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+0.61%では患者の口腔は守れない――東京歯科保険医協会政策委員長談話
 2015年12月28日,診療報酬改定率に関する政府決定に関し,東京歯科保険医協会より以下の政策委員長談話が発表された.

◆わずか+0.61%の引き上げで良い歯科医療を提供できるのか

 次期診療報酬改定の改定率はネットで-0.84%とされた.内訳は,本体が+0.49%,薬価および材料価格が-1.33%であり,歯科においては本体部分0.61%のプラス改定とはなった.しかし,この引き上げは,1医療機関当たり月2万円ほどの増加に過ぎない.
 第20回医療経済実態調査結果で,東京23区の歯科医業収益は前年比-1.2%,1月当たり約4万6,000円分の減少になっている.厳しい中で,各医療機関は減価償却費や人件費などの経費節減で医療提供体制をなんとか保っているが,この僅かな引き上げでは十分な体制を保つことはできず患者の口腔は守れない.
 また,次期改定は在宅への訪問診療やかかりつけ歯科医など特定の分野が評価されるため,訪問診療の実施の有無など医療機関の診療スタイルにより改定で得られる評価に大きな格差が生じる.+0.61%の引上げ分でさえ全医療機関が等しく得られるとは限らない.

◆薬価引下げ分が歯科本体に充当されていない

 次期改定の影響は,国費ベースでは,本体が+498億円,薬価等が-1,247億円,後発医薬品などの医薬品価格や大型門前薬局の適正化などの制度改革事項が-609億円と発表されている.数字でみれば,本体のプラス分は,薬価等の引下げ分を充当したのではなく,制度改革事項の引下げ分を充当したとも言える内容だ.今まで通り薬価引き下げ分を本体に充当すれば,歯科医療の充実に多くの財源が割けたはずだ.
 また,本体と薬価の他に,枠外として多くの制度改革事項を設けているが,それを加味すると実質の改定率は-1.43%と大幅なマイナスである.

◆医療崩壊を招きかねない社会保障費削減策は撤回を

 2025年に向けて地域包括ケアシステムの構築が進められており,医療の供給体制が大きく変わる.しかし,このような社会保障費の削減が続けば,患者の口腔内を守るために必要な医療供給体制が構築できないばかりか医療崩壊を招きかねない.
 協会は,改めて今回の社会保障費削減策に断固抗議する.
 
2015年12月28日
東京歯科保険医協会政策委員長
中川勝洋

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