7月13日（日），東京国際フォーラム（東京都千代田区）において標記講演会が「CAD/CAMとジルコニアを用いたオールセラミックスレストレーションの現状と展望」と「歯科医師-歯科技工士のコミュニケーション」を主なテーマに据えて開催され，400名を超える歯科医師，歯科技工士が参加した．
第一部「連携・CAD/CAMワーク～ラボとクリニックと共に～」では，まず導入としてコーディネーターの日高豊彦氏（神奈川県川崎市・日高歯科クリニック開業）がメタルと比較した場合のオールセラミックスレストレーションの優位点やマテリアルセレクションの基準を示し，接着性の高いセメントを使用することで破折強度を高められるといった臨床のポイントなども披露した．
次いで，陸 誠氏（横浜市港南区・コアデンタルラボ横浜開業）が「CAD/CAMワークの注意点及び，ラボとクリニックの連携」と題して，自身のラボに導入している主催社の最新CAD/CAMシステム『GM-1000』の特徴や，同システムを活用してジルコニアコーピング/アバットメントを製作する一連のサービス「Aadvaシステム」の概要を紹介した．また，歯科医師と歯科技工士のコミュニケーションについて，歯科医師はCAD/CAMでの修復物製作を依頼する際には印象採得と模型製作を厳密に行う必要があること，歯科技工士は必要があれば診断用ワックスアップなどを通じて修復物の形態について積極的な提案を行っていくべきであると訴えた．
第二部「技・オールセラミックス～機能と審美～」では，冒頭で日高氏がオールセラミックスレストレーションにおける支台歯形成とシェードテイキングの要点を解説．前者については，具体的な形成量の基準を示すとともに，「多くの歯科医師は支台歯を均等に形成する“クセ”がありますが，最終修復物に対してどれほどのクリアランスを与えるかを意識して形成することこそが重要です」といった注意を促し，後者については，補色残像を参加者に体験させながら，作業・撮影環境を適切に整える必要性を述べた．
続いて，「FUNKTION AND BEAUTIFUL～CAD/CAM Systemにおける臨床の現在～」との演題で，税所秀揮氏（大阪府吹田市・インプレッション・デンタル開業）がGM-1000で製作されるカスタムアバットメント『FDアバットメント』について概説したほか，臨床例を通して，インプラント隣接面への歯石の付着を防ぐために，上部構造の立ち上がりをなるべくストレートにするといったコツを多数紹介した．
「色調表現に必要な基本築盛と応用」では，脇田太裕氏（大阪府高槻市・D.デンタルセラミスト開業）が，審美修復をこれから始めようとする歯科技工士向けに「必要最小限の色で幅広い表現を行う」ための築盛のコツと歯冠形態や表面性状の与え方を詳説した．特に築盛については，「トランスルーセントを唇側に多めに盛ることで透明感を強調できる」「切縁隅角部に角をつけることで立体的な透明感を表現できる」といった知見が惜しげもなく披露された．
最後に，アメリカから来日した相羽直樹氏（カリフォルニア州・Science Art, Inc開業／oral design Monterey）が「“DENTSCAPE”─Dental Photography for Dentist-Laboratory Communication─」と題して登壇．歯科技工士によるシェードテイキングにおける器材の選択基準や，「歯のテクスチャを観察したいときは歯面に対してフラッシュを垂直にし，色調や内部構造を観察するときはやや斜め上方からカメラを構える」などといった撮影のポイントを具体的に説明した．また，歯科医院とデジタルデータのやり取りだけで審美修復を行う際には，歯科医師から“Shade View”と“Facial View”という2つの規格に基づく情報を用意するよう依頼しているとして，その手法によって行ったジルコニア修復の臨床例を供覧．その卓越した手技に多くの参加者が感嘆の声を上げていた．
講演終了後にはコーディネーターと第二部の演者によるディスカッションも行われ，ジルコニアを臨床応用する際の注意点などが語られた．
※本講演会の内容については『歯科技工』および『補綴臨床』誌上にて記事掲載いたします．