6月6日(土),7日(日),国立京都国際会館(京都市)にて,標記学会が「咬合・咀嚼が創る健康長寿」をメインテーマに,約2300名の参加者を集めて開催された(大会長:矢谷博文教授/大阪大).
1日目のミニシンポジウム1「側方ガイドをどう付与するか?」(座長:三浦宏之教授/東医歯大)では,藤本順平氏(東京都開業)が「ディスクルージョンの臨床的意義」と題し,竹内久裕講師(徳島大)が「側方ガイドをどう付与するか-研究から臨床へ-」と題して講演を行った.藤本氏は臨床家の立場からアンテリアガイダンス喪失の理由に注目し,長期症例をもとにした発表を行った.
2日目には理事長講演が行われ,本年4月に理事長に就任した佐々木啓一教授(東北大)により「日本補綴歯科学会が今果たすべき役割-これから2年間の学会活動-」と題し(座長:平井敏博教授/北医大・前理事長),「補綴歯科治療の質の向上と保証」を目的とした「アクションプラン2009-2011」についての発表が行われた.この中では,現存の補綴医療である基盤戦略の充実と,再生など新技術を視野に入れた創生をめざす今後の方向性について,新理事長としての方針が明確に示された.

医療委員会報告では,日本歯周病学会との共同作業をもとに「歯周病と補綴治療」と題し(座長:池田雅彦氏/北海道開業・日本歯周病学会,石橋寛二教授/岩医大・日本補綴歯科学会),補綴学会からは山森徹雄教授(奥羽大)が,歯周病学会からは坂上竜資教授(福歯大)が講演を行った.山森教授は,咬合性外傷を有する患者への歯周病治療中における補綴治療について,患者による差はあるものの,条件によっては早期の補綴治療開始が有効であるという方向性を示した.
ミニシンポジウム2「無歯顎症例におけるインプラント治療と予後管理」では(座長:萩原芳幸准教授/日大),小宮山彌太郎氏(東京都開業)が「上顎無歯顎におけるインプラント支台の固定性上部構造」を,前田芳信教授(大阪大)が「上顎無歯顎に於ける可撤性インプラント上部構造の設計と予後に影響する因子」を,それぞれ臨床経験と研究をもとに発表した.小宮山氏は,長期の予後を見据えたインプラント治療の重要性を説き,上部構造は力に対しては一塊が優位であるが,精度・修理・改造については分割が優位である旨を述べた.前田教授は,CTをもとにした骨質の評価からは,上顎への埋入は不利であり,特に前歯部には難しいことを述べた.また,咬合によるインプラントへの負荷についてモデルを用いた検討を行った.両氏とも,上顎無歯顎症例に対しては,6本のインプラント埋入の優位性を述べたことが注目された.
専門医研修会では,「この症例に,この補綴処置」をテーマに,小出馨教授(日歯新潟)が「左右的すれ違い咬合にはこう対応する」,阿部二郎氏(東京都開業)が「下顎全部床義歯を痛くなく確実に吸着させるには」,鈴木哲也教授(岩医大)が「予知性の高い上顎シングルデンチャーの前処置とは」,石上友彦教授(日大)が「有床義歯症例におけるインプラントの設計とメインテナンスの要件」と題して講演を行った(座長/小出教授).石上教授は自らの症例をもとに,インプラントを入れることによって,以降の補綴処置がそのインプラントを中心で考える必要がでてくることを指摘,インプラントによって患者の利益となる症例も多くあるが,まずインプラントの選択を考えるという姿勢には警鐘を鳴らした.

歯科技工セッション「材料をいかに生かして補綴装置を作り上げるか」(座長:横山敦郎氏/北海道大学大学院歯学研究科口腔機能補綴学講座)では,補綴装置の適合性・外形・適合・咬合・色調の向上と安定を図るために歯科材料の特性をどのように生かせばよいか,歯科技工士3氏が技工現場の視点から知見を披露した.
「多数歯欠損症例における補綴装置のマテリアルセレクション―高分子材料(レジン)の多様性―」では,奥森健史氏(奈良県奈良市/デンタル・プログレッシブ)がレジンの特性として「口腔内で自由に着色できる」などの長所をもつ一方,部分床義歯を例に挙げて,機能時に強度的な問題が生じる場合があると指摘し,補綴装置のデザインの工夫による適切な力のコントロールが重要だと述べた.増田長次郎氏(姫路市飾磨区/カロス)は「ジルコニアを理解し,包括的に幅広く歯科臨床へ応用する」との演題で,光透過性を有し,支台歯の色を拾えるジルコニアフレームは色調再現に有利であり,十分な材料強度も有するが,適切なフレームサポートが与えられていなければ築盛陶材の破折の恐れがあると語った.多賀義晃氏(大阪大学歯学部附属病院)は「金属をいかに生かして補綴装置をつくりあげるか」と題し,従来の鋳造法に加えて,近年ではCAD/CAMやレーザー溶接などの登場で金属の加工法が多様化し,対応症例が拡大したが,それぞれの加工原理や作用機序を正しく理解していなければ,テクニカルエラーの原因を探れないまま失敗を繰り返してしまう恐れがあるとした.
なお今回は2日間,著名な臨床家による早朝ミニレクチャーが開かれ,宮内修平氏(大阪府開業),茂野啓示氏(京都府開業),南昌宏氏(大阪府開業),中村公雄氏(大阪府開業),月星光博氏(愛知県開業),宮本泰和氏(京都府開業)による,自らの臨床をもとにしての発表がなされた.朝早くの開催ではあったが,どのミニレクチャーも参加者での熱気であふれた.
次回学会は,2010年6月11日(金)~13日(日)に東京ビッグサイト(東京都江東区)にて開催予定(大会長:志賀博教授/日歯大).
※歯科技工セッションについては,月刊『歯科技工』7月号にてRecord記事を掲載する予定です.