被災地での疫学調査に参加し,調査結果と経験を次世代にフィードバックする取り組みを行っていることを報告.
 歯学教育モデル・コア・カリキュラム(平成28年度版)では,災害時の歯科医師が関わる必要性が強く盛り込まれたこと,そして直近では西日本豪雨災害が起こったこともあり,いまやわが国で大規模災害がいつ起こってもおかしくない状況のなかで,歯科医学教育においての方向性を明確にする必要があることから,『災害歯科医学』(2018年2月発行/医歯薬出版)を活用しながら,教育を推進することを発信した.
左から岸 光男氏,瀬川 洋氏,佐々木啓一氏
『災害歯科医学』(2018年2月発行)
 シンポジウム3では,「歯科におけるプロフェッショナリズム教育~その方略と展望~」をテーマに,倫理・プロフェッショナリズム教育委員委員長の木尾哲朗氏(九州歯科大学)を座長に,これまで行ってきたプロフェッショナリズム教育の普及において,方略と展望について委員会メンバーから具体的に報告がなされた.
 平田創一郎氏(東京歯科大学)は「倫理教育資源DVD『入れ歯はひとつ』の活用法」として,委員会が制作した視覚素材を用いて,東京歯科大学で実施している倫理的検討手法に関する実習を紹介した.
 角 忠輝氏(長崎大学歯学部)は「『2018年度版良き歯科医療人になるための20の質問 倫理的検討事例集』の活用法」として,歯科医師だけでなく,歯科衛生士や歯科技工士にも対象をひろげて改訂版事例集を作成し,事例も42例から68例に増やしてブラッシュアップしたことを報告.
 長谷由紀子氏(広島大学病院)は「歯科衛生士のプロフェッショナリズム研究から見えてきたもの」として,歯科衛生士のプロフェッショナリズムの構成要素とその認識に与える要因についての研究報告がなされた.学歴,臨床経験,歯科診療における多職種連携等の社会的歴史的背景が,個人のプロフェッショナリズムと医療者としてのアイデンティティ形成の価値に影響を与えており,プロフェッショナリズム教育は研究に裏付けされた多面的視点や多職種の相互作用の中で考えていくことが重要であると述べた.
左から長谷由紀子氏,角 忠輝氏,平田創一郎氏
 3つのランチョンセミナーも開催され,「災害時の歯科保健医療-多職種連携の中での歯科の役割-」(サンスター株式会社協賛)では,中久木康一氏(東京医科歯科大学大学院)が登壇.歯科はあくまで保健医療対応の一部で,とくに「食べる」支援に際しては,咀嚼や摂食嚥下対応のみならず,栄養や運動,環境など,多面的な支援が必要であり,多職種で共有できる共通指針が必要であることを提案した.
中久木康一氏
 ほか,ポスターシンポジウムとして企画された,歯学だけではなく,医学,薬学,看護,理学・作業療法学科などとの多職種連携教育についての「多職種連携教育の導入・充実を目指して」プログラムも,会場の関心を集めた.本大会のテーマでもある大規模災害への歯科医学教育のみならず,多方面において,多職種による連携教育が必要であることが明確になった2日間であった.次回,第38回大会総会および学術大会は,2019年7月19日(金)~20日(土),福岡市のパピヨン24ガスホールにて開催予定(大会長:古谷野 潔氏).
NHK全国学校コンクールで金賞を受賞した福島県立高等学校合唱部によるコーラスを「学会の夕べ」で披露
ポスター会場の様子

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