2018年5月23日(水),東京歯科大学において「認知症患者の義歯治療ガイドライン作成のための最終公開パネル会議」が開催された.本パネル会議は,日本老年歯科医学会が現在作成中の「認知症患者の義歯治療ガイドライン」について,一般の市民から意見や感想,提言を募るために開催された.
会場には日本老年歯科医学会の関係者やガイドライン作成に携わった委員に加え,一般市民として,義歯患者,認知症患者のご家族,介護士がそれぞれ2名ずつ参加した.
パネル会議は各参加者の紹介に続き,「パネル会議の基本的理解」として,「診療ガイドラインとは」(田村文誉氏/日歯大),「認知症とは」(平野浩彦氏/東京都健康長寿医療センター)という基本的なレクチャーがなされた.
続いて,全部で10ある「認知症患者の義歯治療ガイドライン」の内容(対象となる認知症レベル,推薦文,解説文)が1題ずつ提示され,担当した委員からの解説が加えられた.その後,一般の市民からの質問や要望,あるいは義歯治療や認知症患者介護の経験からの提言などが示された.
今回提示されたガイドラインのタイトルは以下の通り.
1.認知症患者において、義歯の使用が可能かどうか判断する要因はなにか?
2.認知症患者において,義歯の修理・調整は,新義歯製作よりも有効か?
3.認知症患者において,義歯安定剤の使用は,リライン・新義歯製作より有効か?
4.認知症患者の義歯設計に際し,家族などの介護力を考慮すべきか?
5.認知症患者において,義歯の設計は機能性よりも着脱性の方を優先すべきか?
6.認知症患者において,義歯の衛生管理は本人よりも介助者に委ねるべきか?
7.認知症患者において,義歯への名前入れは,義歯の紛失防止に有効か?
8.認知症患者において,新義歯製作は,しない場合よりも摂食機能・食形態・栄養状態の維持向上に有効か?
9.高齢者において,義歯装着は認知症予防に有用か?
10.認知症患者において,インプラントは認知症で無い人とくらべて慎重にすべきか?
パネル会議中,一般市民側からの発言だけでなく,ガイドライン委員側からの質問や確認など,双方向でのやりとりが交わされ,各ガイドラインの文言や対象する範囲などについて,活発な議論が交わされた.