8月31日(土),9月1日(日)の両日,神戸国際会議場(神戸市中央区)にて標記学術大会が開催された〔大会長:藤田 亨氏(堺市堺区/藤田歯科・矯正歯科)〕.今回は歯科医師セッション15題,歯科技工士セッション6題,歯科衛生士セッション6題,および各社による企業展示が執り行われた.
オープニングの基調講演では,同学会顧問である筒井照子氏(北九州市八幡西区/筒井歯科・矯正歯科医院)が「第3の疾患“顎口腔機能障害”について」と題し,歯科医療の第一の使命は患者が食べられるようにすることであるという信念のもと,顎口腔機能障害の臨床体系作りが急務であることを強調した.診査・診断においては原因を見つけることがより重要視されるべきであり,そのツールとして咬合力検査機器などのME(医療工学)機器を今以上に活用していくべきであると述べた.
歯科技工士セッションの基調講演では,松本勝利氏(福島県南会津郡/あらかい歯科医院)が「総義歯,局部床義歯,IOD成功へのKey Point!」と題し,義歯におけるLongevityを実現するポイントとして,① 適正なスーパーストラクチャーポジション,② エネルギーロスの少ない咬合位の策定,③ 顎関節諸組織に負担のかけない咬合の付与,④ 生体に調和した咬合高径の策定,⑤ 下顎運動に調和した咬合運動,⑥ 咬合高径の変化しづらい咬合の付与,⑦ 鉤歯/残存歯に負担をかけない義歯設計を挙げ,それぞれについて詳説した.
また,田代孝久氏(北九州市戸畑区/田代歯科技工所)と川野 瞬氏(北九州市八幡西区/筒井歯科・矯正歯科医院)は「筒井式スプリントの基本的な考え方とスプリント・床矯正装置の作り方の工夫」と題し,現状10種類ある筒井式スプリントの各適用についてチャートを用いて説明した.しかし,チャートは参考資料に過ぎず,患者個々の治療のゴールを見据え,どのスプリントを用いるかの適切な判断が大切であると述べた.また,スプリント依存症(スプリントを長期装着して咬合を壊し外せなくなること)を惹起しないよう,むやみやたらにスプリントを入れないこと,長く使わないことへの注意を喚起した.