8月8日(日),日仏会館(東京都渋谷区)にて,深井保健科学研究所第9回コロキウムが44名の参加者を集め開催され,「口腔の健康は測れるか?」とのテーマのもと,さまざまな視点からの提言とディスカッションが展開された(主催:深井保健科学研究所所長・深井穫博氏).

基調講演として,まず神原正樹氏(大歯大)が登壇.「疾患」をみて「健康」をみてこなかったのがこれまでの歯科医療の枠組みと指摘し,治療学から健康科学としての歯科医療の再構築が求められることを強調された.続いて花田信弘氏(鶴見大)は,ICFの障害分類を紹介するなかで,「社会参加」の概念が健康を捉えるうえでキーワードとなることを示唆された.
その後,「健康をめぐる諸課題」とのテーマのもと,8名の演者によりさまざま視点から健康を捉えるための提言が行われた.なかでも中村修一氏(九歯大)は,ネパールでの20年の地域保健開発活動なかでみられた住民の健康観の変化に触れ,健康に関するニーズと社会環境の関係について貴重な報告を行った.
総合ディスカッション「Measuring health and oral health」では,健康を測るための論点の整理が試みられたが,「健康を測る」ことの難しさも改めて確認されるディスカッションとなった.

多くの疾患が克服され,また予防が可能となったこと,さらには人口構造の変化に伴う疾病構造の変化は,齲蝕が減少し健全歯が多数となりつつある歯科においても同様であり,「疾患」ではなく「健康」を主眼とした歯科医療再構築の必要性は,必然的な流れであると考えられる.とはいえ,「疾患がないこと=健康」という概念は,医療提供側だけでなく,市民感覚としても相当に根深いものであることも浮き彫りとなったように感じたセッションであった.
「健康を測る」は,これからの歯科医療の方向性を見据えた先見的な取り組みであり,職種の垣根を越えた意見交換が活動の基本姿勢である同研究所による今後のディスカッションに大いに期待したい.