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日本歯周病学会60周年記念京都大会 開催される
 12月15日(金)~17日(日),京都国際会館(京都市)にて,日本歯周病学会60周年記念京都大会が「伝統と革新 歯周病撲滅に向けて!」をテーマに開催された(大会長:栗原英見氏/広大).
栗原大会長
 医科歯科連携シンポジウムⅠ「血管障害/非アルコール性脂肪性肝炎」では,4名の演者が登壇.中島貴子氏(新潟大)は,歯周病と動脈硬化性疾患の関係について,最近の研究動向を整理するとともに,日本人によるデータの蓄積と関連指標の統一が,因果関係の解明に踏み込むための鍵となることを強調.
 伊澤 淳氏(信州大)は,レセプトデータの突合から得られた,健全歯数・残存歯数,喪失歯数が,複数の動脈硬化性脳血管疾患と関連するとのデータを示した.
 宮内睦美氏(広島大)は,非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の進行とPg菌の持続感染の関与についての最新事情を紹介.
 米田正人氏(横浜市大)は,肥満に伴う脂肪肝状態は,正常肝では問題にならない少量のLPS刺激でも炎症を惹起しNASHが増悪することを報告した.
 特別講演Ⅰ「食と腸内細菌が維ぐ健康」では,小川 順氏(京都大)が登壇.体細胞よりも多数が存在する腸内細菌の理解のためには,どのような菌が存在するのかではなく,菌叢全体でどのような機能を発揮しているかの解明が重要であると強調.特に,食事性脂肪酸が腸内細菌によって代謝物質が生成されることで,腸管バリア機能,抗肥満作用,抗酸化作用等,宿主組織にさまざまな影響を与えるとの研究結果を紹介.機能性食品の開発や医薬品シーズの発掘などの展開への期待を述べた.
 ランチョンセミナー1「歯周疾患と全身疾患の関連~歯科医科連携によるOral-systemic connectionの展望~」では伊澤 淳氏(信大)が登壇.松本市歯科医師会,松本市医師会,信州大学,東京大学,松本歯科大学の研究者らにより組織される「医科歯科連携による先進予防医療研究会・松本(D-CAMP松本)」の活動として,松本市で実施された歯科健診の結果と国民健康保険診療報酬明細書のデータから得られる全身疾患の診療状況をリンクさせ,抽出した全身疾患の病名から多重ロジスティック回帰分析による横断研究を実施したところ,歯周疾患と全身疾患との間に関連が見られたことを報告した.
 シンポジウムⅡ「歯周病専門医の育成を考える」(座長:三谷章雄氏/愛学大)では,初めに「歯科医師臨床実習ならびに臨床研修プログラムにおける歯周病治療指導と認定医・専門医への誘い~松本歯科大学病院単独型臨床研修における歯周病治療ベースとした研修の取り組み~」として,音琴淳一氏(松歯大)が同大病院の臨床研修システムの変遷に触れ,「自然に本学会認定医になれるような診療スキルに到達できる教育システムの構築が今大会のテーマに掲げる歯周病の撲滅に貢献につながる」とした.
 「私の学んだアメリカの歯周病学から,専門的歯周病治療を考える」と題して登壇した二階堂雅彦氏(東京都)は,アメリカで歯周病専門医を取得した経歴を踏まえて日米の卒後教育の違いに触れ,アメリカでは考える力や表現する力を養うといったOrganizedされた教育や高い倫理観に特徴があると述べた.
 「これからの歯周病専門医に求められるもの~認定歯科衛生士と共に働きリスペクトされる歯科医師~」では坂上竜資氏(福歯大)が,多くの患者が歯科医院にかかりながら歯周病に罹患している実情を踏まえ,日本歯周病学会が日本歯科医師会をサポートして一般歯科医と歯科衛生士を訓練するプログラムを作成し,患者の良好な受け皿を作る必要があるとした.
 最後に東 克章氏(熊本県)が「専門的歯周病治療を受けられる地域の偏在をなくすための工夫」と題し,本学会認定医,認定歯科衛生士取得のための研修施設となっている自院における研修での取り組みとして,歯周病に対する研修生の正しい理解を深め,歯周治療の実際を臨床見学という形で見学させていること,症例報告を義務付けその発表と指導を通じて知識や技術向上の手助けをしているとした.
 医科歯科連携シンポジウム2「関節リウマチ/早産・低体重児出産」では,小林哲夫氏(新潟大),橋本 求氏(京大),片桐さやか氏((医科歯科大),宮坂尚幸氏(医科歯科大)が登壇.
 まず小林氏が「歯周病と関節リウマチ ‐現状と展望、歯科の役割‐」と題して講演.歯周病と関節リウマチとの共通項を示し,両者の相関関係についての新知見について紹介した.
 つづく橋本氏は「歯周病と関節リウマチ‐コホート研究からの知見と課題‐」と題して講演.関節リウマチ患者の約8割の血液中において検出される抗シトルリン化蛋白抗体(ACPA)は,代表的な歯周病菌であるP.gingivalisによって産生されることを紹介.歯周病と関節リウマチに関する今後の研究課題について述べた.
