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第34回 日本障害者歯科学会総会および学術大会開催される
 10月27日(金)~29日(日),福岡国際会議場(福岡市博多区)にて標記大会が開催された(大会長:柿木保明氏/九州歯科大学 老年障害者歯科学分野 教授).

 特別講演「自己決定『能力』をめぐるパラダイム転換について」では,佐藤彰一氏(国学院大学法科大学院 教授/弁護士)が登壇.はじめに,「障害者の権利擁護」の要点を明解に詳説し,医療・福祉の分野における障害者の意思決定支援の変遷を紹介した.また自身の経験を通して,障害者の意思決定の背景にある個の想いや判断といった意思の発生に至るプロセスに言及した上で,医療者がもつべき意思決定支援の倫理を紹介し,障害者の歯科医療を受ける権利と,その環境の整備に関する検討の必要性を聴講者に訴えた.
講演する佐藤彰一氏
 シンポジウム1「障害者歯科におけるこれからの歯科衛生士の役割」では,障害者歯科に関わる各分野で活躍する4名の歯科衛生士が登壇.
 まず,田島理矢子氏(名古屋市歯科医師会名古屋南歯科保健医療センター)が「二次医療機関の視点から」と題し,地域の歯科医院の受診が困難な障害者・障害児のケースを挙げ,それぞれに実施している専門的な口腔管理や,他職種・一次医療機関との連携の実際について紹介.患者に安全な歯科医療を提供するためには,根拠を明確にした問題解決への取り組みや,介入の継続を目標とした支援が重要であると述べた.
 続いて二宮静香氏(医療法人博仁会 福岡リハビリテーション病院歯科)が「リハビリテーション病院における歯科衛生士の役割」と題し,脳卒中患者を中心とした歯科衛生士の介入の成果を紹介.多職種連携における歯科衛生士の医療資源としての役割について,看護師らへのアンケート調査などを紹介しながら考察し,患者の生活期への支援においては他職種との相互理解と教育も必要であることを強調した.
 渡邉理沙氏(愛知県歯科衛生士会/東北大学大学院歯学研究科口腔システム補綴学分野)は「在宅医療の立場から」と題し,自身が所属する愛知県歯科衛生士会が取り組む教育事業について紹介.今後ニーズが増えゆく高齢者や障害者に対する歯科医療を拡大するためには,現場レベルでの個別化した対応ももちろん重要だが,在宅医療に従事する歯科衛生士を増やすことが喫緊の課題であり,臨床(実習)と座学を交えた卒前後教育をより充実させる必要性を提示した.
 最後に,森下志穂氏(名古屋医健スポーツ専門学校専任教員)が,「教育の立場から」と題して講演.障害者の心身機能の育成・回復や発達の支援において歯科衛生士が非常に大きな役割を担っていること,また学びや専門性を臨床現場で発揮し活躍するためには,臨床現場と教育現場の連携が必要であると説明.歯科衛生士ケアプロセスに基づいて介入することは,歯科衛生士自身のアイデンティティを示すことにつながると述べ,会場の歯科衛生士聴講者にエールを送った.
ディスカッションにて,会場からの活発な質問に答える演者たち
 教育講演「障害者の口腔疾患に対する予防と診療~障害者福祉の立場から~」では,緒方克也氏(重症心身障害児者施設久山医療療育センター歯科/九州歯科大学 臨床教授)が登壇.障害者を取り巻く医療の発達と障害の概念の変遷に言及したうえで,豊かな社会のあり方について問題提起しながら,「障害者の口腔が健康である権利を擁護し,支援する医療が障害者歯科医療である」と述べた.そのうえで,健康を理解できない障害者の継続的な口腔管理は,医院で患者の来院を待つのではなく,ニーズを掴み,現場に趣いて行う必要があると呼びかけ,今後は医療的モデルから社会的モデルへのシフトが鍵を握ると訴えた.
講演する緒方克也氏

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