Ishiyaku Dent Web

歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士のポータルサイト

第61回春季日本歯周病学会学術大会 開催される
 6月1日(金),2日(土)の両日,京王プラザホテル(東京都新宿区)にて標記学会が「歯周病治療がもたらすQOL向上」をテーマに開催された〔大会長:齋藤 淳氏(東歯大)〕.
▲第一会場風景
▲ポスター会場風景
 シンポジウムⅠ「どのようにしたら研究・臨床の取り組みを論文にできるか」(座長:山崎和久氏/新潟大)ではまず沼部幸博氏(日歯大)が「日本歯周病学会会誌に投稿しませんか」として学会誌のあり方や原著論文投稿の価値とメリット,意義について,村上伸也氏(阪大)が「How to get your first research paper published―歯周病学研究の将来を担う若手研究者への応援にかえて―」と題して投稿論文がアクセプトされるために備えておくべきポイントやリジェクトされた際の対応等について,それぞれ若手会員に向けて解説した.
 シンポジウムⅡ「歯周治療と口腔関連QOL」(座長:齋藤氏)では「医療分野におけるQOL評価」として鈴鴨よしみ氏(東北大・医)がQOL評価において従来の客観的指標に加えて主観的指標(患者報告アウトカム)も考慮する重要性が高まっているとして,その評価尺度や評価時の課題について述べた.内藤真理子氏(広大)は「口腔分野のQOL評価」と題し,口腔関連QOLの評価尺度の一つであるGOHAIの日本語版作成や摂食嚥下障害者を対象とした新規QOL 尺度の開発とそれらを用いた歯科介入研究等,自身の携わった取り組みを紹介した.大井麻子氏(東歯大)は「歯周治療における口腔関連QOLアセスメントの実際」として同大における臨床・研究の取り組み,QOLアセスメントの実例を示し,今後の展望として外科術式ごとの評価や国民標準値のある他の尺度との比較検討,歯周病に関する疾患特異的尺度の開発が求められるとした.
 シンポジウムⅢ「歯周領域における再生的アプローチ-その現状と課題-」(座長:栗原英見氏/広大)では,初めに浦野 智氏(大阪府)が硬組織および軟組織の再生について臨床例を通じて考察,軟組織については成長因子とメンブレンのみでの再生は難しいと指摘した.二階堂雅彦氏(東京都)は,3壁性以外の骨縁下欠損にはコンビネーションセラピーが推奨される,血餅を保持する閉鎖環境があれば成長因子がなくとも歯周組織は再生するといった“再生療法のコンセンサス”に言及.最後に阿部伸一氏(東歯大)が骨梁形成や無歯顎顎堤の骨吸収のメカニズム,機能時の口輪筋の動きによる力の影響,加齢に伴う姿勢の変化が顎位の変化に繋がることなどを解剖学の立場から解説した.
 倫理委員会企画講演「ディジタル時代の研究倫理と論文指導」(座長:小方頼昌氏/日大松戸歯学部)では,大隅典子氏(東北大)がはじめに昨今の研究不正の例を示しながら,不正が起こる土壌や時代背景を解説.とくに生命科学(医歯薬学)では研究者を取り巻く環境が変わり,不正が起こりやすいことを指摘.そうした不正を防ぐための研究室の運営方法や,研究者個人での研究の進め方(研究ノートの取り方やデータ管理の方法)など,研究の公正さを保ち,論文発表する際の注意点などのポイントを紹介した.
 歯科衛生士シンポジウム「さあ,「歯科衛生士」の話をしよう! ―歯科衛生士の視点からの臨床―」(座長:荒木美穂氏/朝日大学歯科衛生士専門学校,坂井雅子氏/日大歯学部付属歯科病院歯科衛生室)では,まず佐藤陽子氏(宮城高等歯科衛生士学院)が「歯科衛生士の臨床に科学的な思考をとりいれて」と題して,臨床の基本となる概念「歯科衛生ケアプロセス(歯科衛生過程)」について解説し,要請された背景や根拠に基づくケアの提供の実現性について言及した.次いで溝部潤子氏(九歯大)は「歯科衛生の視点をもつということ」と題して,歯科衛生士が担う歯科衛生のあり方,役割を整理し,歯周病の基本治療中における歯科衛生診断の目的,重要性を示したうえで,「歯科衛生ケアプロセス」の有効性を強調した.最後に中道氏は「臨床と教育をつなぐ歯科衛生ケアプロセス」をテーマに,自身の大学における「歯科衛生ケアプロセス」の教育内容について,本学生の臨床自習における患者症例レポートを供覧しながら,教育段階での課題,学生の到達度を示し,臨床における指導の必要性を訴えた.各氏の発表後,パネルディスカッションが行われ,会場からは臨床への活用に向けた質疑などがなされた.

■他のニュース記事をさがす

日付から記事をさがす
<2024年4月>
31123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
2829301234
567891011
キーワードから記事をさがす

人気の歯科書籍(キーワード別)

歯科雑誌 最新号