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「SJCDテクニシャンコースOB会特別講演会」開催される

 4月29日(水・祝),千里ライフサイエンスセンターライフホール(大阪府豊中市)において標記講演会が開催された.本講演会は,大阪SJCDが主催する歯科技工士向けのポストグラデュエートコースである「大阪SJCDテクニシャンコース」が,設立から13年目を迎えて2名の若手インストラクターが新たに加わることから,この節目にSJCDの概念を再度確認し,時代の流れに対応した歯科医療の方向性を提示するために企画された.今回は8名の歯科医師・歯科技工士による講演や24社のメーカーによる企業出展が行われ,歯科医師,歯科技工士,歯科技工士養成校の在学生などを中心に約450名が参集し,サテライト会場をも埋め尽くすほどの活況を呈した.

 

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初めに登壇した木原敏裕氏(奈良県生駒市/木原歯科医院)は「歯科治療における三大要素(矯正・インプラント・審美補綴)」と題し,症例に応じて矯正治療,補綴治療,インプラント治療などを適切に組み合わせることで,患者の審美的な要求に応えることができると力説.またインプラント治療に関して,サブジンジバルカントゥアの設定の重要性や,ジルコニアコーピング製作時のスキャニング精度向上を図るための支台歯形成のコツを紹介した.(中略)

 

藤本光治氏(大阪市淀川区/ミナミ歯科クリニック)は「日常臨床におけるプロビジョナルレストレーションの使い方―形態・色調・歯周組織との調和を目指して―」との演題で,精確なプロビジョナルレストレーションの活用によって,最終補綴物の清掃性の評価や支台歯形成時の削除量の計測が可能になるとしてその有用性を強調した.また,歯科技工士だけでは優れたプロビジョナルレストレーションを完成させることはできず,歯科医師による細やかな修正がポイントになるとした.(中略)

 

「歯科技工における治療咬合の要件」では,藤尾 明氏(大阪府東大阪市/本多歯科医院)が,前歯部の長期的安定を得るためには咬頭嵌合位の安定が欠かせず,そのためには適切なバーティカルストップと臼歯部咬合面形態が必要であるとして,「カスプトゥフォッサによる三点接触の原理」などの基本概念を解説したほか,臼歯咬合面の咬頭干渉を避けるための咬合面形態の構築について知見を述べた.(中略)

 

川内大輔氏(奈良県生駒市/ファイン)は「口腔内環境を考えた審美修復」として,特に若手歯科技工士にとって有効な手法として,強化ガラスセラミックスを用いたステイン法を提示し,オールセラミックスレストレーションでは支台歯色に合わせた材料選択を行うべきであると力説した.また,審美修復を行う際のポイントとして,顔貌全体の正中線を意識することや歯周組織に調和させることなどを挙げた.(中略)

 

西村好美氏(大阪府茨木市/デンタルクリエーションアート)は「審美修復と歯科技工」とのテーマのもと,炎症のコントロールと力のコントロールを行うことで補綴物の「longevity(長期持続性)」が得られるとして,それを実践した数多くの臨床例を供覧した.そして,歯科技工士としてさらなる知識と技術を獲得し,患者によりよい歯科医療を提供するためにも,講演会などに積極的に参加して,情報収集・交換を行うことが大切であると,若手歯科技工士や学生の参加者らを激励した.(中略)

 

桜井保幸氏(ファイン)は「MIコンセプトに基づくインプラント治療~simple & sure~」と題し,インプラント治療においてMI(Minimal Intervention;最小限の侵襲)を実践するためには,生物学的要素を考慮しながら治療を進めることが不可欠であるとして,抜歯後の骨吸収や歯根膜からの血液供給の有無やその影響などについて説明した.また,上顎前歯部審美領域のマージンラインを整えるために,症例に応じて歯肉縁下マージンを設定するとよいとアドバイスした.(中略)

 

「インプラント技工の現状」と題して登壇した寺尾登喜雄氏(神戸市中央区/神戸デンタルアートスタジオ)は,インプラント技工の変遷を追うとともに,自身がインプラント治療を受けた際,術後に思っていたように噛めなかった経験を踏まえ,患者の術後負担を軽減することが最重要課題であると訴えた.また,それに応えるための一方策として『NobelGuide』(ノーベルバイオケア)による精確なサージカルテンプレートの応用とAll-on-4による即時埋入法の有効性を提示した.(中略)

 

最後に登壇した,大阪SJCD最高顧問の本多正明氏(本多歯科医院)は,「『SJCDの概念』―咬合,補綴治療の考察―」との演題で,SJCDの歴史を振り返りながら,1974年にはすでに「Interdisciplinary Approach(歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士が協同して行う包括的な治療法)」の概念が提唱されていたことなどを紹介し,「このような根本的かつ重要な考え方をわれわれ歯科医療従事者はしっかりと受け継いでいく必要があります」と参加者に訴えた.そして,「歯科技工士は自然科学の知識と技術を駆使する“Dental Technologist”であるべきです」との持論を述べ,今後の歯科医療にさらなる貢献が求められる歯科技工士の活躍に大きな期待を寄せた.(了)

 

※本講演会については,月刊『歯科技工』6月号にてRecord記事を掲載します.

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