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「2009 SHOFU CERAMICS Congress in Tokyo」開催される

11月15日(日),ベルサール飯田橋(東京都千代田区)にて標記講演会が約450名の参加者を得て開催された.基調講演の演者である山本 眞氏(大阪市中央区・山本セラミスト)が東京で講演を行うのは約10年ぶり(主催:株式会社松風).

 

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山本氏は「歯科用セラミックス~過去から現在,そして未来~」と題し,冒頭で「チューブ陶歯」や「ポストクラウン陶歯」など,1950年代以降の歯冠修復材料の変遷や最新のCAD/CAMシステムの現状に触れ,自らの歯科技工士としての軌跡についても「学生時代は義歯を専攻していたので,金属焼付けポーセレンの講義を聴いても当時はサッパリわからなかった」などの逸話を織り交ぜながら紹介した.

続いて,自身が開発に携わり,講演に先立って本年10月に発売された『ヴィンテージ MP』(以下,MP.松風)の特長について,①焼成収縮下のベース材との高い親和性(焼成収縮による割れや引けがほとんど見られない),②焼付用金属の膨張率の高低にかかわらず優れた適合性をもつ,③オペーク陶材の根本的改良,④色調再現性の向上の4点を挙げ,それぞれについて細かな実験データに基づく図表を,グラフの線に動きをつけるなどの工夫を凝らして平明に解説した(注:『歯科技工』12月号「Hot Focus」にて,山本氏と浅野正司氏がMPの特長を紹介する対談記事を掲載しています)

最後に,ジルコニアと金属の熱伝導率の違いを考慮した焼成スケジュールの必要性や,シェード画像の分析の際に目の錯覚による影響を排するための画像処理法など,臨床に則した知見にも言及した.

 

Zr on Press Ceramics Systemの可能性」では,枝川智之氏(千葉県流山市・パシャデンタルラボラトリー)が講演を行い,初めに山本氏から学んだ臨床哲学として「補綴物の審美性とラボ経営・効率性を両立させるためには,ラボにいながらにして正確な色と形を再現することが望ましい」と述べた.そのうえで,レイヤリング法とプレステクニック法についてそれぞれの手法によって審美性を再現した症例を紹介しつつ,双方のメリット・デメリットを比較して「品質の安定性と作業効率の面ではプレステクニックに軍配が上がる」とした.ただし,表現できる審美性に限界があるため,適応するケースや部位をよく見きわめる必要があることも付言した.

Metal-Ceramics(Vintage MP)の可能性」では,瓜坂達也氏(大阪市中央区・Lucent Dental Laboratory)によってMPの特性が改めて紹介され,特にオペークについては「オペーク自体がしっかりとした色を持っており,オペーカスになりようがない」ことを強調し,MPとステイン材(ヴィンテージ ART;松風)によって審美性を回復した多数の症例を披露した.また,瓜坂氏が日常臨床でのシェードテイキング時に採用しているカメラの設定や,補綴物の色のミスマッチが生じる原因についても,内容や考察結果をそれぞれの項目ごとにわかりやすく分類して示した.

 

最後の講演には西村好美氏(大阪府茨木市・デンタルクリエーションアート)が「歯科審美におけるセラミックスワーク」と題して登壇,ジルコニアコーピングの色調補正や,歯冠形態の観察と機能・周囲組織に調和した再現法,形態修整の要点,材料の透過率の調整による白色の表現,咬合(力)のコントロールを踏まえたフレーム形態など,豊富な臨床経験に裏打ちされた数々のポイントを,軽妙な語り口で聴衆を何度も湧かせながら解説した.また,歯科技工界の厳しい情勢が叫ばれ続けるいまこそ,歯科技工士の世代間を貫く“縦糸”を強固にすることで知識や技術を後進に受け継いでいかなければならないと力説した.

 

演者4氏による講演後のディスカッションでは,山本氏による陶材開発秘話や西村氏の主催するポストグラデュエートコースにかける情熱など,両氏の「本音」の垣間見えるトークが繰り広げられた.

 

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