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第5回 日本包括歯科臨床学会学術大会開催される
 8月27日(土),28日(日)の2日間,神戸国際会議場(兵庫県)にて標記学術大会が「健口長寿を目指して―包括歯科臨床を紐解く―」をテーマに開催された(大会長:任 順興氏/兵庫県神戸市開業).本学会は故・筒井昌秀氏と筒井照子氏(福岡県北九州市開業)の提唱する包括歯科臨床のコンセプトを継承するJACDと咬合療法研究会が合併して設立されたもので,5回目の今大会では,Drセッション11題,DTセッション5題,Co-Dentalセッション7題のプログラムが用意され,各会場とも賑わいをみせた.

 初日のDrセッションでは,まず長田耕一郎氏(福岡県博多区)が「3種類のフェイスボウを用いた咬合器付着に関する検証」と題して発表.フェイスボウの違いにより咬合器に付着された歯列模型の位置づけが変わることを検証し,フェイスボウコンセプトの違いを理解して咬合診査や補綴物の作製を行う必要があることを考察した.
 基調講演では白石和仁氏(福岡県北九州市開業)が登壇.「その歯,本当に抜きますか? ―歯周病専門医の立場から―」と題し,歯の保存に全精力を注いだ長期経過症例を提示しながら,最新の技術・マテリアルを使いこなすには基本手技のマスターが必要なこと,多くの臨床的手札をもっておくべきこと,チャレンジの積み重ねである臨床的根拠がエビデンスになることを発信した.

 2日目のDrセッションでは,大村祐進氏(山口県下関市開業)が「審美性,機能性,長期安定性をめざした補綴治療」と題した基調講演を行った.講演を通じて同氏は,補綴的咬合再構成を長期に安定させるためには,解剖学的・生理学的な理解に基づいた設計・治療が必要なことを強調した.
 Co-Dentalセッションでは,特別講演として天野敦雄氏(大阪大学大学院歯学研究科教授)が登壇.「Intelligent Periodontology ―最新病因論に基づいた診断・治療・生涯マネージメント―」と題し,P.gingivalisをはじめとする高病原性のバイオフィルムのメカニズムとコントロールの方法についてユーモアを交えながら解説した.「ルートプレーニングは初回が鍵」「メインテナンス時は超音波スケーラーを使用するとよい」など具体的な知見も述べられ,講演終了後も会場内外で質問を受ける姿が見られた.
 Dtセッションでは,西村好美氏(大阪府茨木市開業)が「臨床力の向上を考える―補綴治療とLongevity―」をテーマに特別講演を行った.補綴治療を成功させる要件として氏は修復物と歯周組織との調和に重きを置いており,審美性もさることながら,いかに修復物の清掃性を向上させるか,そのためにはどのような形態とすべきかについて臨床例を供覧しながら説明した.歯科技工士と歯科衛生士のダブルライセンスを有している氏ならではの内容であり,炎症や力のコントロールに寄与しうる修復物の重要性を訴えた.

 2日目の午後は特別講演として小出 馨氏(日本歯科大学新潟歯学部教授)が登壇.「咬合が全身へ及ぼす影響と咬合治療の重要性」と題し,咬合が姿勢や身体運動,学習記憶能力などに影響を及ぼすことを解説した後,咬合治療の診断のための筋触診の方法や治療におけるマニピュレーションのやり方について動画を交えながら丁寧に示した.その後,基調講演として筒井照子氏が登壇.「咬合,基本治療―力の診断とそのコントロールの実際―」と題し,氏のこれまでの臨床を振り返りながら力のコントロールの実際について述べた.この2つの講演を受けて行われたシンポジウムでは,まず小出氏が「体位と頭位(上顎位)が下顎位に及ぼす影響」について概説した後,質疑応答を交えたディスカッションが行われ,臨床家と研究家でアプローチの方法は違うものの,両氏が全く同じ方向性で臨床に取り組んでいることが確認された.
シンポジウム(小出氏,筒井氏)
 なお,今大会では本学会としては初の市民フォーラムを開催.ヘルシーメニューを提供する社員食堂で有名な健康総合企業(株)タニタヘルスリンクの瀧口知子氏がロコモティブ症候群の対策について,神戸学院大学栄養学部教授の藤岡由夫氏が心筋梗塞,脳卒中を予防する食事療法について,本学会理事の坂口雄一氏(兵庫県神戸市開業)が健康長寿の秘訣についてそれぞれ講演し,多くの市民に「健口」の重要性と本学会の意義を伝えた.
市民フォーラムの様子
 第6回大会は来年9月2日(土),3日(日)に福岡県で開催される予定.

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