発刊にあたって
人口の高齢化と生活習慣の欧米化に伴い,虚血性心疾患やアテローム血栓性脳梗塞などの動脈硬化に起因する疾患が増加している.また,これらの疾患のハイリスク群である脂質異常症,糖尿病,慢性腎臓病(chronic kidney disease,CKD)の患者数は,年々着実に増えている.たとえば,脂質異常症は 4,000 万人以上,糖尿病とその疑いのある者は 2,000 万人以上,CKD(ステージ3以上)は約 2,000 万人以上いると推定されている.また,男性においては,肥満者の頻度がこの30年ほどの間に2倍に増加している.内臓脂肪が蓄積する肥満者は,高血圧,脂質異常症,糖代謝異常が合併しやすく,メタボリックシンドロームとよばれる.メタボリックシンドロームは,糖尿病や動脈硬化性疾患を発症しやすいハイリスク群である.
以前は,日本人におけるこれらの危険因子と動脈硬化との関連を示す根拠が乏しいとされていた.しかし,近年では,両者の関係を裏付ける複数の信頼のおける疫学研究がわが国から発表されるに至っている.さらに,動脈硬化の発症メカニズムの解明が進み,診断法や治療法も大きく進歩した.
そこで,本誌編集委員会は『動脈硬化を診る―リスク評価と病態の検査―』を企画し,臨時増刊号として発刊することとなった.本臨時増刊号は,読者が理解しやすいように内容を大きく2つのセクションに分けた.前半では,動脈硬化性疾患の概要をつかみ各検査がなぜ行われるのかが明らかとなるように,動脈硬化の疫学・発症のメカニズム・病理所見・治療について解説していただいた.一方後半では,個別の検査を取り上げた.一般病院の検査室で行われている基本的な検査から,外注検査として行われている検査,そして実験室レベルで行われている検査まで幅広く取り上げた.これらの検査は,領域ごとに6つの分野にまとめてある.なお,「6.画像診断」には,臨床検査で扱わない項目も含まれている.これらは,臨床検査技師が動脈硬化そのものを理解し,他の画像診断の結果を解釈するために有用と考えられる項目である.
本書が,動脈硬化の現状を正確に把握し,その発症メカニズムを理解し,診断や治療に関する最新の知識や情報を整理する一助になれば幸いである.
最後に,ご多忙のところ快く執筆を引き受けて下さった各領域のエキスパートの先生方に深く感謝の意を表する.
2010年12月
順天堂大学医学部教授 臨床検査医学講座
三井田 孝
人口の高齢化と生活習慣の欧米化に伴い,虚血性心疾患やアテローム血栓性脳梗塞などの動脈硬化に起因する疾患が増加している.また,これらの疾患のハイリスク群である脂質異常症,糖尿病,慢性腎臓病(chronic kidney disease,CKD)の患者数は,年々着実に増えている.たとえば,脂質異常症は 4,000 万人以上,糖尿病とその疑いのある者は 2,000 万人以上,CKD(ステージ3以上)は約 2,000 万人以上いると推定されている.また,男性においては,肥満者の頻度がこの30年ほどの間に2倍に増加している.内臓脂肪が蓄積する肥満者は,高血圧,脂質異常症,糖代謝異常が合併しやすく,メタボリックシンドロームとよばれる.メタボリックシンドロームは,糖尿病や動脈硬化性疾患を発症しやすいハイリスク群である.
以前は,日本人におけるこれらの危険因子と動脈硬化との関連を示す根拠が乏しいとされていた.しかし,近年では,両者の関係を裏付ける複数の信頼のおける疫学研究がわが国から発表されるに至っている.さらに,動脈硬化の発症メカニズムの解明が進み,診断法や治療法も大きく進歩した.
