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「第27回 日本顎咬合学会学術大会・総会」開催される

 6月20日(土),21日(日)の両日,東京国際フォーラム(東京都千代田区)にて標記大会が,「アート・サイエンス・クラフトの融合」をメインテーマに開催された.ノンフィクション作家の柳田邦男氏による基調講演「ヒューマンエラー」やThomas J.Han氏(UCLA歯学部教授)による特別講演「歯科臨床の将来ビジョン~歯周病&インプラント治療のはたす役割~」に加え,歯科医師,歯科技工士,歯科衛生士の各部門ではメインテーマに沿ったシンポジウムが行われたほか,歯科医師・歯科技工士セッションをはじめ職種を交えた講演など多彩なプログラムが組まれ,2日間で4,170名(歯科医師2,558名,歯科技工士430名,歯科衛生士908名,研修医93名,一般7名,賛助会員31名,学生143名)が参集した(大会長:夏見良宏氏/香川県丸亀市・夏見歯科医院,プログラムチェアマン:山影俊一氏/仙台市宮城野区・はぎの歯科医院).

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 歯科医師部門では,初日にはテーマシンポジウム「顎口腔系の機能回復と耐久性を考える」において,著名な臨床家5氏が一同に会した.最初に登壇した柏田聰明氏(東京都開業)は,材料・技術の発展は補綴物の審美性の向上をもたらしたものの,歯の保存には十分寄与できなかったと指摘.長期に渡って経過の良好な補綴修復を行うためには,「細菌」と「咬合力」に着目することが必要だとした.続いて,藤本順平氏(東京都開業)は自院での長期経過症例の観察から,咬合の安定性の重要性を説き,なかでも,アンテリアルガイダンスを強めに付与し,ディスクルージョンを確保することがポイントだと指摘.そのためには,咬合器上での付与に留まらず,プロビジョナルレストレーションを用いて口腔内で確認することが重要だとした.5氏のなかで唯一の女性の筒井照子氏(福岡県開業)は,今までの歯科治療は,歯の修復を目的とする「Dentistry」に重きが置かれ,原因を探し,それを取り除き,生体を治癒に導く「Stomatology」の視点が欠落していたと指摘.「Stomatology」の視点から口腔崩壊を分類することで,最小限の介入でより永続性の高い治療が可能になると述べた.5氏のなかで最年少の西堀雅一氏(東京都開業)は,文献考察をもとに,軽度~中等度の歯周炎では咬合性外傷の影響は明らかではないが,重度歯周炎においては咬合性外傷によって症状が悪化する可能性を指摘.炎症の徹底的なコントロールと前歯部咬合誘導の喪失に注意を払うべきだと結論付けた.最後に登壇した岩田健男氏(東京都開業)は,重度歯周病への治療オプションである歯周補綴とインプラント補綴について,その有効性と限界,両者の選択基準などを,文献と長年の臨床経験に基づいて考察.従来の歯周補綴でもメンテナンスが厳格な場合は,長期間,良好な状態を維持できるのに対し,インプラント補綴でも,長期的な維持には,バイオメカニクスや咬合力の考慮,メンテナンスの確実な履行などハードルが多いと指摘した.

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 2日目の午前には,「インプラントビギナーのためのベーシックコース」が行われ,阿部伸一准教授(東歯大)が「インプラントのための解剖学」,河奈裕正講師(慶大)が「切開・縫合の基本を押える」,林美穂氏(福岡県開業)が「インプラントの適応とテクニック」,内藤正裕氏(東京都開業)が「咬合の進化論とインプラント」の講演を行った(座長:南清和氏/大阪府開業,吉竹賢祐氏/大阪府開業).このうち林氏は,インプラントを選択した症例および保存を選択した症例それぞれをあげ,反省すべき点なども含めて,選択を行った際の基準や治療の過程などを詳細に述べた.治療の選択の際にとっている患者本位の姿勢は,会場の共感を呼んだ.
 午後には,「インプラントエキスパートのためのアドバンスコース」が行われ,石川知弘氏(静岡県開業)が「GBR目的に応じたテクニックとマテリアル」,今井俊広氏(鳥取県開業)が「天然歯とインプラントの咬合の調和」,林揚春氏(東京都開業)が「予知性のあるインプラント治療」の講演を行った(座長:細川隆司教授・九歯大).このうち石川氏は,最新の研究を踏まえたGBR法の意義について述べた上で,豊富な症例の紹介などを披露したため,会場の注目を集めていた.

