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第17回・18回共催 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会開催される

 去る8月31日(金),9月1日(土),標記学術大会が「摂食・嚥下リハビリテーション―夢を語り,未来を描く―」をテーマに,札幌市文化会館ほか(北海道札幌市内)で開催され,二日間で4,300名強の参加者を集めた(※ 第17回大会は東日本大震災の影響で延期となり,第18回大会と共催となった).

 会長講演では,「摂食・嚥下リハビリテーションシステムの創生 ~高めよう現場力~」と題して,第17回大会長の出江紳一氏(東北大学大学院医工学研究科リハビリテーション医工学分野)が登壇.プロセスモデルから摂食・嚥下障害の診断・評価等を解説したうえで,多様な職種がかかわる現場では,基本となる理論や技術の普及,かかわる職種間が考え方の基礎を共有する必要があるとし,チーム医療の促進に向け,改めて基盤固め,システム構築が求められるとした.
 ついで,第18回大会長の鄭 漢忠氏(北海道大学大学院歯学研究科口腔顎顔面外科学教室)は,口腔という臓器の特異性について解説.これまで摂食・嚥下リハビリテーションの現場では,咀嚼と嚥下が別々に考えられてきたが,その相関を理解したうえで,生理的に正しい対応をしていくこと,さらなる研究の発展により現場へのフィードバックが望まれることを訴えた.

 シンポジウム「"プロフェッショナリズム"に学ぶ ~transdisciplinaryの概念が浸透したいま,個々の医療職のプロフェッショナリズムを再考する~」では,本間達也氏(医療法人生愛会),菅原英和(初台リハビリテーション病院),小山珠美氏(東名厚木病院,看護師),柴本 勇氏(国際医療福祉大学保健医療学部言語聴覚学科),江頭文江氏(地域栄養ケアPEACH厚木)が登壇,歯科医師,医師,看護師,言語聴覚士,管理栄養士,それぞれの専門領域から見解を述べた.
 本間氏は,介護保健施設,とりわけ老健施設における口腔ケアへの取り組みについて,歯科医療職だけでなく,看護・介護職,リハスタッフなどが共通認識をもって,チームとして推進していくことが求められることを解説.菅原氏は,現場のリハ医不足の実態について報告し,その対策として,非リハ専門医への教育プログラム,現場のリハスタッフや歯科医師のリハ医としての役割乗り入れなど,考えられ得る模索について紹介した.小山氏は,看護師は患者の自主性と生活の質の向上を支援するナビゲーターであり,最終的な看護の成果は患者自身の満足であること,現場ではリスク回避だけを考えるのではなく,プロフェッショナルが一定のリスクを引き受けたうえで挑戦していく姿勢が求められることも訴えた.柴本氏は,摂食・嚥下の臨床の最前線に立ち,最も患者に近く,担当制でつぶさに観察できるSTの特性を紹介.そのうえで,病院によっては全職種を揃えるのが難しい実態があるものの,ST単独で引き受けられること・難しいことを呈示,医師等との協働により効果的な訓練プログラムの立案や,個々の職種の専門性の発揮につながる場面があることを訴えた.江頭氏は,管理栄養士の立場から,専門職として誤嚥予防のための食事提供は当然のこと,さらに,食べる機能を引き出すような食事の提供によって,摂食・嚥下リハビリテーションの現場に参画すること等を紹介した.

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シンポジウム会場の様子

 シンポジウム「在宅・施設における摂食・嚥下リハビリテーション」では,菊谷 武氏(日本歯科大学 口腔介護リハビリセンター),山本 徹氏(医療法人社団 永生会 訪問看護ステーション),水澤弘代氏(デイサービスセンターファイン),鎌倉嘉一郎氏(函館稜北病院リハビリテーション科),中村育子氏(医療法人社団福寿会福岡クリニック在宅部栄養課)が登壇.歯科医師,医師,看護師,管理栄養士による在宅での取り組みを紹介した.
 菊谷氏は,在宅医療の現場では,摂食という問題について,個々の患者の嚥下能力に応じた捉え方が不十分なケースもあり,むやみに摂食機能を向上させるような取り組みを行われている例もあることから,嚥下機能を見極めたうえで,摂食機能改善のゴールをどこに据えるかを考える必要性があると訴えた.

 「交流集会2 歯科・歯科衛生士」では,歯科衛生士の中島綾子氏(中標津総合歯科診療所勤務),羽立幸子氏(函館市・光銭歯科医院勤務)が登壇し,地域における歯科衛生士の役割,歯科訪問診療ならびに口腔ケアにおける取り組み例を事例と共に紹介.訪問診療に携わる歯科衛生士の姿勢として,「最先端ではなく,(超高齢社会の)最前線で活躍している」と表し,来院できなくなった患者に対し,歯科がどのように関わっていくか,多職種といかに連携をはかっていくか,その姿勢や心構え,現場で求められる知識や技術等,多くが呈示される集会となった.

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企業展示ブースの様子

 なお,本学会の現会員数は9,721名,うち3割を言語聴覚士が占め,次いで,歯科医師,看護師,医師,歯科衛生士,他の順で構成される.

 次回は2013年9月22日~9月23日川崎医療福祉大学(岡山県倉敷市)にて開催される(大会長:石井雅之氏/同大学リハビリテーション学科教授).

 

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