1月22日(日),九州大学医学部百年講堂(福岡市東区)にて標記講演会が開催された.
本講演会は,2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震後も,多くの人が不自由な生活を強いられている現状に手を差し伸べたいと,山本 眞氏(大阪市中央区/M.YAMAMOTO CERAMIST’S INC.)が発案し,それに賛同した有志の歯科技工士が,「われわれ(歯科技工士)も個人ではなく力を合わせることで東日本の復興支援の一助になれる」との思いで開催したもの.
初回となった福岡大会では3名の歯科技工士による講演のほか,「ジルコニアの現状と将来像」をテーマにしたシンポジウム,チャリティオークションが行われ,総勢274名が参加した.
冒頭,片岡繁夫氏(大阪市西区/大阪セラミックトレーニングセンター)が登壇.事情により急遽参加を見合わせることとなった山本氏に代わって,開催経緯を紹介するとともに,「哀しさや痛みを共有することは難しいかもしれませんが,支援する気持ちを一つにして持続させることはできるはずだと願っています」というメッセージとともに,末永い被災地への復興支援を呼びかけた.

奥森健史氏(奈良県奈良市/デンタル・プログレッシブ)は「~ここから始めよう欠損歯列を再考する~『デンチャーワークのインプラント時代における新たな概念と融合』」をテーマに講演を行った.氏はパーシャルデンチャーの役割として,①歯列弓の保全,②残存歯の保存,③審美性の改善,④生理的機能の回復,の4つを挙げ,上記目的を達成するためには,残存歯,欠損部分,人工歯をアーチ(歯列弓)として一体化させ,その歯列を極力保全できるようにデザインすることが重要になると述べた.(中略)
「審美的な上部構造を製作するためのカスタムアバットメントの設計・制作方法」と題した小田中康裕氏(東京都世田谷区/oral design 彩雲)は,シリコーンコアを用いてプロビジョナルレストレーションの歯頸線を作業用模型にトランスファーする手法を示した後,下部鼓形空隙をラボサイドで塞ぐ方法を5つ示し,臨床例を通じてそのテクニックを供覧した.(中略)
吉田明彦氏(アメリカ・マサチューセッツ州/Gnathos dental studio)は「アート&サイエンス;『前歯部単冠補綴物におけるカラーマッチング』」との演題で,支台歯の色調と補綴物の見え方に対する影響を図示し,オールセラミックス(ジルコニア)の持つ高い明度と透明度を活かすためには,十分かつ適切なマスキングを行う必要があると語った.(中略)
シンポジウム「ジルコニアの現状と将来像」では,座長として増田長次郎氏(姫路市飾磨区/カロス)が,パネリストとして吉田氏,小田中氏,西村好美氏(大阪府茨木市/デンタル・クリエーション・アート)が登壇し,ジルコニア(オールセラミックス)の選択基準やセラミックス症例における注意点などが語られた.
歯科技工界の第一線で活躍する歯科技工士11名の作品や私物などが出展されたオークションでは,ボストンにある吉田氏のラボを見学する“ツアー”や,歯の解剖学的形態の観察に有用な歯根付きポーセレンなどに高額な落札金額が提示された一方で,メーカーから提供された歯磨き粉など比較的安価なものもあり,学生の参加者への配慮もされていた.
本会の参加費とオークションの落札金額から,演者自身に交通費を負担してもらうなどして最小限に抑えた諸経費を除いた約420万円が義援金として,後日被災地へ送られる.また今後は名古屋(3月25日.名古屋市千種区/愛知学院大学楠本講堂),大阪(7月8日.大阪府豊中市/千里ライフサイエンスセンター),東京(9月16日.東京都墨田区/すみだリバーサイドホール)でも同様のチャリティ講演会が開催される.

※本会の詳細は月刊『歯科技工』3月号のRecord欄および後続号のCongress & Meeting Report欄にて掲載します.