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「技友会学術講演会『夏のサンデートーク』」開催される

 8月31日(日),東京医科歯科大学(東京都文京区)において「もっと聞いてみよう! ラボ開業のうらおもて」をテーマに標記講演会が,約60名の参加を得て開催された(主催:同大学歯学部附属歯科技工士学校同窓会「技友会」).

 3回目となる今回は,講師に高橋 健氏(川崎市高津区/Smile Exchange),冨田佳照氏(東京都文京区/FEAL),井ノ内由布子氏(横浜市栄区/プレシジョン・デンタル・セラミック)を迎え,各氏のラボ開業までの道程などが披露されるとともに,参加者を交えたオープンディスカッションが行われた.
 リレー形式での講演ではまず,井ノ内氏が24歳でラボを開業した当時の心境や,ラボ内の配線をすべて自分で行ったという苦労話を語った.当初から“開業できる”ことに魅力を感じて歯科技工士という職業を選択したという井ノ内氏は,「開業することは自然な流れだったと思います」と述べつつも,歯科技工士養成校(以下,養成校)を卒業後わずか3年という早さで開業したことについては「もう少し計画を立てるべきでした」と話し,開業当初は歯科技工物製作の際,歯科医師からの要求に応えきれないことが多かった内輪話などを明かした.そのような経験から,開業後も積極的に講習会や勉強会に参加することが重要であるとし,そこでは技術の研鑽を積めるだけでなく,仕事に対するモチベーションも高められることも意義深いとの見方を示した.また,現在は母親として仕事と育児を両立させている大変さや喜びも語った井ノ内氏は,歯科技工士を「自分のスタイルで仕事ができ,女性に向いている職業」と位置付け,参加した多くの女子学生を激励していた.
 続いて登壇した冨田氏は,養成校時代から院内ラボ勤務,ラボ開業に至るまでの多くの出会いについて,当時の写真を交えながら紹介したほか,ラボにする物件の電気容量については不動産会社の説明を鵜呑みにはせず自分で調べることが大切であることを訴えたり,ラボの移設資金を借りるために作成した事業計画書を参加者に披露したりするなど,現在のラボに至るまでの詳細な過程を示した.移設以前は4畳半のラボで2年間過ごしたという冨田氏は,「その2年間で,開業に関わる理想と現実や,自分が本当にやりたいことが見えてきました」と振り返ったうえで,今後の小規模ラボのあり方にも触れ,巨額な設備投資の困難さを指摘しながら「複数のラボで一つのCAD/CAM機材を共有するなど,小規模ラボが連携することで互いに活性化することができると思います」と話した.
 そして最後に高橋氏が登壇し,先々のことを考えて計画を立てる“人生設計”の必要性を訴えた.「自分が,いつの日か歯科技工士を退職する時のことを考えると自ずと今すべきことがわかるはずです」と語った高橋氏は「一番大事な時期は養成校を卒業してからラボを開業するまでの期間です」と述べ,その間に自分の将来像を明確にすべきであるとした.それを実践した高橋氏は,院内ラボに勤務しながらほかの歯科医院の仕事を受けるなど,ラボ開業を見据えた仕事をしていたという.

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 3氏の講演後にはオープンディスカッションが行われ,「経営者が求める人材像とは?」という学生からの質問には3氏が共通して「何よりもまずは当人の人間性」と答えたほか,開業を目指しているという歯科技工士からの「歯科医師とのコミュニケーションの取り方のコツはありますか?」との質問には「若年の歯科医師はメールを好み,年輩の歯科医師であれば直接会ったほうがよいなど,年代によって最善の方法は異なると思います」(冨田氏)と回答がなされた一方,高橋氏からは「歯科技工界の現況を鑑みると,これからは開業が最良の形というわけではなくなってくると思います」と,やみくもに開業を目指すのではなく,歯科技工士としてスキルアップをすることが第一であるとの意見も示された.また女子学生から井ノ内氏への「出産後のブランクなどはありましたか?」との問いには,「産休は1カ月しか取らなかったので,ほとんどブランクはありませんでした」と話し,男性演者2氏を含め,会場全体を驚かせていた.

※本講演会については月刊『歯科技工』12月号誌上にて,参加した歯科技工士によるレポート記事を掲載いたします.

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