そこで,本誌編集委員会は『動脈硬化を診る―リスク評価と病態の検査―』を企画し,臨時増刊号として発刊することとなった.本臨時増刊号は,読者が理解しやすいように内容を大きく2つのセクションに分けた.前半では,動脈硬化性疾患の概要をつかみ各検査がなぜ行われるのかが明らかとなるように,動脈硬化の疫学・発症のメカニズム・病理所見・治療について解説していただいた.一方後半では,個別の検査を取り上げた.一般病院の検査室で行われている基本的な検査から,外注検査として行われている検査,そして実験室レベルで行われている検査まで幅広く取り上げた.これらの検査は,領域ごとに6つの分野にまとめてある.なお,「6.画像診断」には,臨床検査で扱わない項目も含まれている.これらは,臨床検査技師が動脈硬化そのものを理解し,他の画像診断の結果を解釈するために有用と考えられる項目である.
本書が,動脈硬化の現状を正確に把握し,その発症メカニズムを理解し,診断や治療に関する最新の知識や情報を整理する一助になれば幸いである.
最後に,ご多忙のところ快く執筆を引き受けて下さった各領域のエキスパートの先生方に深く感謝の意を表する.
2010年12月
順天堂大学医学部教授 臨床検査医学講座
三井田 孝
発刊にあたって……三井田 孝
総論
1.わが国における動脈硬化性疾患の疫学
1)日本人の血清脂質の変遷 荒井秀典
2)日本人における循環器疾患とその危険因子 長澤晋哉・三浦克之・大久保孝義・上島弘嗣
3)メタボリックシンドロームの疫学 斎藤重幸・三俣兼人
2.動脈硬化の病理像とその発生メカニズム 範 江林・渡辺照男
3.動脈硬化性疾患およびそのハイリスク群の予防・治療
1)虚血性心疾患 宮・忠史・代田裕之
2)脳血管障害 近藤啓太・細見直永・松本昌泰
3)末梢動脈硬化 森谷純治・南野 徹
4)糖尿病 小林高明・小田原雅人
5)慢性腎臓病(CKD) 庄司哲雄
各論
1.脂質・リポ蛋白の検査
a)脂質・リポ蛋白分画の測定法
1)リポ蛋白プロフィールの分析法 小谷和彦・河野幹彦
2)HDLコレステロール・LDLコレステロール 杉内博幸・松嶋和美・安東由喜雄
3)酸化LDL(MDA-LDL) 下山立志・田代 淳
4)small dense LDL 櫻井俊宏・千葉仁志
5)アポ蛋白・Lp(a) 安部 彰
6)レムナントリポ蛋白(RLP-C・RemL-C) 山村 卓
7)脂肪酸分画 矢藤 繁・島野 仁
8)各種ステロール 平山 哲・三井田 孝
b)リポ蛋白の調節因子
1)コレステリルエステル転送蛋白(CETP)・リン脂質転送蛋白(PLTP) 平野賢一・鈴木 朗
2)血管内皮リパーゼ 安田知行・石田達郎
3)リポ蛋白リパーゼ(LPL)・肝性リパーゼ(HL) 村野武義・白井厚治
4)レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT) 塚本和久
5)可溶性Lox-1・可溶性LR11 田代 淳
2.危険因子の検査
1)炎症マーカー 公文義雄
2)lipoprotein-associated phospholipase A2(PAF-AH) 滝野 豊・稲津明広
3)血清paraoxonase 1(PON1) 小谷和彦
3.凝固系検査
1)凝固・線溶検査 後藤信哉
2)血小板機能検査 尾崎由基男
4.肥満・メタボリックシンドローム関連の検査
1)インスリン抵抗性指標 宗田 聡
2)アディポサイトカイン 大沼 裕・大澤春彦
3)内臓脂肪量の推定 増田大作
4)持続血糖モニター(continuous glucose monitoring,CGM) 西村理明
5.生理機能検査
