やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

Preface〜高齢者補綴の臨床を楽しむために〜
 私は臨床が大好きです.
 これまで30年にわたり,その臨床経験から,学生や若手歯科医師の教育を行ってきました.そこでは教科書にない「コツ」を多く教えてきました.歯科診療には教科書にない多くのコツがあります.これを知らないと無駄な労力を使うことになり,えてして術者の“悩み”として知らず知らずに山積していきます.特に高齢の患者さんに対しては,効率的な補綴診療が必要です.
 これらのコツのいくつかは国際誌にも掲載されてきました.しかし同じことを毎回教育するのは大変なので,ここ数年は,講座員と歯科技工士の教育用に,週に1〜3つぐらいの「臨床のコツ」を書きためて,メールで配信してきました.ただし,まとまった形式ではないので,後で見返すのが大変です.また,「超高齢社会の義歯治療の効率化を図る!」というタイトルで,数多くの講演を行ってきましたが,時間の関係で,毎回その一部分しかお話しすることができません.そこでこれまで,義歯診療の基本や撤去のコツに関する著書も出版してきました.
 今回は医歯薬出版のご理解により,高齢者に対する補綴診療全般に渡るコツに関して,まとまった書籍を上梓することができました.忙しい診療の合間に,コンパクトデジタルカメラで撮影してきたので,写真のクオリティには多少難がありますが,これまでに書き綴ってきたものの中から,皆さんの臨床での悩みの解決につながる,教科書には載せられないアドバンスなコツに絞ってまとめることができました.
 これらを知っていると,診療の効率と質が上がり,診療が楽しくなります.各項目は表頁・裏頁の2頁で完結するので,多忙の中でも1項目ずつ読んで理解,そして実践できると思います.本書を活用して多くのコツ・センスを身につけ,ぜひ日々の臨床を楽しんでください.
 2016年9月
 昭和大学歯学部高齢者歯科学講座
 佐藤裕二
 Preface〜高齢者補綴の臨床を楽しむために〜
 本書の特徴と構成
 使用カメラ紹介
総論 高齢者における補綴治療の現状と展望
 1.高齢者補綴治療の現状と将来予測
 2.義歯治療へのニーズの変化と対応
Part 1 医療面接・診察・検査
  Introduction
 Q01 患者の本音を聞き出す質問の仕方
 Q02 概形印象の改善点
 Q03 研究用模型の欠陥
 Q04 模型支台歯の破折への対応
 Q05 治療方法の説明
  COLUMN
   石膏の表面荒れ
   X線写真説明時のコツ
   患者さんに誤解されやすい歯科用語の説明
Part 2 基本操作
  Introduction
 Q06 ラウンドバー・ポイントの基本的使用法
 Q07 常温重合レジンの準備
 Q08 ピンセットのグリップ
 Q09 口唇の排除
 Q10 下顎前歯部の形成
 Q11 咽頭部の見え方
  COLUMN
   ラウンドバーの大きさ表示
   消耗品の節約
   ピンセットの基本的使用法
   タービン使用時の口唇の排除
   浸潤麻酔時の問題点
   口腔内・咽頭部にものを落としたとき
   加熱した器具の挿入
Part 3 修復処置
  Introduction
 Q12 インレーの問題点
 Q13 クラウンとポストの撤去
 Q14 メタルコアの撤去(1)
 Q15 メタルコアの撤去(2)
 Q16 TECの脱離
 Q17 外れにくいTEC
 Q18 仮着したクラウンの撤去
 Q19 細いポストの印象
 Q20 メタルコアの問題点
 Q21 コアが低くなった理由
 Q22 分割コアの問題点
 Q23 コア合着時のセメント塗布
 Q24 レジンコアの手順
 Q25 レジンコア用ポスト形成
 Q26 レジンコアのポストの長さ
 Q27 根面板浮き上がりの原因
 Q28 支台歯のラインアングルを整理する理由
 Q29 保持孔の形態
 Q30 CAD/CAM冠の形成
 Q31 個歯トレーの問題点
 Q32 シリコーン系の咬合採得材
 Q33 クラウン・ブリッジの咬合採得
 Q34 ブリッジの咬合採得
 Q35 メタルフレームを用いたブリッジの再咬合採得
 Q36 下顎前歯部前装冠の形態
 Q37 臼歯部欠損による前歯の動揺
 Q38 クラウンの調整・装着手順
 Q39 クラウンのコンタクトと咬合検査
 Q40 セラミックスの咬合調整
 Q41 メタルボンドブリッジポンティックの破折
 Q42 メタルフレーム試適
  COLUMN
   加熱した器具;雑用エキスカ
   輪にしたフロスの活用
   輪にしたフロスの持ち方
   撤去用のドライバー
   予約外の再来
   TECが外れやすい原因と対策
   コア合着の失敗
   ピーソーリーマー(ピーソー)と根管バー
   コアの比較
   第108回 歯科医師国家試験(2015年2月実施)に出題された「保持孔」
   CAD/CAM冠形成用ダイヤモンドポイント
   個歯トレーの保持孔の形態
   咬合採得材料が不要な場合
   適合しない場合のチェック手順
Part 4 義歯治療
  Introduction
 Q43 適合検査結果の解釈
 Q44 適合検査と咬合検査
 Q45 全部床義歯の適合検査結果の評価
 Q46 上顎総義歯の適合検査
 Q47 部分床義歯の適合検査
 Q48 個人トレーの溢出孔・保持孔
 Q49 印象後の処理
 Q50 義歯用模型に付与する材料の使い分け
 Q51 模型へのポストダムの付与
 Q52 全部床義歯の咬合採得時の切れ込み
 Q53 部分床義歯の咬合採得(1)
 Q54 部分床義歯の咬合採得(2)
 Q55 メタルフレームの設計図
 Q56 支台歯付近の舌側義歯床縁
 Q57 下顎片側遊離端義歯の設計
 Q58 遊離端欠損における近心レストの利点
 Q59 一歯欠損中間義歯の問題点
 Q60 上顎両側遊離端義歯の外形
 Q61 義歯の違和感の減少策
 Q62 メタルフレーム義歯への増歯(1)
 Q63 メタルフレーム義歯への増歯(2)
 Q64 メタルフレーム義歯の修正
 Q65 キャストクラスプの改善
 Q66 義歯の維持力が小さい場合の対応
 Q67 人工歯咬合面の再形成
 Q68 上顎義歯後縁の修正
 Q69 オーバーデンチャーのリライン
 Q70 すれ違い咬合への対応
  COLUMN
   マグネット義歯のチェック
   個人トレー内面の処理
   ポストダムとは
   全国の29大学の歯学部での教育
   バーとストラップ
   咬合面再形成のコツ
   ワイヤクラスプの調整法

 Postscript