5月18日(金)~20日(日),神戸ポートピアホテル(神戸市)にて,(社)日本補綴歯科学会第116回学術大会(以下,本大会)と第5回アジア補綴歯科学会(以下,AAP)の共催となる「国際補綴歯科学会神戸2007」が2000人超の参加者を集めて開催された.
本大会のメインテーマは「咬合・咀嚼が創る健康長寿」.超高齢化という社会状勢を鑑み,前回と同じテーマを継承したもので,学会としてさらに議論を深めていく姿勢を内外にアピールした.
初日に行われた(社)日本補綴歯科学会総会では決算など6議案が審議されたほか,「補綴専門医」の広告公示の早急な実現に向けた,今後の活動方針などが提案された.

総会で挨拶する平井理事長
本大会の特別講演では井村裕夫氏(先端医療振興財団)が「長寿社会と健康科学の課題」,理事長講演では平井敏博理事長が「健康科学を基盤とした歯科補綴学の構築と推進」と題して,それぞれ,今後の医療,および補綴歯科の目指すべき道筋を提示した.
海外招待講演ではDr. Stephen F. Rosenstiel(オハイオ州立大)が「Restoration of Endodontically Treated Teeth」のテーマで,失活歯の修復の治療オプションをさまざまな角度から検討.また,Dr. Neal Garrett(UCLA)は,癌治療後の患者などで必要とされる顎補綴において,インプラント支持の補綴の優位性を研究データに基づいて説明した.
シンポジウムⅠは,特に西欧諸国で増加しつつある,短縮歯列(SDA)がテーマ.山下秀一郎氏(松歯大),池邉一典氏(阪大),馬場一美氏(東医歯大)の各シンポジストが,患者のQOLの評価,下顎頭の変位,エビデンスとされる研究データの再検討などを通して,日本人にSDAを適応する際に考えるべき諸課題を提示した.
シンポジウムⅡは「インプラントの咬合:分かっていること,いないこと」.武田孝之氏(東京都開業),前田芳信氏(阪大)が座長を務め,インプラントの咬合について解明されている部分とそうでない部分の整理を行ったうえで,臨床でインプラントの咬合をどのように与えるかについて,発表が行われた.文献的なエビデンスを中心にまとめた松下恭之氏(九大),日常臨床から生まれた疑問やその対応法を,実践的に解説した永田省藏氏(熊本県開業),中村公雄氏(大阪府開業),パラファンクションについてエビデンスと対処法を解説した細川隆司氏(九歯大)の4氏とも,未解明な部分の多いこのテーマに,それぞれの立場から挑戦し,参加者に議論の材料を提供していた.

シンポジウムⅡ「インプラントの咬合:分かっていること,いないこと」
教育セミナーⅠ「咬合を取り巻く心身医学的な疾患・障害の理解」(築山能大座長;九大)は,日々診療所で対応に苦慮する事例の解決に大きなヒントを与えた.また,同Ⅱ「補綴治療に関するガイドライン策定に向けて」,同Ⅲ「統計解析を踏まえた歯科補綴学研究計画」ともに,今後の補綴歯科治療・研究の基盤となるテーマで,それぞれ活発な議論が交わされた.
また,臨床スキルアップセミナーは「接着ブリッジを成功させるために」.臨床の現場で評価の分かれがちなテーマを,熱田充座長(長崎大),近藤康弘氏(岡山県開業),安田登氏(東京クリニック丸の内オアゾmc)が,長期症例に基づいて討論した.
社団法人化,学術大会の年1回化など,社会の動向に合わせて矢継ぎ早に改革を進めている本学会の勢いは,プログラムの内容にも反映され,本大会でも臨床の現場における今日的なテーマを扱った講演やシンポジウムが,特に人気を集めていた.今後,支部学術大会,他学会とのジョイントシンポジウムなども多数予定されており,いずれも盛会が期待される.