序文
1983年に出版された前シリーズの歯科衛生士教本 歯科診療補助「歯科放射線」は,全国歯科衛生士教育協議会の方針で,とくに理科のあまり得意でない学生でも理解が容易であるようにということで,読みやすい,わかりやすいということを二大目標として執筆された.そのため,部分的にはかなり記述がくどくなった個所も生じて,かえって読みにくくなる場合もでてきてしまった.
今回の新衛生士教本シリーズでは,学生の負担を軽くするためということから,歯科放射線に限らず全体的にその内容をスリムにすることが要望されている.その結果,日常の歯科診療の介助にあたって,歯科衛生士の業務そのものとはいえないまでも,知っておいたほうが便利だというような項目については,ある部分は省かざるをえなくなった.そのようなところは,前シリーズあるいはしかるべき参考書で学習されるように希望する.
私たちのように歯科放射線学を専門に勉強している者にとっては,放射線学はなかなか面白い学問なのであるが,歯科医でも,放射線学は理屈っぽくて苦手だという人が多い.若い女性が主体となる歯科衛生士教育ではなおさらのことであろう.前シリーズ同様,楽しく読めるように努めたつもりである.
とはいうものの,その内容のために,あるいは著者らの力量のために,全部が全部その目標が達成できたわけではない.今後も著者らで話し合って説明法や表現の仕方に工夫を加えていきたい.お気づきの点があったら,どしどしお知らせ願いたい.何とか工夫を加えて,次の版までに改めていきたいと思っている.
教育機関の方々に希望することであるが,教授要綱によると,歯科放射線に相当する事項はあちこちに散らばっているが,教育効果上の考慮をして,歯科放射線学という一科目にまとめて講義するべきであろう.
終わりにあたり,早々と依頼を受けながら,一部の執筆者の都合から大幅に発行が遅れてしまった.遅筆の著者にはそれなりの理由があるわけであるが,あえてその事情を無視して出版することにした.今後の版で,改訂をしていくつもりである.
出版を待たれている皆さんには大変なご迷惑をおかけした.紙上を借りて深くおわびしたい.
なお,本書の1章,3章,9章,10章は和田,2章,5章,8章,11章は山本,4章,7章は森,6章は古跡が執筆を担当した.
1995年3月 著者一同
推薦の序
厚生省健康政策局歯科衛生課長 佐治靖介
近年,わが国では,人口の急速な高齢化に伴い,疾病構造が変化してきていることなどから保健医療サービスに対する住民のニーズが急速に高まってきており,良質な保健医療の供給を行いうる体制を整備するため,資質の高い保健医療関係者の養成を行うことが重要な課題となっている.
歯科衛生士の資質向上を図るため,歯科衛生士学校養成所の修業年限の延長,学科課程の改正等が昭和58年に行われ,5年後の昭和63年よりすべての養成所で新カリキュラムによる教育が行われるようになった.本改正により,保健指導や歯科予防処置に関する教科内容の充実が図られた.そして,平成元年6月には,歯科衛生士法の一部が改正され,歯科衛生士の業務に歯科保健指導が加わるとともに,免許権者が都道府県知事から厚生大臣に改められた.
また,わが国における歯科保健対策の動きについて目を向けると,近年,80歳になっても20本以上の歯を保つことを目的とした8020(ハチマル・ニイマル)運動が全国各地で広がってきている.平成4年度老人保健事業第3次計画において歯の重点健康教育・重点健康相談に併せて歯科衛生士による在宅寝たきり老人に対する訪問口腔衛生指導が実施されており,歯科保健事業の充実強化が図られるようになってきている.また,本年は世界口腔保健デーや世界口腔保健年として歯科界挙げて口腔保健の推進に邁進している.そして,歯の健康づくりに対する国民の関心は年々高まってきており,歯科保健指導や歯科予防処置等の業務を通じて,国民の歯の健康づくりに従事する歯科衛生士の果たす役割は今後ますます重要となると考えられる.
資質の高い歯科衛生士が養成されるためには,最新の歯科保健医療に関する知識および技術が,効果的に学生に対して教授されることが必要である.このようなときに新しい歯科衛生士教本が発刊され,内容の見直しが行われることは誠に意義深く,歯科衛生士教育の充実強化とともに,わが国における歯科保健対策を推進していくうえで要となると確信している.
