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第57回 日本口腔衛生学会総会・学術大会開催される

 10月2日(木),3日(金),4日(土),大宮ソニックシティ(埼玉県さいたま市)にて,標記学術大会が,「健康国家の創造と口腔保健」をメインテーマに開催され,約600名が参加した.(大会長:安井 利一/明海大学歯学部社会健康科学講座口腔衛生学分野教授)

 シンポジウム「シンポジウムIII 食の選択力と口腔保険」では,向井美恵氏(昭和大学口腔衛生学教室)を座長に,日本歯科医師会,日本学校歯科医会,日本歯科衛生士会,日本歯科医学会の4団体から,それぞれ武井啓一氏(歯科医師/武井歯科医院),丸山進一郎氏(歯科医師/アリスバンビー二小児歯科),北田つねこ氏(歯科衛生士/茂原市役所),井上美津子氏(歯科医師/昭和大学小児成育歯科学教室)が登壇,各学会における食育推進の取り組みを発表された.
 「医科における食育」は,おもにメタボリックシンドローム予防とされているが,「歯科における食育」とは,8020につながる口腔の健康づくりであるとし,ともすれば幼少期に向けた取り組みと解釈されがちな食育を,「出生してから亡くなるまで,生涯を通じておいしく食べるための支援としての食育」として推進していくことが改めて強調された.

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 「シンポジウムIV 介護予防力と口腔保険」(座長:花田信弘氏/鶴見大学探索歯学講座)では,介護保険制度の解説ならびに歯科における現状と求められる課題および展望を植田耕一郎氏(日本大学摂食機能療法学講座)が,開業歯科医として,歯科診療の現場における介護保険制度の実情と問題点を鈴木俊夫氏(名古屋市・鈴木歯科医院)が解説した.また,介護予防における口腔機能向上プログラムの担い手たる歯科衛生士の立場から関口晴子氏(東京都老人総合研究所介護予防区市町村サポートセンター)が取り組み例を紹介され,在宅歯科医療における他職種との連携についてを,菊谷 武氏(日本歯科大学附属病院)が解説された.昨今「歯科不況」という表現が用いられて久しいが,診療室から一歩外に目を向ければ,医療,介護,保健の現場では歯科に追い風が吹いている,という演者のコメントが印象的であった.

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 「シンポジウムV 女性の健康力と口腔保健」では,女性のライフイベントと女性ホルモンとの関係について,主に更年期を焦点を当てた講演が展開された.更年期になり閉経すると,皮膚の粘膜乾燥,骨量の減少など,女性の身体には大きな変化があり,口腔にも口腔乾燥症,顎関節症,歯周病などさまざまな症状が表出する.歯科医療職もこれらに対する理解を深め,医療に活かしていくことが重要であることが強調された.
 また,多くの聴講者で賑わった教育講演では,「格差社会」の著書でも有名な橘木俊詔氏(同志社大学経済学部経済学研究科)が登壇.格差社会における公衆衛生をテーマに,医療における身近な事例を挙げつつ,興味深く展開をされた.これからの医療福祉施策として,日本人はいま①高福祉・高負担の北欧型を目指すか,②低福祉・低負担の自立型(米国型)を目指すか,③現在の皆保険制度から負担水準を上げた中福祉・中負担を目指すか,を選択する岐路に立たされていると述べられた.
 本大会では,平成19年4月に出された「新健康フロンティア戦略」への視点がふんだんに取り込まれており,「歯の健康」「女性」「食育」「介護」「メタボリックシンドローム対策」等への,多方面からの切り口が特徴的であった.多彩な演題からも,口腔保健領域が国民生活や生活習慣と密接に関わりあっていることが示唆された.

 

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