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第56回 日本小児歯科学会大会 開催される
 5月10日(木)~11日(金),標記大会が「自然・進化・未来 ~子どもより大切なものはありますか~」をメインテーマに,大阪国際会議場(大阪府)にて開催され(大会長:有田憲司氏/大阪歯科大学歯学部小児歯科学講座),2,000名を超える歯科医療従事者が参加した.
 大会初日,自由集会1「これからの咬合誘導を考える」では,土岐志麻氏(青森県・とき歯科)と元開富士雄氏(神奈川県・げんかい歯科医院)を演者に,事前申込者20名が参加して行われた.咬合誘導は”概念”であり,考え方は,咬合の育成に必要な管理と予防を行う小児歯科学そのものであることから,術者は歯列などの形態だけに注視するのではなく,口腔機能や全身の健康状態など,子どもの全体像をみて総合的に関わる必要があること等が解説された.
 JSPP企画講演「上顎埋伏犬歯の臨床」では,徳倉 健氏(愛知県・たけし矯正こども歯科),田中克明氏(佐賀県・田中こども歯科医院),春木隆伸氏(兵庫県・はるき小児・矯正・歯科)が登壇.埋伏歯が疑われる場合,早期からのパノラマ写真での注視が必要となるなど,早期対応が重要だとした.また,小児歯科として責任を負える範囲を明確にし,手術時には口腔外科など他分野との連携を密にし,保護者と子どもへは予想されるリスク等をしっかり伝え,健診で定期的に見守ること等が解説された.
 歯科衛生士委員会企画セミナー「認定歯科衛生士への道」では,野本知佐氏(ちあーず歯科・小児歯科),玉熊幸子氏(とき歯科)が登壇.野本氏は本学会認定歯科衛生士の制度の概要,申請から承認までの流れ,審査に要する申請書類などについて紹介.「症例報告書」を取り上げ,口腔内写真の必要性を訴えながら,具体的な作成方法について言及した.玉熊氏は,歯科衛生士として経験を振り返り,自身がかかわったケースを供覧しながら,同認定歯科衛生士を取得した経緯,取得後の心情の変化などについて示し,更新への思いを語った.

 大会二日目,委員会企画「社会保険診療報酬改定のしくみを検証する」では,小林隆太郎氏(日本歯科大学附属病院),大原 裕氏(京都府・大原歯科医院)が登壇.小林氏は,各学会より提案され,日本歯科医学会にてとりまとめられる医療技術評価提案書について詳説.公的医療保険においては,医学的最適性と経済的最適性の両立が重要となることから,保険未・既収載技術におけるスクラップアンドビルドを含めた提案が重要となること,5年10年先の社会を見据え,歯科医療側からの中長期的政策提言が重要となること等を解説した.大原氏は,診療報酬はルールであり,開業歯科医においては,疑義解釈,支払基金による審査情報提供事例などの情報をしっかり押さえておくことが重要であるとした.
 特別講演Ⅱ「現代っ子の転倒予防-子どもの運動と運動器を大切に-」では,東京大学名誉教授である武藤芳照氏(東京健康リハビリテーション総合研究所)が登壇.少子高齢化が進む日本の社会的課題として,元気で健やかな子どもの育成,運動器疾患・障害の予防を挙げ,その重要性について言及した.そして,現代の子どもの身体に起こる二極化現象〔運動不足(運動器機能不全)とスポーツ過多(スポーツ障害)〕を指摘し,心身の健全成長・発達には一人ひとりの条件にあった運動の質と量の処方が大切であるとした.
 障害児委員会企画「障害のある子どもたちへの民間からの支援~NPO活動・地域歯科保健医療の実践例に学ぶ~」では,赤川義之氏(NPO法人ならチャレンジド),谷岡哲次氏(NPO法人レット症候群支援機構),村内光一氏(村内歯科医院)が登壇.赤川氏は特別支援学校と連携を図り,当学生の就労支援や大学病院でのアート展の開催といった社会参加への取組みについて紹介した.谷岡氏は当患者団体の設立の経緯や取組み,海外の患者団体のあり方や連携による試みを紹介すると共に,患者団体が担う役割について言及し,今後の展望を語った.村内氏は約40年に及ぶ地域歯科医としての取組みについて,院外活動を中心に言及.訪問診療だけでなく,一市民として行う保育所での人形劇.障害者施設での定期的歯みがき指導などのボランティア活動について,写真や動画を交えて紹介した.
 市民講座「子どもと昆虫採集と脳化社会~自然よりたいせつなものはありますか~」では,解剖学者であり,東京大学名誉教授である養老孟司氏が登壇.ライフワークである昆虫採集の話題を元に,自然・健康・病気に対する自身の考え方をまとめた.病は過去の経歴が重要で,80歳を迎えた今,大病はかつての病が引き金となっていることを実感していると語ったうえで,その人なりの人生の完成,その人なりの成熟といった“自分の絵を完成させる”ことが大切であるとし,一般参加者を含め,多くの聴講者の関心を集めた.
会場内の様子
歯科衛生士委員会企画セミナー講演後のディスカッション.右から座長の早川 龍氏(早川歯科医院),野本氏,玉熊氏
特別講演に登壇した武藤氏
 次回大会は,2019年6月10日(月),11日(火)に開催される(大会長:八若保孝氏/北大).

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