本書が多くの歯科衛生士教育機関において十分に活用され,よりよい歯科衛生士が養成されることを期待し,推薦の序としたい.
1994年6月
1983年に出版された前シリーズの歯科衛生士教本 歯科診療補助「歯科放射線」は,全国歯科衛生士教育協議会の方針で,とくに理科のあまり得意でない学生でも理解が容易であるようにということで,読みやすい,わかりやすいということを二大目標として執筆された.そのため,部分的にはかなり記述がくどくなった個所も生じて,かえって読みにくくなる場合もでてきてしまった.
今回の新衛生士教本シリーズでは,学生の負担を軽くするためということから,歯科放射線に限らず全体的にその内容をスリムにすることが要望されている.その結果,日常の歯科診療の介助にあたって,歯科衛生士の業務そのものとはいえないまでも,知っておいたほうが便利だというような項目については,ある部分は省かざるをえなくなった.そのようなところは,前シリーズあるいはしかるべき参考書で学習されるように希望する.
私たちのように歯科放射線学を専門に勉強している者にとっては,放射線学はなかなか面白い学問なのであるが,歯科医でも,放射線学は理屈っぽくて苦手だという人が多い.若い女性が主体となる歯科衛生士教育ではなおさらのことであろう.前シリーズ同様,楽しく読めるように努めたつもりである.
とはいうものの,その内容のために,あるいは著者らの力量のために,全部が全部その目標が達成できたわけではない.今後も著者らで話し合って説明法や表現の仕方に工夫を加えていきたい.お気づきの点があったら,どしどしお知らせ願いたい.何とか工夫を加えて,次の版までに改めていきたいと思っている.
教育機関の方々に希望することであるが,教授要綱によると,歯科放射線に相当する事項はあちこちに散らばっているが,教育効果上の考慮をして,歯科放射線学という一科目にまとめて講義するべきであろう.
終わりにあたり,早々と依頼を受けながら,一部の執筆者の都合から大幅に発行が遅れてしまった.遅筆の著者にはそれなりの理由があるわけであるが,あえてその事情を無視して出版することにした.今後の版で,改訂をしていくつもりである.
出版を待たれている皆さんには大変なご迷惑をおかけした.紙上を借りて深くおわびしたい.
なお,本書の1章,3章,9章,10章は和田,2章,5章,8章,11章は山本,4章,7章は森,6章は古跡が執筆を担当した.
1995年3月 著者一同
推薦の序
厚生省健康政策局歯科衛生課長 佐治靖介
近年,わが国では,人口の急速な高齢化に伴い,疾病構造が変化してきていることなどから保健医療サービスに対する住民のニーズが急速に高まってきており,良質な保健医療の供給を行いうる体制を整備するため,資質の高い保健医療関係者の養成を行うことが重要な課題となっている.
歯科衛生士の資質向上を図るため,歯科衛生士学校養成所の修業年限の延長,学科課程の改正等が昭和58年に行われ,5年後の昭和63年よりすべての養成所で新カリキュラムによる教育が行われるようになった.本改正により,保健指導や歯科予防処置に関する教科内容の充実が図られた.そして,平成元年6月には,歯科衛生士法の一部が改正され,歯科衛生士の業務に歯科保健指導が加わるとともに,免許権者が都道府県知事から厚生大臣に改められた.
また,わが国における歯科保健対策の動きについて目を向けると,近年,80歳になっても20本以上の歯を保つことを目的とした8020(ハチマル・ニイマル)運動が全国各地で広がってきている.平成4年度老人保健事業第3次計画において歯の重点健康教育・重点健康相談に併せて歯科衛生士による在宅寝たきり老人に対する訪問口腔衛生指導が実施されており,歯科保健事業の充実強化が図られるようになってきている.また,本年は世界口腔保健デーや世界口腔保健年として歯科界挙げて口腔保健の推進に邁進している.そして,歯の健康づくりに対する国民の関心は年々高まってきており,歯科保健指導や歯科予防処置等の業務を通じて,国民の歯の健康づくりに従事する歯科衛生士の果たす役割は今後ますます重要となると考えられる.
資質の高い歯科衛生士が養成されるためには,最新の歯科保健医療に関する知識および技術が,効果的に学生に対して教授されることが必要である.このようなときに新しい歯科衛生士教本が発刊され,内容の見直しが行われることは誠に意義深く,歯科衛生士教育の充実強化とともに,わが国における歯科保健対策を推進していくうえで要となると確信している.
