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山本浩正先生・安生朝子先生 コラボレーションセミナー 「コンプリート・ペリオ ~求められる知・技・心~」 開催される

316日(日),津田ホール(東京都渋谷区)にて標記セミナーが開催され,約500名の歯科衛生士,歯科医師等が参加した(主催:ウエルテック(株)).

 

午前の部(第一部)には歯科衛生士・安生朝子氏 (栃木県・藤橋歯科医院,(株)ジョルノ代表取締役)が登壇,「メインテナンスにおけるトータルマネジメント ~これからの歯科衛生士に求められるもの」と題し,31年余の歯科衛生士歴から,臨床に転機を与えた識者や書籍との出会いをはじめ,「長期メインテナンス症例におけるハイジニストセラピーの実際」,「患者さんに合わせたいたわりのケアとおもてなしの心」を紹介した.

特に,自身の長期症例を元に,ドライマウス,tooth wear,骨隆起やTCH(舌接触癖)など力の問題に関わる症状をはじめ,超高齢社会の現在重要とされる義歯管理による誤嚥性肺炎の予防,インプラント埋入後のプロフェッショナルケア,オルソパントモを活用した骨粗鬆症への気づき(スクリーニング),診療室での食支援について言及するなど解説項目は多岐にわたった.どの症例も,長年メインテナンスを行うなかで患者の状況は変わり,プラークコントロール,咬合,歯周組織の状態には必ず変化が現れる.だが,起こる事象に真摯に向き合い,その時々の患者の状況・ライフステージを理解し,伝える内容(情報提供内容),伝える力(話術)を身につけることこそ歯科衛生士臨床の醍醐味であり,長期メインテナンスは決して漫然とクリーニングし続けることではなく,変化が生じていないかを見抜くことだと強調した.講演終盤には,義父の介護生活について紹介.自らはチェアサイドではなく介護生活によって真に学んだと伝えたうえで,これからの自身の臨床使命・課題として,診療室に通えなくなった患者への歯科訪問診療,口腔ケアがあると場内へ訴えた.

 

午後(第二部)は山本浩正氏(大阪府開業,PEC主宰)による「ペリオレボリューション」と題した講演からスタート.「歯科衛生士と築く院内システム」というサブタイトルが付けられた本講演は,歯周治療(ポケット治療)後の治癒形態についての簡単な復習のあと,「院内システム作り」の基本として「見えるシステム」「見えないシステム」の二つに分ける視点を提示.

前者の「見えるシステム」では「患者さんを追いかけるためのシステム」として,プロービングやX線,さらには口腔内写真などの基本的な検査からどうすれば病状や治癒の経過,患者の生活習慣に気づくことができるか,その考え方やコツを披露.メインテナンス中の患者に関しては過去の検査結果からの経緯を時間軸上で確認することで,より患者について理解した治療が進められる,とした.続く「患者さんを 治すためのシステム」として,歯周治療に欠かせない機材(超音波スケーリング,ハンドスケーリングなど)を紹介しつつ,その適切な使い方を確認.各種オーラルケア用品に含まれる成分などから考えられる最も適した使用法なども紹介.「患者さんに を運ぶためのシステム」として自らの医院の環境作りについての考え方を説明.また,「患者さんに “不快”を与えないことがもっと大事」と話し,「痛み」と「言葉」については特に配慮すべきであり,プロービングやスケーリングの際には痛みが出そうな部位を予測し,患者には声がけを行い,痛みが出た際には記録を取り,「二度目の痛みは与えないという気概で望みたい」,と語った.

院内の「見えないシステム」として山本氏が取り上げたのは「患者さん」「歯科医師」「歯科衛生士」のそれぞれが言葉によってつながり相互に信頼しあえる体制のことで,患者にかける言葉や同僚との会話にも,「宛先」をはっきりさせて「気持ち」と「配慮」を欠かさないことで,よりよい環境を作り上げることができる,とした.

また,個人が伸びるために,「1年前の自分と比較してどれくらい成長できたか考える」,「架空でもいいから『師』をもち,その師には及ばない,かなわないという不達成感,不満足感を抱くことが学びの原動力となる」などのヒントを提示,また会場にいる歯科衛生士の参加者には「10年の長期症例をもつと,いま向き合っている患者の10年後がわかるようになる.そうした長期症例を歯科衛生士も持とう」とエールを送った.

 

 最後(第三部)には安生氏・山本氏がそろって登壇し,事前に寄せられた質問に対するディスカッションを行った.「患者さんが定期的なメインテナンスに来てもらうにはどうすればよいか」,「モチベーションや口腔内への意識が低く,聞く耳をもたない患者へどう対応すればよいか」,「自分のモチベーションを高めるためにはどうすればよいのか」といった質問に対して,壇上の二人は自身の体験の話などを交えながら軽妙に回答を出し,会場を沸かせた.

 

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第三部のディスカッションで質問に答える山本氏(上)と安生氏(下)

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会場には500名以上の歯科医師,歯科衛生士が詰めかけ,ほぼ満席となった

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