1月21日(土),大手町サンケイプラザ(東京都千代田区)にて標記大会が開催された.10回目の節目となる今回は,ベーシック,デンチャー,セラミックスの各部門で3題ずつ講演が行われたほか,「カラーマネジメント」「溶接技工」などをテーマにした各種テーブルクリニック,モリタ,クラレメディカル共催の第2回エステニアC&B技工コンテスト2011入賞者による特別展示などが行われ,約900名が参加した.
以下,いくつかの講演について報告する.

ベーシック部門
「彩り豊かな色調再現の世界
~色彩の基本を生かした審美補綴製作~」
枝川智之氏(千葉県流山市/パシャデンタルラボラトリー)
枝川氏は「人間が認識する色合いは,白色光が照射されている時に何色の光を反射・吸収するかに起因する」「人間が認識する色と吸収されている光の色は『補色』(色相環で正反対にある色)の関係にある」ことを解説し,黄色みが強い補綴物を日本人特有の赤みが強いものへとシフトさせたい時は,補色関係にある紫色のステイン材を用いるとよいとした.また絵画における対比の技法を応用し,①彩度を上げる,②キャラクターの部位などで明度差を与える,③切縁部は寒色系,歯頸部は暖色系のように補綴物全体に色相差を与える,ことでメリハリのある歯になると説明した.
デンチャー部門
「咀嚼嚥下のできる総義歯を作る」
松平 浩氏(千葉県松戸市/コンプリートプロテーゼ)
松平氏は,口腔周囲筋の付着位置や咀嚼時の動き,印象採得時の口腔内のランドマークなどの解剖学的知識を歯科技工士も身に付けることで,ただ噛めるだけではない“周囲筋肉の活性を生かす”ための義歯が製作できると述べたほか,ポストダムの設定基準を部分床義歯の設計に応用することでクラスプが減らせる可能性もあるなど,総義歯の設計概念を軸にした発想に基づく知見も披露した.
「キャストパーシャルデンチャーのDesign
~NEW 1週間でマスターするキャストパーシャル~」
川島 哲氏(埼玉県川越市/ユニデント)
川島氏は「損失した歯を適切に補い,機能するもの」という自身が考える義歯の定義にあったパーシャルデンチャーの製作方法を参加者に示した.中でもレストの重要性を強調し,従来の義歯の沈下防止以外に“感覚受容器”として咬合圧の制御を図り,残存歯を守る役割があると述べたほか,“本当の意味で患者の口腔内で機能する”ためには,「患者が装着したいと感じるようなデザインを与えること」「大臼歯部にはクラスプを配置しないなど,着脱が容易な設計にすること」が重要だと述べた.
セラミックス部門
「歯肉を理解する」
遊亀裕一氏(横浜市中区/山手デンタルアート)
「補綴物の歯肉に接する部分の形態と表面性状」に的を絞って解説した遊亀氏は,「歯肉の厚みや修復部位に応じて適切なカントゥアは異なる」「歯肉の状態に応じて,プラークコントロールのためにマージン付近や隣接部の表面性状を滑沢にする」「Tornowの法則に則りブラックトライアングルを埋める際には,X線写真などの客観的な情報を活用して骨頂からの距離を厳密に求める」などのアドバイスを,自身の持つ長期症例をエビデンスにして示した.
「A Challnge to Natural Teeth - Past << FUTURE -」
林 直樹氏(アメリカ・カリフォルニア州/Ultimate Styles Dental Laboratory)
プログラムの最終演目では林 直樹氏が登壇し,標記演題で講演を行った.林氏が上梓した『Past << FUTURE -ENVISION 77 HEART BEARTS』(医歯薬出版)に掲載した高度な審美修復症例を供覧したうえで,チェアサイドで支台歯形成を行う前段階で歯科医師と歯科技工士の間で必要十分な情報交換を行うためのツールとしてのプレパレーションガイドの応用についても紹介した.
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なお,次世代を担う歯科技工士の発掘を目的とした本会の目玉企画「新人講師発掘プロジェクト第7回歯科技工登竜門」(モリタ主催)は入賞該当者なしという結果となった.
次回は2013年1月26日(土),ベルサール神田(東京都千代田区)にて開催される予定である.