1)脈波(PWV)・AI・CAVI・ABI・TBI 小平真理・冨山博史・山科 章
2)血管内皮機能検査 柚木 佳・中村一文
3)運動負荷検査 小倉理代・日浅芳一
4)24時間血圧測定(ABPM) 石山裕介・苅尾七臣
5)PSG検査 川名ふさ江
6.画像診断
1)心臓MRI 加藤真吾・佐久間 肇
2)冠動脈CT 安野泰史・三田祥寛
3)血管内視鏡・血管内超音波(IVUS) 水野杏一
4)虚血性心疾患のエコー 柴山謙太郎・渡辺弘之
5)頸動脈エコー 玄 富翰・長束一行
6)胸部/腹部大動脈・腎動脈エコー 平井都始子
7)下肢動脈エコー 松尾 汎
8)核医学 橋本 順
総論
1.わが国における動脈硬化性疾患の疫学
1)日本人の血清脂質の変遷 荒井秀典
2)日本人における循環器疾患とその危険因子 長澤晋哉・三浦克之・大久保孝義・上島弘嗣
3)メタボリックシンドロームの疫学 斎藤重幸・三俣兼人
2.動脈硬化の病理像とその発生メカニズム 範 江林・渡辺照男
3.動脈硬化性疾患およびそのハイリスク群の予防・治療
1)虚血性心疾患 宮・忠史・代田裕之
2)脳血管障害 近藤啓太・細見直永・松本昌泰
3)末梢動脈硬化 森谷純治・南野 徹
4)糖尿病 小林高明・小田原雅人
5)慢性腎臓病(CKD) 庄司哲雄
各論
1.脂質・リポ蛋白の検査
a)脂質・リポ蛋白分画の測定法
1)リポ蛋白プロフィールの分析法 小谷和彦・河野幹彦
2)HDLコレステロール・LDLコレステロール 杉内博幸・松嶋和美・安東由喜雄
3)酸化LDL(MDA-LDL) 下山立志・田代 淳
4)small dense LDL 櫻井俊宏・千葉仁志
5)アポ蛋白・Lp(a) 安部 彰
6)レムナントリポ蛋白(RLP-C・RemL-C) 山村 卓
7)脂肪酸分画 矢藤 繁・島野 仁
8)各種ステロール 平山 哲・三井田 孝
b)リポ蛋白の調節因子
1)コレステリルエステル転送蛋白(CETP)・リン脂質転送蛋白(PLTP) 平野賢一・鈴木 朗
2)血管内皮リパーゼ 安田知行・石田達郎
3)リポ蛋白リパーゼ(LPL)・肝性リパーゼ(HL) 村野武義・白井厚治
4)レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT) 塚本和久
5)可溶性Lox-1・可溶性LR11 田代 淳
2.危険因子の検査
1)炎症マーカー 公文義雄
2)lipoprotein-associated phospholipase A2(PAF-AH) 滝野 豊・稲津明広
3)血清paraoxonase 1(PON1) 小谷和彦
3.凝固系検査
1)凝固・線溶検査 後藤信哉
2)血小板機能検査 尾崎由基男
4.肥満・メタボリックシンドローム関連の検査
1)インスリン抵抗性指標 宗田 聡
2)アディポサイトカイン 大沼 裕・大澤春彦
3)内臓脂肪量の推定 増田大作
4)持続血糖モニター(continuous glucose monitoring,CGM) 西村理明
5.生理機能検査
1)脈波(PWV)・AI・CAVI・ABI・TBI 小平真理・冨山博史・山科 章
2)血管内皮機能検査 柚木 佳・中村一文
3)運動負荷検査 小倉理代・日浅芳一
4)24時間血圧測定(ABPM) 石山裕介・苅尾七臣
5)PSG検査 川名ふさ江
6.画像診断
1)心臓MRI 加藤真吾・佐久間 肇
2)冠動脈CT 安野泰史・三田祥寛
3)血管内視鏡・血管内超音波(IVUS) 水野杏一
4)虚血性心疾患のエコー 柴山謙太郎・渡辺弘之
5)頸動脈エコー 玄 富翰・長束一行
6)胸部/腹部大動脈・腎動脈エコー 平井都始子
7)下肢動脈エコー 松尾 汎
8)核医学 橋本 順