9月25日(金)~27日(日)の3日間,大阪国際会議場(大阪市)にて,標記学会が「インプラント治療における医療安全・安心」をメインテーマに,4,012名の参加者を集めて開催された(大会長:市川哲雄教授・徳島大).
メインテーマの「医療安全・安心」を受け,基調講演では川添堯彬理事長(大歯大)が「インプラント治療の医療安全・安心」の講演を行い,口腔インプラント学会の医療安全・安心を重視していくこれからの方向性を提示した.また,シンポジウム「医療安全・安心における患者の声を傾聴し,医療者に求められていることを考えよう」では辻本好子氏(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML)が患者の声に主眼を置いた「安全・安心+“納得”」のコンセプトを提示し,医療者とは異なる視点が注目を集めていた.6学会合同のシンポジウム「歯科医療の安全・安心をどのように考えるか:とくにインプラント治療に関連して」においても,学際的領域である口腔インプラントをめぐり,安全・安心を目指した各学会(日本歯周病学会・日本矯正歯科学会・日本補綴歯科学会・日本口腔外科学会・日本歯科麻酔学会)の取り組みが発表された.

教育セミナー「医療安全・安心に結びつくインプラント安定性測定機器について」(座長:山根 進氏・山口県開業,村上広樹氏・愛媛県開業)では,椎貝達夫氏(東京都開業)がトルク値に,熊坂 士氏(東京女子医大)がペリオテストに,新井是宣氏(大歯大)がインプラント安定指数(ISQ)について発表を行った.椎貝氏は,文献に基づきながらも自身の臨床経験を付加した充実した内容であり,埋入トルク値は初期安定度に影響を与えることや,埋入トルク・ISQ・インプラント径の相関関係の指摘を行った.また,トルク値に関しては上顎・下顎は別のものとして考える必要性や,埋入部位や材質での適正な値の差などに気をつけなければならないことを述べた.
「インプラント治療に必要な解剖学の知識」(座長:北村清一郎教授・徳島大)では,井出吉信教授(東歯大)が顎骨に,高橋常男教授(神歯大)が上顎洞に,北村教授が軟組織に,諏訪文彦教授(大歯大)が糖尿病患者の組織像についてそれぞれ講演を行った.井出教授は,皮質骨の厚さや骨梁の緻密さの把握の重要性に注意するとともに,顎骨のどの部分に吸収が起こるのか,埋入したインプラントに負荷がかかると骨内部ではどのような変化が起こっているのかなど,鮮やかな画像と動画を利用した発表で,会場の注目を集めていた.
研究セミナー「バイオマテリアルとアレルギー」(座長:石丸直澄准教授・徳島大)では,小笠原康悦教授(東北大)と横関博雄教授(東医歯大)が,それぞれ金属アレルギーについて最新の研究成果を発表した.金属アレルギーについては未解明な部分も多いものの,現在わかっているアレルギー発生の機序や,開発されてきている治療法など,最新の研究状況が披露された.また,歯科と関係するアレルギーの症例などが豊富に出されており,金属アレルギー患者のコア除去の必要性や,チタンに対するアレルギーなどについて質問が出されていた.

また,今回の大会の特徴として,女性に向けたプログラムの充実があげられる.26日には,西村やよい氏(ビューティーコンサルタント・カラーリスト)を講師に迎えた,女性医療従事者のためのセミナー「好感度アップのナチュラルメイク」(座長:高田尚美氏・東京都開業)が行われ,座長の高田氏が最初に,学会のプログラムの中で最も実用的といえる内容かもしれないと述べた通り,会場には多くの参加者が集まっていた.27日に開かれた,「女性インプラントロジスト育成のためのセミナー―「女性の力をインプラントの未来へ」」(座長:川口和子氏・静岡県開業,立川敬子氏・東医歯大)では,桑鶴利香氏(九大),石川詔子氏(愛媛大),木村洋子氏(北海道開業),川口氏がそれぞれ,現在行っている臨床の内容を紹介するとともに,結婚や出産などこれまで歩んできた道のりの中で,歯科医師としてどのように取り組んできたかが述べられ,出産・子育てとの両立などについて熱心な質疑が行われた.


現在の口腔インプラント治療での最大の関心事ともいえる「医療安全・安心」に沿った統一性のあるプログラムが組まれたことにより,多くの参加者が熱心に聴講する姿が目立つ学会となった.
次回の第40回大会は,2010年9月17日(金)~19日(日)に札幌コンベンションセンター(札幌市)で開催予定である(大会長:松沢耕介氏・北海道開業).