12月5日(土),6日(日)の2日間,野口英世記念会館(東京都新宿区)において,標記会が「信頼される歯科医療とは-安心できるインプラント治療を目指して-」をテーマに開催され,約60人の参加者を集めた(座長:高添一郎氏・東歯大名誉教授,須田立雄氏・埼玉医大客員教授・日本学士院会員,山田正氏・東北大名誉教授).

初日は企画委員の前説として,竹澤保政氏(京都府開業)からこれまでの「Dentistry Quo Vadis?」の流れや今回の問題意識について説明がなされた.
次いで開業医発表が行われ,西川統雄氏(京都府開業)は時間軸に注目し介護段階でのインプラント残存の問題点を,島崎盾詩氏(京都府・たけざわ歯科医院)は防御機構に問題を置き検査やメインテナンスのコンセンサスの必要性を述べた.そして最後に高井基普氏(東京都開業)が,インプラント治療におけるさまざまな問題点を整理した.
続いて研究者の講演が行われ,松下健二氏(国立長寿医療センター研究所口腔疾患研究部部長)は「高齢化社会における歯学の使命と課題-老年期,衰退期を想定した歯科医療・医学とQOL-」と題し,生活ステージにおけるQOLの問題や,認知症研究の最前線を述べ,再生なども視野に入れた歯科のイノベーションの大切さを指摘した.高橋信博氏(東北大教授)は「インターフェイス口腔健康科学の概念と口腔バイオフィルム細菌叢生態系-天然歯とインプラントの共存-」と題し,口腔バイオフィルムに注目した天然歯周囲とインプラント周囲の細菌叢を比較した.山田好秋氏(新潟大副学長)は「口腔機能の維持と回復に向けた幅広い問題に関心を持つ-インプラントへの期待と不安-」と題し,生理学の立場から咬合の調節機構を解説し,天然歯とインプラントの相違を述べた.また,高齢者のインプラント治療は口腔機能を使用するという意味では有効な一方で,パーキンソン病発病などによるオーラルディスキネジアにおけるインプラントの問題を指摘した.
2日目は,まず吉成正雄氏(東歯大教授)が「口腔インプラント材料を科学する」と題し,Bioactiveなチタンの性質からオッセオインテグレーションのシステムに基づくインプラント体の開発について,豊富な研究結果をもとに発表を行った.安彦善裕氏(北医大教授)は「インプラント周囲粘膜での防御機構を考える」と題し,自然免疫から獲得免疫に移行することで生じる骨吸収の問題や,ディフェンシンに注目した天然歯およびインプラント周囲の防御機構について,研究成果を発表した.春日井昇平氏(東医歯大教授)は「インプラント治療は両刃の剣-問題症例からの考察-」として,マスコミによるインプラントへの風当たりや,実際の問題症例を紹介し,医療倫理が欠如した一部の歯科医師による行為がインプラントへの風当たりを強くしている状況を説明した.また,患者にとって辛い言葉となる「失敗症例」ではなく「問題症例」と呼ぶことを提唱した.
午後は討論に時間を費やし,オッセオインテグレーションの仕組みから,インプラントへのプロービング,歯科心身症の問題など,インプラントをめぐってさまざまな角度から議論が行われた.

最後の総評では,高添氏がこれまでの内容を整理し,インプラントに対する社会の眼の厳しさに対して,歯科界が議論を継続することの必要性を強調した.また,本会が臨床家による企画であることの重要性を述べるとともに,活発な議論を行った参加者へ敬意を表し,今回の締めくくりとした.