序文
一世代ほど前の矯正学では,ドイツ風の考え方,展望および臨床をアメリカ風に変えることは,言語をドイツ語から英語に変えること以上に大きな変化であった.当時,ドイツ,アメリカの矯正歯科医が,診断や治療について著すと,互いに大西洋を隔てた両国の読者にとっては,それぞれの手法が理解しがたいということがしばしばあった.しかし近年になって,ドイツの矯正歯科医らが,より広範囲にわたって文献研究を行った結果,アメリカ的手法は今やヨーロッパ全土に知れわたり,臨床上も普及するようになった.こうしては,彼らは互いに異なる臨床的アプローチを有効に組み合わせることに成功したのである.残念なことに,多くのアメリカの矯正歯科医は,ドイツ風の診断法や治療法についての知識がほとんどない.機能的顎整形法はノルウェーのAndresenやフランスのRobinの発案によるものであるが,どの国よりもまずドイツの臨床医らによってより広く応用され,やがて南北アメリカでも使用されるようになったのである.しかし忘れてはならないのは,一部のドイツ臨床医らは2つの方法,すなわちマルチブラケット装置と機能的顎整形装置の両者を組み合わせて使用する点で,より経験が豊かであるということである.
本書は,著者らが多種多様な症例に応じて実践してきた診断法を丁寧に紹介している.これまでの歯科矯正学文献のなかでも他に類をみないほど多くの写真・図を掲載しており,文章が簡潔である.また,鑑別診断や紹介されている治療結果にうまく的を絞っている.著名な教師であると同時に執筆家でもある著者らのそれぞれ異なる背景と実績を生かし,すでにヨーロッパで十分に受け入れられている本書をアメリカの読者にも提供しようとするものである.
Rakosi教授,Jonas教授,そしてGraber教授は,矯正臨床におけるドイツの貢献の証となる本書の英語版を出版することによって,英語を母国語とする矯正歯科医らに対して偉大な恩恵を与えたことになるであろう.
Robert E.Moyers,D.D.S.,Ph.D.
D.Sc.(hon.Thessaloniki),Dr.Odont.(hon,Lund)
Professor Emeritus,School of Dentistry(Orthodontics)and Fellow Emeritus, Center for Human Growth and Development University of Michigan,Ann Arbor,Michigan,USA
一世代ほど前の矯正学では,ドイツ風の考え方,展望および臨床をアメリカ風に変えることは,言語をドイツ語から英語に変えること以上に大きな変化であった.当時,ドイツ,アメリカの矯正歯科医が,診断や治療について著すと,互いに大西洋を隔てた両国の読者にとっては,それぞれの手法が理解しがたいということがしばしばあった.しかし近年になって,ドイツの矯正歯科医らが,より広範囲にわたって文献研究を行った結果,アメリカ的手法は今やヨーロッパ全土に知れわたり,臨床上も普及するようになった.こうしては,彼らは互いに異なる臨床的アプローチを有効に組み合わせることに成功したのである.残念なことに,多くのアメリカの矯正歯科医は,ドイツ風の診断法や治療法についての知識がほとんどない.機能的顎整形法はノルウェーのAndresenやフランスのRobinの発案によるものであるが,どの国よりもまずドイツの臨床医らによってより広く応用され,やがて南北アメリカでも使用されるようになったのである.しかし忘れてはならないのは,一部のドイツ臨床医らは2つの方法,すなわちマルチブラケット装置と機能的顎整形装置の両者を組み合わせて使用する点で,より経験が豊かであるということである.
本書は,著者らが多種多様な症例に応じて実践してきた診断法を丁寧に紹介している.これまでの歯科矯正学文献のなかでも他に類をみないほど多くの写真・図を掲載しており,文章が簡潔である.また,鑑別診断や紹介されている治療結果にうまく的を絞っている.著名な教師であると同時に執筆家でもある著者らのそれぞれ異なる背景と実績を生かし,すでにヨーロッパで十分に受け入れられている本書をアメリカの読者にも提供しようとするものである.
