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日本老年歯科医学会 第29回学術大会 開催される
 2018年6月22日(金),23日(土)において,第29回日本老年歯科医学会学術大会が開催された(大会長:佐藤裕二氏/昭和大).会場はきゅりあん(東京都品川区)で,およそ1,850名の参加者を集めた.
メイン会場の様子
 22日には本学会のメインシンポジウムとして『脳卒中患者の老年口腔医学』が催された.
 まず,岩淵博史氏(神歯大・日本有病者歯科医療学会)が『脳卒中と歯科の関係』として,脳卒中と歯科疾患のつながりや脳卒中の機序,主な治療薬などについて解説.
 続く平塚正雄氏(福岡リハビリテーション病院・日本障害者歯科学会)が『障害者歯科医療からみた脳卒中患者への対応』の演題で,脳卒中発症からの治療・リハビリの流れと歯科の役割について説明をした.
 最後には古屋純一氏(医科歯科大・老年歯科医学会)が『地域でつなぐ脳卒中患者の口腔機能管理』として,氏の施設で取り組む超急性期からの歯科の介入や,回復期・生活期の状態となった患者について地域連携でどのように情報を共有するのか,実例を示した.
左から,古屋氏,平塚氏,岩淵氏
 メインシンポジウムに先だって,髙宮有介氏(昭和大)による『人生の最終章を輝かせる緩和ケア』の特別講演が行われた.「緩和ケアとは,患者さんを一人の人間としてみることである」という持論が示された後,患者の痛みとどうつきあうのか,医療者自身のケアはどうするのかなど,緩和ケアに関わるさまざまな話題が演者の体験と共にしめされ,会場の聴衆が涙ぐむ場面もみられた.
特別講演演者の髙宮氏
 教育講演では『超高齢社会の栄養』の演題で,時岡奈穂子氏(NPO法人はみんぐ南河内)が登壇.栄養についての基本的な情報の紹介に始まり,管理栄養士である時岡氏の日ごろの活動を通じて,高齢者といかに関わることで食べることにつなげていくのか,そうした食支援の実際が示された.
教育講演演者の時岡氏
 23日のシンポジウム『後期高齢者歯科健診を円滑に展開するために』では,まず足立 融氏(鳥取県)が登壇.『後期高齢者歯科健診をどうする? どう活かす?』の演題で,高齢化先進県の鳥取県において歯科健診をいかに行うのか,そしてそうした健診をいかにオーラルフレイル予防につなげていくのか,その活動の実際や健診の結果から見えてきた高齢者の特徴などを示した.
 続いて,佐藤哲郎氏(神奈川県歯科医師会)が『神奈川県口腔ケアによる健康寿命延伸事業-オーラルフレイルの実情調査』の演題で登壇.神奈川県におけるオーラルフレイル改善プログラムを解説し,今夏から神奈川県海老名市で実施される大規模介入調査について,その意義などを解説した.
左から足立氏,佐藤氏,座長の平野浩彦氏(東京都健康長寿医療センター),糸田昌隆氏(大歯大)
 最後のシンポジウム,『口腔機能低下症のアウトカムと評価基準の再評価』では,本年4月より歯科診療報酬に加わった口腔機能低下症について,さまざまな観点からの議論が行われた.まず,飯島勝矢氏(東京大)による『オーラルフレイル-我々医療者は国民に何を伝えるべきなのか』では,飯島氏が「フレイル」について行ってきた啓発活動や,地域住民のなかにどう根付かせるのか,その目的や方法が示され,オーラルフレイルはどのような方向に向かうべきなのか,その道筋を示した.
 続く『口腔機能低下症の該当率と診断基準』では上田貴之氏(東歯大)が,口腔機能低下症の7つの下位症状についてその各種項目の意義や診断基準について解説.現状では基準値再考の余地があることや,患者の状態(要介護,認知症など)によっては上手く測れない場合があるなど,課題や今後の調整の必要性について論じた.
 津賀一弘氏(広島大)は『口腔機能低下症における低舌圧の再考』として,口腔機能において大きな意味を持つ舌圧の意義や研究の現状,さらには基準値の考え方なども解説した.
 最後に,松尾浩一郎氏(藤田保健衛生大)が『口腔機能低下症のあり方と方向性』の演題で,自身が手がける調査の結果やそれに基づく口腔機能低下症・オーラルフレイルという概念の今後の方向性を示した.

右から,飯島氏,上田氏,津賀氏,松尾氏
 次回学術大会は2019年6月6日(木)~8日(土)にかけて,仙台国際センター(仙台市)などで開催予定(大会長/米山武義氏・静岡県).

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