本書が多くの歯科衛生士教育機関において十分に活用され,よりよい歯科衛生士が養成されることを期待し,推薦の序としたい.
1994年6月
1章 歯科放射線を学ぶ意義/1
2章 放射線の基礎的知識/3
I 電気の知識…… 3
1.電圧と電流…… 3
2.直流と交流…… 3
3.電 力…… 4
4.希望の電圧を取り出す…… 4
5.電気を安全に使う…… 5
II 物質の構造…… 6
1.原 子…… 6
2.原子番号…… 6
III 放射線と放射能…… 6
1.電離と励起…… 6
2.放射能…… 7
3章 放射線とX線/9
I X線の性質……10
II 物質の透過性……12
III X線の利用……14
4章 歯科用X線装置/15
I X線装置の基本的構造……15
1.制御装置…… 18
2.高電圧発生装置……20
3.X線管球と管容器(ヘッド)……20
4.コーン(照射筒)……22
5.撮影台……23
II 各種のX線装置……24
1.パノラマX線撮影装置……24
2.頭部X線規格撮影法……27
3.断層撮影装置……27
4.その他のX線装置……30
III まとめ……32
5章 撮影用器材/33
I 歯科用X線フィルム……33
II カセッテと増感紙……38
III その他……39
1.グリッド(整線板)……39
2.フィルムマーカ……40
6章 口内法撮影の補助/41
I 歯のX線写真とは……41
II 中心垂直投影と斜投影……42
III 二等分法と平行法……45
1.二等分法……45
2.平行法……46
IV 撮影に先だって……47
V 頭部の固定……49
VI フィルムの位置づけ……51
VII 投影の前準備……54
1.上顎切歯部……57
2.上顎犬歯部……61
3.上顎臼歯部……65
4.下顎切歯部……72
5.下顎犬歯部……74
6.下顎臼歯部……78
7.咬翼法……83
8.咬合法……86
9.小児の撮影法……92
7章 口外法撮影の補助/95
I 撮影の準備……95
1.器材の用意……96
2.患者の誘導……100
3.患者の姿勢……101
4.照射方向の設定……102
5.照射条件……102
II 撮影時の補助……102
1.パノラマ撮影法……102
2.頭部顔面の正面撮影法……109
3.Waters法……109
4.頭部の側方向撮影法(側面)……110
5.頭部X線規格撮影法……110
6.頭部軸位撮影法……111
7.側方向斜位撮影法……113
8.顎関節撮影法……115
9.その他の撮影法……117
III まとめ……119
8章 フィルムの現像と管理/121
I 暗室と用具……121
1.白色光と安全光……122
2.安全灯のテスト……122
3.暗室の遮光性……123
4.処理液の準備……123
5.フィルムハンガ……123
6.液温計……124
7.溶液調製容器……124
8.分時計……124
9.タンク……124
10.水洗槽……125
11.恒温処理タンク……125
12.その他……125
II 暗室での作業……126
1.恒温槽による手現像……126
III 自動現像……130
IV 少数フィルムの処理……132
1.現像暗箱……133
V インスタント現像……134
1.二浴法処理……134
2.一浴法処理……136
3.プッシャー使用による処理……136
VI フィルムの整理と保管……141
1.X線写真の正常像……141
2.フィルムマウントによる整理……142
3.ファイルによる整理……143
4.フィルムの保存方法……144
9章 放射線防護/146
I 放射線防護……146
1.放射線被曝……146
II 放射線防護用具……151
III 被曝線量の測定……153
1.個人の被曝線量測定器……154
2.空間分布線量測定器……155
IV 放射線の管理……155
1.職業上の防護……156
2.患者の防護……157
V 要 約……158
10章 放射線治療の知識/159
I 放射線感受性と放射線治療……159
II 口腔癌の種類とその背景……159
III 放射線治療の方法……160
1.外部照射法……160
2.密封小線源治療法……160
IV 放射線治療による副作用……161
V 放射線治療患者の口腔管理……162
1.放射線治療前の処置……162
2.放射線治療中の処置……162
3.放射線治療後の処置……162
11章 その他の関連知識/163
I 核医学……163
1.in vivo検査……163
2.in vitro検査……164
II CT,MRI,超音波,サーモグラフィなど……164
1.CT……164
2.MRI……165
3.超音波診断法……165
4.サーモグラフィ……165