Rakosi教授,Jonas教授,そしてGraber教授は,矯正臨床におけるドイツの貢献の証となる本書の英語版を出版することによって,英語を母国語とする矯正歯科医らに対して偉大な恩恵を与えたことになるであろう.
Robert E.Moyers,D.D.S.,Ph.D.
D.Sc.(hon.Thessaloniki),Dr.Odont.(hon,Lund)
Professor Emeritus,School of Dentistry(Orthodontics)and Fellow Emeritus, Center for Human Growth and Development University of Michigan,Ann Arbor,Michigan,USA
訳に当たって
序文
緒言
I 基本原則
1.診断の意義……3
総合診断……4
診断過程……5
2.頭蓋顔面骨格の成長……6
膜内骨化……8
軟骨内骨化……10
3.成長のメカニズム……13
骨内膜性および骨膜性の成長……14
皮質骨のドリフト……15
再配置と改造……17
“V”原理……19
骨表面上の原理……20
成長の場……21
位置移動……22
4.成長過程……23
上顎骨の成長……23
下顎骨の成長……24
中顔面の成長……26
成長等量……28
5.成長制御因子……29
頭蓋顔面の形態発生にかかわる局所因子……30
軟骨内骨化に影響を及ぼす因子……31
膜内骨化に影響を与える因子……31
成長過程が影響をうける程度……32
ファンクショナルマトリックスのメカニズム……33
6.位置異常の分類―命名法……35
個々の歯の位置異常……35
多数歯にわたる位置異常……37
不正咬合……45
オーバージェット……47
咬合の評価……51
7.不正咬合の原因……57
不正咬合の原因……59
遺伝的異常……60
神経筋機構……60
歯列……61
骨格……70
骨格的不正咬合……72
軟組織……74
後天的形成異常……75
発育障害……75
外傷……77
物理的な因子……80
乳歯の早期喪失……82
呼吸……83
不良習癖―口腔顔面の機能不全……85
疾患……88
II 診断手順
1.既往歴……93
既往歴の解釈……95
2.臨床検査……97
全身的状態……97
歯齢……98
生物学的年齢と手のX線写真……102
成長のリズム……107
3.特殊臨床検査……108
頭蓋と顔面の検査……108
軟組織の検査……110
額……110
鼻……111
口唇……112
オトガイ……114
舌……116
唇小帯と頬小帯……117
歯肉……118
口蓋粘膜と口蓋弓……120
歯列の検査……121
4.機能分析……123
顎位の検査:下顎安静位と習慣性咬合位……123
下顎安静位の決定法……123
安静位の記録……126
安静位と習慣性咬合位の関係の評価……128
矢状面での評価……128
垂直面での安静位と習慣性咬合位の関係の評価……132
水平方向での安静位と習慣性咬合位の関係の評価……133
顎関節診査……135
臨床検査……135
下顎の開閉口運動……138
顎関節のX線写真診査……140
口腔顔面の機能異常の診査……141
嚥下……141
舌突出……145
口唇の機能異常……155
頬の機能異常……158
オトガイ筋の機能亢進……159
5.X線検査……167
歯の状態……167
6.写真分析……173
側貌観……173
側貌の突出度……176
正面観……177
7.側面頭部X線規格写真分析……179
側面頭部X線規格写真分析に使用する基準点……180
頭部X線規格写真の基準線……182
頭部X線規格写真計測値の解釈……184
顎骨基底の距離的計測……186
骨格性側貌の分析……188
顔面骨格の垂直的分析……190
成長方向―下顎の回転……192
上顎基底の回転……194
上下顎の回転の組み合わせ……196
切歯の位置の分析……198
頭部X線規格写真による不正咬合の分類……200
頭部X線規格写真―予後の判定……204
8.診査用模型の分析……207
歯列弓形態の距離的分析……208
歯列弓幅径……208
前方部歯列弓長径……211
歯列弓の対称性……213
左右対称性の分析……214
前後的対称性の分析……216
口蓋高径……218
側方歯群の分析……219
比率表からの予測……220
X線写真と予測表を組み合わせた方法……221
永久歯列弓における空隙分析……222
