やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

発刊にあたって

 医療事故・過誤の原因としてはヒューマンエラーとプロフェッショナルエラーがあげられますが,人が関与する以上,エラーを完全に取り除くことは困難です.しかし,尊い患者さんの生命を守る立場にある医療従事者にとっては,事故や過誤を未然に防ぐ責任と義務があり,知恵を出し合って防止策を見出さなければなりません.一方,検査を行う上で忘れてならないのは正確で客観的に信頼できる情報を利用者に速やかに提供することと,それを継続して行える体制を確立することです.技師の一人一人が細心の注意を払って検査を行うことは当然で,「してはいけないこと」と「なぜそうしてはいけないか」についても十分理解を深めた上で検査に臨むことが基本です.ところが経験の浅い技師だけではなく,ベテランの技師でも「してはいけないこと」を無意識で行ったり,「なぜそれをしてはいけないか」の理由を理解しないまま業務に取り組んでいる場合も少なくありません.
 本誌では,これらの疑問に対し速やかに対応できるように日常遭遇する具体的な事例を選び出し,禁忌事項,注意事項としてまとめ,経験豊かな専門分野の約140名の方々にその理由をわかりやすく解説していただきました.取り上げた範囲は実に幅広く多彩で,採血,検体の取り扱い,感染対策や患者接遇など総論的な事柄から,それぞれの専門分野における禁忌事項,臨地実習での心得,さらには研究発表時の注意事項にまで及び,個々の例題についても詳細に説明しています.また,一般の技師には馴染が薄い業務,安全,廃棄物の管理分野から検査情報の有効活用に不可欠なシステム,コンピュータの領域にまで網羅しており,実践的な参考書としてご利用いただけると思います.
 項目の選択にあたって純粋に禁忌項目と思しき内容と注意すべき項目が混在した形となりましたが,2000例を越す候補の中から精選し679項目に絞り込みました.私どもが知る限り臨床検査の幅広い分野においてこの種の疑問を集約し,個々に解説した書籍やマニュアルは他にありません.本誌が皆さまの座右の書として有意義に活用されるとともに,検査学校の学生さん,医師,看護婦さんなど多くの医療スタッフの皆さまにもマニュアルとしてお役に立つことができれば幸いです.
 最後に,項目のリストアップなど本企画の立案にご協力いただきました方々,ならびに本誌にご執筆いただきました方々に,編集委員を代表して心より感謝申し上げます.
 東京都済生会中央病院 臨床検査科 高加国夫
<I.臨床検査総論>
 採血
 検体取り扱い
 感染対策
 患者接遇
 研究発表
 臨地実習
<II.一般検査>
 尿検査
 糞便検査
 髄液検査
 関節液検査
 精液検査
 ART
 その他
 寄生虫検査
<III.血液検査>
 総論
 血球計数
 血液像
 骨髄像
 血液検査
 血小板機能検査
 血液凝固検査
<IV.臨床化学検査>
 総論
 糖質
 脂質
 蛋白質
 非蛋白性窒素
 酵素
 無機質
 ホルモン
 薬物
 機器分析
<V.微生物検査>
 総論
 細菌検査
 遺伝子検査
 ウイルス,マイコプラズマ検査
<VI.免疫血清・輸血検査>
 免疫血清検査
 輸血療法
 輸血検査
 腫瘍マーカー
<VII.遺伝子検査>
<VIII.病理検査>
 病理検査
 病理検査(電顕)
 剖検介助
 細胞診
<IX.生理検査>
 接遇
 心電図検査
 脈波検査
 脳波検査
 筋電図検査
 神経伝導速度
 呼吸機能検査
 血液ガス
 超音波検査
 心エコー
 血管エコー
 腹部エコー
 体表エコー
 泌尿器エコー
 産婦人科エコー
 眼エコー
 MRI検査
 サーモグラフィ検査
 眼底写真撮影
 聴覚検査
<X.検査管理総論>
 業務管理
 安全管理
 廃棄物処理
 精度管理
 統計処理
 システム化
 コンピュータ

 企画協力者一覧