やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

発刊に寄せて
 日本歯周病学会は,2012年12月現在,9,000名を超える会員数を有する歯科界でも有数の規模の学会となり,学術を基盤として,専門医・認定医制度や認定歯科衛生士制度を有し,歯周病から国民を守り,口腔・全身の健康支援を使命とする学術団体であります.
 本学会の教育・啓発活動,歯周治療の充実,専門医制度の進展のために,近年5種類の指針・ガイドラインを発刊してまいりました.2007年に「歯周病の診断と治療の指針」,2008年には「歯周病の検査・診断・治療計画の指針」,「歯周病患者におけるインプラント治療の指針」,「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン」,2010年には「歯周病患者における抗菌療法の指針」を作成し,会員への配布とホームページからのオープンアクセスを可能としております.
 2011年4月より理事長の拝命をいただいた時より,歯周病の再生治療のガイドラインを作成することを公約として明言いたしました.そして,歯周治療・再生治療の領域において学識,臨床にも精通しております東京医科歯科大学教授の和泉雄一先生を委員長として,12名のワーキンググループメンバーのもと作成事業に取りかかってもらいました.各先生方の活気あふれるエネルギーのもと,膨大な作業をみごとに貫徹し,このたび「歯周病患者における再生治療のガイドライン」発刊の運びとなりました.
 本ガイドラインの目的は,「適正な歯周組織再生治療」と,結果としての「国民への安心な医療提供」であります.対象者は,歯周治療を行っている歯科医師ならびに歯科医療従事者であり,対象疾患は「慢性歯周炎」と「侵襲性歯周炎」です.また,現時点の日本において厚生労働省により認可された,一般的に臨床応用可能な治療法に限定しました.本書は,再生治療発展の経緯,臨床的に最重要な8項目の臨床質問,そして再生材料の特性・全身疾患への対応・今後の発展から構成されています.
 本ガイドラインが学会の会員の皆様はもとより,歯科学生,臨床研修歯科医,多くの歯科・医科分野の先生方,さらには行政関係者の方々へ,お役に立ちますことを心より期待しております.最後になりましたが,本書の出版にご尽力いただきました和泉雄一先生をはじめとするワーキンググループメンバー,本学会の理事の先生方,ならびに医歯薬出版の編集部諸氏に厚く御礼申しあげます.
 平成25年3月
 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
 理事長 吉江弘正
 発刊に寄せて
 はじめに
 本ガイドラインで使用したエビデンスレベルと推奨度
 本ガイドライン作成メンバー
1 再生治療とは・歯科における再生治療発展の経緯
2 歯周組織再生治療の評価基準
3 臨床質問
 CQ1 エナメルマトリックスデリバティブ(EMD)を応用した術式はフラップ手術と比較して,歯周組織は改善しますか?
 CQ2 GTR法はフラップ手術と比較して,歯周組織はより改善しますか?
 CQ3 EMDはGTR法と比較して,歯周組織は改善しますか?
 CQ4 フラップ手術に自家骨移植術を併用した場合は,しない場合と比較して,歯周組織は改善しますか?
 CQ5 GTR法に骨移植術を併用した場合は,しない場合と比較して,歯周組織はより改善しますか?
 CQ6 EMDに骨移植術を併用した場合は,しない場合と比較して,歯周組織はより改善しますか?
 CQ7 喫煙者に対して再生治療を行った場合,良好な結果が期待できますか?
 CQ8 根分岐部病変に歯周組織再生治療を行った場合,歯周組織は改善しますか?
4 各種材料の特性と臨床応用,全身疾患への対応,再生治療の現状と今後の発展