やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 望月秀樹
 大阪大学大学院医学系研究科神経内科学
 重症小児疾患は成人期まで生活できるようになり,成人病態の治療に対して成人科の受診が必要になってきた.その際,小児科疾患の特異性のため成人科での診療にスムーズに移行しないことが多く,小児-成人移行期医療という社会問題になってきた.しかしこれは,遺伝子治療も含めた医療の進歩により重症小児疾患の救命が可能になり,予後も改善する患者が増えてきたことを意味する.これからは小児科のみならず,内科医も小児疾患について学ばなければならなくなってきた.
 しかし今までは残念ながら,成人期に移行するようになった小児神経疾患については教科書もなかったので,勉強する機会が少なかった.そのような背景から,共同編者の聖マリアンナ大学・宮本雄策先生にお願いして本特集の作成に取り組んだ.本特集は,小児神経疾患で成人期にも移行する疾患を中心に疾患概念や最新の治療法はもちろんであるが,合併症や成人期の診療について長期予後や成人期の問題点,生活および社会的支援についてもできるだけわかりやすくご執筆いただいた.疾患が多岐にわたる項目ではわかりやすい表を作成してもらっている.もちろん,希少疾患も多い移行期に関連するすべての疾患を網羅するのは難しいので,代表的な疾患を選んだが,これは宮本雄策先生からご指導いただいた.この場をお借りして御礼を申し上げる.また本特集は,宮本雄策先生が委員長をされている,日本小児神経学会社会活動委員会移行期医療マニュアル作成WGの作業と並行して作成されたものである.また,今回の企画を最初から応援,ご支援いただいた『医学のあゆみ』編集部の皆さまにも心から御礼を申し上げる.
 本特集は,成人科の内科医師,神経内科医師のみならず小児科医,小児神経内科医のほか,関連する看護師,リハビリ,在宅などのコーデイネーター,保健所などの方々など多くの方に,時には参考書として,時には辞書的な活用をしていただければ幸いである.
 はじめに
 (望月秀樹)
ダウン症候群
 (玉井 浩)
ダウン症候群以外の染色体異常
 (山本俊至)
神経筋疾患─ジストロフィン異常症
 (齊藤利雄)
神経筋疾患―ミオパチー(代謝性),重症筋無力症など
 (石垣景子)
神経筋疾患─脊髄性筋萎縮症
 (小牧宏文)
脳性麻痺
 (阿部裕一)
結節性硬化症
 (岡西 徹)
てんかん─自然終息性てんかん(熱性けいれんを含む)
 (宮本雄策)
てんかん─薬剤抵抗性(難治性)てんかん
 (伊藤 進)
てんかん─進行性ミオクローヌスてんかん
 (須貝研司)
ミトコンドリア病
 (三牧正和)
アミノ酸代謝異常症
 (松本志郎・他)
ライソゾーム病─ゴーシェ病,ファブリー病など
 (酒井規夫)
ムコ多糖症
 (小須賀基通)
ペルオキシソーム病─副腎白質ジストロフィーを中心に
 (下澤伸行)
金属代謝異常症
 (清水教一)
遺伝性変性疾患─SENDA/BPAN(WDR45関連神経変性症)
 (熊田聡子)
 結びの言葉
 (宮本雄策)

 次号の特集予告

 サイドメモ
  マイクロアレイ染色体検査
  新生児スクリーニング(NBS)
  脳内鉄沈着を伴う神経変性症(NBIA)