 片桐氏は「早産・低体重児出産と歯周病との関わり~母子の健康を願って~」と題して講演.近年注目されている,切迫早産,早産・低体重児出産に対しての歯周病のリスク因子の可能性についてメカニズムを交えながら解説した.
 最後に宮坂氏が「本邦における周産期医療の課題‐早産と低出生体重児‐」と題して講演.人生において最も感受性・可塑性の高い胎児期のリスク因子を少しでも減らすため,口腔内の衛生環境を整えることは重要であると強調した.
左:小林氏,右:橋本氏
片桐氏
宮坂氏
 シンポジウムⅥ「歯周組織再生治療の多様な可能性を探る!」では,瀧野裕行氏(タキノ歯科医院),村上伸也氏(阪大),池谷 真氏(京大),加治屋幹人氏(広大),青木  章氏(医科歯科大)が登壇.
 まず瀧野氏が「歯周組織再生治療を成功に導く臨床的要因を考察する」と題して講演.FGF-2製剤と骨補填材を併用した臨床例など,最新の臨床例について紹介した.
 続いて村上氏が「歯周組織再生医療が変える歯科の未来」と題して講演.FGF-2製剤のメカニズムの解説に加えて,現在進行中である脂肪組織由来多系統前駆細胞(Adipose tissue-Derived Multi-lineage Progenitor Cells: ADMPC)を用いた,新規歯周組織再生療法の現状について報告した.
 続く池谷氏は神経堤細胞を介した多能性幹細胞からの間葉系幹細胞誘導と再生医療応用の可能性」と題して講演.歯周組織再生の理想的な細胞源となる,神経堤細胞を経て得られた間葉系幹細胞による再生医療の可能性について述べた.
 加治屋氏は「歯周病細胞治療における3次元培養法の現状と展望」と題して講演.3次元培養装置によって作成した,効率的に骨・歯周組織再生を促進する間葉系幹細胞集塊について紹介し,将来の再生医療への展望を述べた.
 最後に青木氏が「レーザーと歯周組織再生」と題して講演.局所のデブライドメントの効果的ツールおよび細胞/組織活性化効果の促進という,再生治療におけるレーザーの有効性について述べ,光エネルギーの持つ可能性について語った.
瀧野氏
村上氏
加治屋氏
青木氏
 京都宣言「歯周病撲滅に向けて!」では,西村英紀氏(日本歯周病学会 研究委員会委員長),山崎和久氏(日本歯周病学会 医療委員会委員長),山本松男氏(日本歯周病学会 学会あり方委員会委員長),浦野 智氏(日本臨床歯周病学会理事長),森田 学氏(日本口腔衛生学会理事長),武井典子氏(日本歯科衛生士会会長),森田晴夫氏(日本歯科商工協会会長)が登壇.個々人の立場から歯周病撲滅という目標に向けての考えや取り組み等にいて述べたのち,栗原大会長の合図のもと「京都宣言」が行われた.
 歯科衛生士プログラム「超高齢社会! 歯周治療における口腔ケアを考える」には,米山武義氏(静岡県開業),西 裕美氏(広島大学病院),武井典子氏(ライオン歯科衛生研究所)が登壇.
 米山氏は「超高齢社会,我々は高齢者の歯周病にどう向き合って,対応すべきか?」と題して,口腔ケアが肺炎予防に有効であることを実証した研究の経緯を紹介するとともに,「たとえ高齢者であっても,歯周組織は改善する」と強調.「老年歯周病学・老年歯周治療」の概念を提唱し,その重要性を説いた.西氏による「歯科衛生士に求められる口腔管理の実際と今後」では,歯科衛生士が多職種と連携を密にするために開発した口腔環境の評価(スクリーニング)表が紹介された.評価表は口腔環境を写真で示したもので,歯科専門職でなくてもその結果を容易に数値化することができる.同氏は高齢者・有病者へのケアにおいて,「簡便なツールを用いて多職種と情報共有を行い,歯科衛生士が専門性を発揮することが大切」と述べた.続く武井氏は「口腔ケアの実際 ~歯科衛生研究を通して~」 をテーマに,歯科衛生士が医療・介護の現場でより専門性を発揮するための,歯科衛生研究の現状を解説.「自然科学的研究」をベースに「社会科学的研究」「人文科学的研究」の視点から歯科衛生士業務を確立することが重要であるとし,自身が行った「カンジダ菌に対する有効な義歯洗浄法」や「住民参加型のフレイル予防法」などについての研究を紹介した.
 歯科衛生士スイーツセミナー「激変する社会は歯科衛生士に何を求めるのか -口腔の健康維持管理を担う専門職としての責任-」(共催:医歯薬出版)では,小原啓子氏(デンタルタイアップ)が日本の社会経済から医療法,歯科疾患,歯科医療者の働き方に至るまで,多岐にわたる視点から社会が求める歯科衛生士像を論じた.小児の齲蝕や高齢者の喪失歯の減少など,歯科疾患予防が大きな成果を上げる一方で,国家の社会保障費の増大,生産年齢人口の減少といった社会的な問題に直面している現状を解説し,「かかりつけ歯科医機能」の強化や,口腔にとどまらない健康維持管理を担う専門職としての歯科衛生士の役割を提唱.歯科衛生士が時代の変化を察知し,それぞれの立場から考え行動することが重要であるとした.
小原氏

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