 歯科技工関連の「SCIENCE ニューマテリアル&ニューメカニックから咬合を語る」(座長:齊木好太郎氏/東京都港区・ラボラトリー オブ プリンシピア)では,浅野正司氏(愛知県春日井市/浅野デンタル・アート)が「セラミストに求められる,ジルコニアと専用陶材のサイエンス~堅実なジルコニアクラウン製作のために~」と題し,ジルコニアクラウン製作時のエラーや装着後のトラブルを防ぐために知っておきたい知識を,歯科材料メーカーと共同で行った実験結果をもとに解説した.講演を通じて語られたのは,ジルコニアクラウンに対する“誤解”の払拭や,勘に頼らない科学に基づいた歯科技工の重要性であり,その例として,上顎フルマウスのジルコニアフレームに陶材を築盛し焼成したところ,大量の気泡が発生してしまったという事例を踏まえ,金属とは熱伝導率が異なるジルコニアフレームでは,重量が10gを超えると陶材の焼成不足が生じる懸念があるため,ヒートレートを遅めに設定し冷却期間も十分に取るべきことなどを説明した(講演内容に関連する浅野氏による連載記事を『歯科技工』誌上に掲載しています)
 また,「マイクロワークを科学する・適合精度が支える補綴臨床の成功とそのプロセス─映像から新たに見えてくる適合・歯周・咬合─」では,重村 宏氏(大阪市・Japan Prosthetic Dental Laboratory)が登壇し,Procera(ノーベルバイオケア),LAVA(3M ESPE)のCAD/CAMシステムで製作したジルコニアコーピングと自身が製作したメタルコーピングの適合精度試験の結果を披露した.試験結果は,マージン全周を映したマイクロスコープ画像をつなぎ合わせた映像状で示されたほか,コーピング内面の適合に関してもバイトチェッカーを用いた断面画像をもとに3つの適合性を比較検討し,「(ワックスアップと鋳造工程で活用できる)流体の力と歯科技工士の技がもたらす”しなやかな適合性”」の利点を再認識したという重村氏の考察を述べながらも,「判断はそれぞれの歯科医師,歯科技工士次第です」として聴衆に委ねた.重村氏の講演はその試験結果の供覧のみではなく,氏の実際の手技について,ワックスアップの基本(分離材のコントロール)やマージン調整(辺縁処理),メタル調整(内面の確認方法と気泡の除去方法)などを手元をクローズアップした映像で示しながら丁寧かつ具体的に解説する内容で,過去の同氏の各所での講演との内容的な重なりを排する姿勢も感じられ,実験・検証・考察の上に成り立つ歯科技工学術の供覧という観点からすれば,歯科技工士の講演としては秀逸のものの一つであるように感じられた.
  歯科衛生士部門の演題では,テーマシンポジウムとして「スタディグループ 私たちの活動と展望」と題して,石原美樹氏(名古屋市・スタディグループKOKO代表),小林明子氏(DHサミット代表)ほか5つのスタディグループの代表が各々の活動や特色,今後の展開を述べた.コーディネーターの寺西邦彦氏(港区・寺西歯科医院)は,「スタディグループは,臨床症例を持ち寄り,歯科医師,歯科技工士など他職種とともに議論ができる場であることが望ましい.他のスタディグループとの交流も大切」と語り,各スタディグループの代表からも「結婚・出産で職場を離れる時期も,スタディグループに継続的に参加することで,スムーズな職場復帰につながる」「後進を育てるリーダー的立場の歯科衛生士の育成が急務」といった発言がなされた.

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 歯科衛生士部門テーマシンポジウム会場

 同部門「若き歯科衛生士に受け継がれる歯科衛生士のアート・サイエンス・クラフト」では,安生朝子氏(宇都宮市・藤橋歯科医院),足利奈々氏(広島市中区・柄歯科医院)ほか5名の歯科衛生士から,症例を通して,各院のメインテナンスプログラムや自身の信条,今後の課題を語った.臨床経験から導き出した,より質の高いハイジニストワーク提供のためのシステム構築や新たなアイディアの数々に,参加者からは「つねに向上心をもち,考えながら臨床にあたることが大切だと学んだ」「口腔のみならず患者全体を診ることが全身疾患の発見につながるケースもあると知り,より視野を広げていきたいと感じた」などの声が聞かれた.

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歯科衛生士部門ディスカッション

 また,「歯科臨床における物語(ナラティブ)と対話(コミュニケーション)」では,丸森英史氏(横浜市・丸森歯科医院)と同院の小泉百合氏ほか4名の歯科衛生士が,患者の主観に寄り添った「ナラティブ・ベイスド・メディスン:NBM」に基づく歯科医療のあり方について提言がなされたほか,「現代の医療は患者を同一の型に当てはめたシステマティックなものになりがちである」として,患者の自発的な納得や発見を引き出すブラッシング指導のあり方を歯科衛生士による実例を交えて解説した.

Dr.marumori.JPG 丸森英史氏

 次回大会(大会長:山地良子氏/北九州市小倉北区・ヤマヂ歯科クリニック,プログラムチェアマン:林 揚春氏/東京都新宿区・優ビル歯科医院)は2010年6月12日(土),13日(日),同会場にて開催予定である.


 ※本大会の詳細については,月刊『歯科技工』8月号誌上にてRecord記事を掲載いたします.

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