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東京歯科大学歯科衛生士専門学校同窓会セミナー開催される

 6月29日(日),東京歯科大学水道橋病院血脇記念ホール(東京都千代田区)にて「インプラント治療の現実と幻想―歯科衛生士に期待すること―」と題した標記セミナーが開催された.かねてより同窓会会員からの要望がもっとも多かったインプラント治療がテーマとあって,卒後まもない新人からベテランまで多くの歯科衛生士が参加した.

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 講師の矢島安朝氏(東京歯科大学口腔インプラント学研究室教授)は,齲蝕治療や歯周治療が“病態”を“常態”へと改善・治癒させることを目的としているのに対し,インプラント治療は,歯の欠損という,変化あるいは機能障害への治療として,機能的・審美的に優れた“病態”を作り出している点に特殊性があるとして,インプラント治療において歯科衛生士が備えるべき要件には,「患者と信頼関係を築くためのコミュニケーション能力」「氾濫する情報に惑わされないたしかな知識」「チーム医療の一翼を担っているという意識と優れた技術」をあげ,その根拠について,最新の知見や潮流,社会的背景を交えて解説した.

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講師の矢島安朝氏

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質疑応答の様子


 インプラント治療の一連の流れにおいては,「術前のカウンセリング」「埋入手術時」「メインテナンス」が,歯科衛生士が特に重要な役割を果たす場面であるとし,「治療をめぐるトラブルの多くは“事前に十分な説明がなかった”“話を聞いてくれなかった”といったカウンセリング時の対応への不満に端を発している」など,各場面で歯科衛生士の力が求められる根拠を示すとともに,「術者とアシスタントでは術野の見え方が違う.この視野の違いを活かして術者をサポートしてほしい」など,期待したい役割についても具体的な解説がなされた.
 さらに,安全な手術環境の整備も喫緊の課題であるとして,「滅菌(微生物の完全除去)」と「消毒(菌数を無害なレベルまで減らす)」といった概念の理解や,清潔域・不潔域の区分徹底など,感染予防に不可欠な知識を院内スタッフ全員が共有・実践することによってはじめて,患者と術者の双方が安心して治療に取り組める環境が実現すると強調した.
 セミナー後半では,「インプラントの耐用年数は?」「インプラント部位へのプロービングの有効性は?」など,事前アンケートで募った質問や会場からの質疑に対し,明日からのカウンセリングや臨床に活かせる内容を織りまぜつつ,症例や文献的根拠を示しながら回答,見解を示した.
 他の治療と比較して,インプラント治療は術者と患者の双方にとって“ハイリスク・ハイリターン”の治療といえるだけに,リスクへの理解が不十分な場合,両者がともに過度な期待,つまり“幻想”を抱きやすい側面をもつ.それゆえに,まず術者がインプラント治療の“現実”を理解したうえで,科学的コンセンサスが十分とはいえない術式に関しては特に,治療による効果とリスクを患者に明確に伝え,最終的には患者自らの意志で治療法を選択することが,患者との強固な信頼関係の構築と,インプラント治療の質の向上・成熟につながるであろうと締めくくった.

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