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第28回日本老年歯科医学会学術大会開催される
 6月14(水)~16日(金),標記学術大会が「治し支える歯科医療」をメインテーマに,名古屋国際会議場(名古屋市熱田区)にて開催された(大会長:櫻井 薫/東京歯科大学).今年は2年に1回の各種老年学会の合同開催年であり,同会場に医学会,歯科医学会,看護学会など7学会が1つの会場に集い,合同シンポジウムなども開催され,盛況な3日間となった.
 入門セミナーでは「高齢者の診療に必要な全身状態評価とその対応」と題し,深山治久氏(東京医科歯科大学大学院)が登壇.高齢者は歯科以外の全身疾患を合併していることが多く,歯科医療でのわずかな痛みや刺激がストレスとなり,それらの疾患が急激に悪化することがあると説明.医療面接,バイタルサイン,各種の臨床検査などを用いて患者さんの全身状態を評価することが必要と論じた.そして,心疾患,高血圧,アナフィラキシーショック,喘息といった患者さんに対しての留意点と対応について具体的な対応法を示した.
 合同シンポジウム「オーラルヘルスとゼネラルヘルス―予防からリハビリテーションまで―」では「リハビリテーション医学からみた高齢者歯科医療」(才藤栄一氏/藤田保健衛生大学),「口腔保健の増進とQOL―暮らしに寄り添うため歯科が予防でかかわれること―」(小原由紀氏/東京医科歯科大学大学院),「食べる機能回復のための多職種連携」(松尾浩一郎/藤田保健衛生大学)の三講演が行われた.
 才藤氏は高齢障害者の口腔状態とその生活に与える影響について説明し,口腔状態の改善がADLやQOLの改善につながると論じた.そして,食べる機能の専門科としての歯科に対する期待と食事を楽しむための歯科医療の役割が大きいことを述べ,会場の歯科医師,歯科衛生士にエールを送った.
才藤氏
 小原氏は高齢者を対象とした口腔機能と生活機能との関係についての疫学研究の結果と口腔疾患の予防と口腔機能向上にかかわる実践から,歯科と高齢者の暮らしのかかわりについて説明した.高齢者は自身の口腔の些細な衰えに気づくことができず,そのまま悪化することでフレイルにつながると論じ,歯科から早期に予防的な介入としての健康教育が必要であると結論づけた.
小原氏
 松尾氏は高齢者の口腔機能低下が,低栄養を引き起こす原因の1つであること,そして医科歯科連携における食べる機能の評価と早期介入の必要性について概説した.そして藤田保健衛生大学で行っている取り組みを紹介し,高齢者の噛んで食べることを目的とした摂食嚥下リハビリテーションの重要性を論じた.

松尾氏
 学術委員会シンポジウム「『口腔機能低下症』について理解を深めよう」では8名の演者が登壇.本学会が報告した口腔機能低下症おける7つの下位症状「口腔不潔」(上田貴之氏/東京歯科大学),「口腔乾燥」(山本 健氏/鶴見大学),「咬合力低下」(池邉一典氏/大阪大学大学院),「舌・口唇運動機能低下」(古谷純一氏/東京医科歯科大学大学院),「低舌圧」(津賀一弘氏/広島大学大学院),「咀嚼機能低下」(永尾 寛氏/徳島大学大学院),「嚥下機能低下」(田村文誉氏/日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック)について,それぞれの項目の検査・評価方法について説明.8人目の演者として松尾浩一郎氏が登壇し,口腔機能低下症の定義について論じた.口腔機能低下症が低栄養となる手前の状態と考えた場合,3つ以上の下位症状が見られる状態がそれに当たると述べた.また,座長の水口俊介氏(東京医科歯科大学大学院)はこれら7つの下位症状や,その評価方法,評価基準は未だ議論されるべきものであり,これらを今後のエビデンス創出のための初期値としてほしいと結論づけた.
質疑応答の様子

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