ディスクレパンシーの計算……224
垂直平面における分析……227
Bolton分析……228
Reesによる歯槽基底の分析……231
咬合の診査……232
治療計画……235
III 治療計画―症例
治療計画症例1……238
治療計画症例2……244
治療計画症例3……250
付録
記録用紙……258
謝辞・写真提供……264
文献……265
索引……269
序文
緒言
I 基本原則
1.診断の意義……3
総合診断……4
診断過程……5
2.頭蓋顔面骨格の成長……6
膜内骨化……8
軟骨内骨化……10
3.成長のメカニズム……13
骨内膜性および骨膜性の成長……14
皮質骨のドリフト……15
再配置と改造……17
“V”原理……19
骨表面上の原理……20
成長の場……21
位置移動……22
4.成長過程……23
上顎骨の成長……23
下顎骨の成長……24
中顔面の成長……26
成長等量……28
5.成長制御因子……29
頭蓋顔面の形態発生にかかわる局所因子……30
軟骨内骨化に影響を及ぼす因子……31
膜内骨化に影響を与える因子……31
成長過程が影響をうける程度……32
ファンクショナルマトリックスのメカニズム……33
6.位置異常の分類―命名法……35
個々の歯の位置異常……35
多数歯にわたる位置異常……37
不正咬合……45
オーバージェット……47
咬合の評価……51
7.不正咬合の原因……57
不正咬合の原因……59
遺伝的異常……60
神経筋機構……60
歯列……61
骨格……70
骨格的不正咬合……72
軟組織……74
後天的形成異常……75
発育障害……75
外傷……77
物理的な因子……80
乳歯の早期喪失……82
呼吸……83
不良習癖―口腔顔面の機能不全……85
疾患……88
II 診断手順
1.既往歴……93
既往歴の解釈……95
2.臨床検査……97
全身的状態……97
歯齢……98
生物学的年齢と手のX線写真……102
成長のリズム……107
3.特殊臨床検査……108
頭蓋と顔面の検査……108
軟組織の検査……110
額……110
鼻……111
口唇……112
オトガイ……114
舌……116
唇小帯と頬小帯……117
歯肉……118
口蓋粘膜と口蓋弓……120
歯列の検査……121
4.機能分析……123
顎位の検査:下顎安静位と習慣性咬合位……123
下顎安静位の決定法……123
安静位の記録……126
安静位と習慣性咬合位の関係の評価……128
矢状面での評価……128
垂直面での安静位と習慣性咬合位の関係の評価……132
水平方向での安静位と習慣性咬合位の関係の評価……133
顎関節診査……135
臨床検査……135
下顎の開閉口運動……138
顎関節のX線写真診査……140
口腔顔面の機能異常の診査……141
嚥下……141
舌突出……145
口唇の機能異常……155
頬の機能異常……158
オトガイ筋の機能亢進……159
5.X線検査……167
歯の状態……167
6.写真分析……173
側貌観……173
側貌の突出度……176
正面観……177
7.側面頭部X線規格写真分析……179
側面頭部X線規格写真分析に使用する基準点……180
頭部X線規格写真の基準線……182
頭部X線規格写真計測値の解釈……184
顎骨基底の距離的計測……186
骨格性側貌の分析……188
顔面骨格の垂直的分析……190
成長方向―下顎の回転……192
上顎基底の回転……194
上下顎の回転の組み合わせ……196
切歯の位置の分析……198
頭部X線規格写真による不正咬合の分類……200
頭部X線規格写真―予後の判定……204
8.診査用模型の分析……207
歯列弓形態の距離的分析……208
歯列弓幅径……208
前方部歯列弓長径……211
歯列弓の対称性……213
左右対称性の分析……214
前後的対称性の分析……216
口蓋高径……218
側方歯群の分析……219
比率表からの予測……220
X線写真と予測表を組み合わせた方法……221
永久歯列弓における空隙分析……222
ディスクレパンシーの計算……224
垂直平面における分析……227
Bolton分析……228
Reesによる歯槽基底の分析……231
咬合の診査……232
治療計画……235
III 治療計画―症例
治療計画症例1……238
治療計画症例2……244
治療計画症例3……250
付録
記録用紙……258
謝辞・写真提供……264
文献……265
索引……269