5.X線フィルムを使わない診断装置……166
参考図書……167
さくいん……169
2章 放射線の基礎的知識/3
I 電気の知識…… 3
1.電圧と電流…… 3
2.直流と交流…… 3
3.電 力…… 4
4.希望の電圧を取り出す…… 4
5.電気を安全に使う…… 5
II 物質の構造…… 6
1.原 子…… 6
2.原子番号…… 6
III 放射線と放射能…… 6
1.電離と励起…… 6
2.放射能…… 7
3章 放射線とX線/9
I X線の性質……10
II 物質の透過性……12
III X線の利用……14
4章 歯科用X線装置/15
I X線装置の基本的構造……15
1.制御装置…… 18
2.高電圧発生装置……20
3.X線管球と管容器(ヘッド)……20
4.コーン(照射筒)……22
5.撮影台……23
II 各種のX線装置……24
1.パノラマX線撮影装置……24
2.頭部X線規格撮影法……27
3.断層撮影装置……27
4.その他のX線装置……30
III まとめ……32
5章 撮影用器材/33
I 歯科用X線フィルム……33
II カセッテと増感紙……38
III その他……39
1.グリッド(整線板)……39
2.フィルムマーカ……40
6章 口内法撮影の補助/41
I 歯のX線写真とは……41
II 中心垂直投影と斜投影……42
III 二等分法と平行法……45
1.二等分法……45
2.平行法……46
IV 撮影に先だって……47
V 頭部の固定……49
VI フィルムの位置づけ……51
VII 投影の前準備……54
1.上顎切歯部……57
2.上顎犬歯部……61
3.上顎臼歯部……65
4.下顎切歯部……72
5.下顎犬歯部……74
6.下顎臼歯部……78
7.咬翼法……83
8.咬合法……86
9.小児の撮影法……92
7章 口外法撮影の補助/95
I 撮影の準備……95
1.器材の用意……96
2.患者の誘導……100
3.患者の姿勢……101
4.照射方向の設定……102
5.照射条件……102
II 撮影時の補助……102
1.パノラマ撮影法……102
2.頭部顔面の正面撮影法……109
3.Waters法……109
4.頭部の側方向撮影法(側面)……110
5.頭部X線規格撮影法……110
6.頭部軸位撮影法……111
7.側方向斜位撮影法……113
8.顎関節撮影法……115
9.その他の撮影法……117
III まとめ……119
8章 フィルムの現像と管理/121
I 暗室と用具……121
1.白色光と安全光……122
2.安全灯のテスト……122
3.暗室の遮光性……123
4.処理液の準備……123
5.フィルムハンガ……123
6.液温計……124
7.溶液調製容器……124
8.分時計……124
9.タンク……124
10.水洗槽……125
11.恒温処理タンク……125
12.その他……125
II 暗室での作業……126
1.恒温槽による手現像……126
III 自動現像……130
IV 少数フィルムの処理……132
1.現像暗箱……133
V インスタント現像……134
1.二浴法処理……134
2.一浴法処理……136
3.プッシャー使用による処理……136
VI フィルムの整理と保管……141
1.X線写真の正常像……141
2.フィルムマウントによる整理……142
3.ファイルによる整理……143
4.フィルムの保存方法……144
9章 放射線防護/146
I 放射線防護……146
1.放射線被曝……146
II 放射線防護用具……151
III 被曝線量の測定……153
1.個人の被曝線量測定器……154
2.空間分布線量測定器……155
IV 放射線の管理……155
1.職業上の防護……156
2.患者の防護……157
V 要 約……158
10章 放射線治療の知識/159
I 放射線感受性と放射線治療……159
II 口腔癌の種類とその背景……159
III 放射線治療の方法……160
1.外部照射法……160
2.密封小線源治療法……160
IV 放射線治療による副作用……161
V 放射線治療患者の口腔管理……162
1.放射線治療前の処置……162
2.放射線治療中の処置……162
3.放射線治療後の処置……162
11章 その他の関連知識/163
I 核医学……163
1.in vivo検査……163
2.in vitro検査……164
II CT,MRI,超音波,サーモグラフィなど……164
1.CT……164
2.MRI……165
3.超音波診断法……165
4.サーモグラフィ……165
5.X線フィルムを使わない診断装置……166
参考図書……167
さくいん……169