やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第3版の序
 本書の初版を2011年9月に出版し,4年がたちました.慢性腎臓病(CKD)患者さんにかかわる管理栄養士・栄養士,看護師・保健師など医療関係者の多くの皆様にご愛読いただいたことに大きな喜びを感じます.
 この4年間に「CKD診療ガイド2012」「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」などの改定があり,新しいガイドラインや基準に準拠し,内容を変更してまいりました.
 今回は「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」,また15年ぶりに大幅に改訂された「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」,「糖尿病治療ガイド2014-2015」「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の最新情報に準拠し,内容を更新して「第3版」に改訂いたしました.
 わが国のCKD患者数は,高齢化ならびに糖尿病や高血圧,肥満,脂質異常症などの生活習慣病の増加により,今後,ますます増えることが予想されております.CKDが進行すれば末期腎不全に至るだけではなく,心血管疾患発症リスクが高まり,生命予後にも影響を及ぼします.CKDの治療には,生活習慣の適正化,食事療法,薬物療法などが必要となりますが,なかでも食事療法は欠くことができない重要で有効な治療法です.
 本書は,CKDの適切な食事療法の指導の指標として用いられるよう工夫を凝らした構成で成り立っております.総論では,CKDの病態や栄養評価など,食事指導を行ううえで理解しておくべき基礎知識をわかりやすく解説しております.各論では,「スタッフから患者さんへ」と「患者さんご説明用」の2部構成とし,さまざまな食事指導の場面で,新人の栄養士・管理栄養士,看護師の方でも,すぐに食事指導に対応できるように,「患者さんご説明用」に沿った食事指導のポイントや注意点,補足内容を「スタッフから患者さんへ」に具体的に解説しております.
 本書をCKD食事指導に関係する多くの皆様に活用していただき,CKD患者さんの病状の改善や進行阻止,QOLの向上に役立つことを心から願っております.
 本書の改訂にあたってご尽力いただきました医歯薬出版編集部の皆様に,厚く御礼を申し上げます.
 平成27年12月25日
 飯田喜俊
 兼平奈奈
 執筆者一同


初版の序
 慢性腎臓病(CKD)は,「尿たんぱくが陽性」または「腎機能が低下」が3カ月以上続く状態をいいますが,わが国ではCKDの患者さんが約1,330万人もいるといわれています.そして,CKDが次第に進行して慢性腎不全や透析に至る患者さんが年々増加しており,患者さんのQOL(生活の質)が低下し,医療経済の面からも大きな問題となっております.しかもCKD自体は心血管疾患の危険因子でもあり,経過中に心血管疾患に罹患して生命予後に影響を及ぼすので,近年大きく注目されてきております.このことはわが国だけでなく,世界的にも同様です.
 そのため,CKDは現在では全世界的に取り上げられ,その早期発見と早期治療の重要性をキャンペーンする国際的な取り組みとして,国際腎臓学会などが2006年より毎年3月の第2木曜日を『世界腎臓デー』として活動を開始しております.わが国でも,日本腎臓学会がさまざまな啓発活動を行っており,日本栄養士会においても,厚生労働省の「腎疾患重症化予防のための戦略研究」(FROM-J)の大規模介入研究に協力しています.
 CKDの治療法としては,適正な生活習慣,食事療法,薬物療法などがありますが,食事療法は欠くことができない重要な治療法であり,このことは多くのエビデンスによって示されてきました.食事療法が適正に行われるためには,まず患者さんへの適切な食事指導が重要であり,そのためにはわかりやすく具体的に記述された指導書が必要です.本書はこのニーズに応えるものとして企画しました.
 たとえば,CKDの実際的な食事指導の内容,指導法の工夫とポイント,注意点などを具体的に詳しく,わかりやすく記述しました.さらに,患者さんがスタッフの指導のもとに自分で学び,食事療法を正しく行えるように「患者さんご説明用」の項目を設けました.
 このような工夫によって,管理栄養士・栄養士の方が,必要な基礎知識から具体的な食事指導方法まで会得でき,CKD患者さんの病態の改善に役立つものと思っております.また,看護師・保健師など,関係する医療スタッフの方が食事指導の方法を学ぶ際にも役立つと思います.
 さらに,患者さんにとっては食事の正しい自己管理が大切ですが,本書はこれを行う際の最良の教師になるものと思っております.
 本書は,CKDの食事療法について,指導する側からも,患者さん側からも適正に行われるような方式にしましたので,CKDの進行阻止や病態の改善に大いに役立つものと考えております.また,そのようになることを願ってやみません.
 おわりに,本書の企画から出版に至るまで終始真摯に協力してくださった医歯薬出版編集部の方々に,心より御礼を申し上げます.
 平成23年9月10日
 飯田喜俊
 兼平奈奈
 執筆者一同
総論 慢性腎臓病(CKD)の基礎知識
FROM DOCTOR 1 慢性腎臓病(CKD)とは
 CKDとは何か,なぜ重要か(飯田喜俊)
 CKDの重症度分類(飯田喜俊)
 CKDステージG1〜G5 の病態と症状(飯田喜俊)
 小児CKDの病態と症状(谷澤隆邦)
 高齢者CKDの病態と症状(奥野仙二)
 おもな成人CKDの原疾患とその特徴(飯田喜俊)
 CKDの進行と阻止および合併症(奥野仙二)
 CKDの検査(飯田喜俊)
 CKDの治療(飯田喜俊・谷澤隆邦・奥野仙二)
FROM DOCTOR 2 栄養評価
 食事摂取量調査(奥野仙二)
 身体計測(奥野仙二)
 筋力(握力,脚力,背筋力) (奥野仙二)
 血液生化学的検査(奥野仙二)
 栄養スコア化法(奥野仙二)
 複数の指標を用いた総合的な判断(奥野仙二)
各論 慢性腎臓病(CKD)の食事指導
保存期
 (1)慢性腎臓病(CKD)ステージG1〜G5の食事療法基準(兼平奈奈・平松史江)
 (2)たんぱく質コントロールの意義(奥野仙二)
 (3)たんぱく質コントロールの方法(兼平奈奈・平松史江)
 (4)たんぱく質のアミノ酸スコア(兼平奈奈・平松史江)
 (5)食塩コントロールの意義(飯田喜俊)
 (6)食塩コントロールの方法(兼平奈奈・平松史江)
 (7)調味料と食品に含まれる食塩量(兼平奈奈・平松史江)
 (8)エネルギーコントロールの意義(奥野仙二)
 (9)エネルギーコントロールの方法(兼平奈奈・平松史江)
 (10)エネルギーコントロールのための食品選択と調理方法(兼平奈奈・平松史江)
 (11)カリウムコントロールの意義(飯田喜俊)
 (12)カリウムコントロールの方法(兼平奈奈・平松史江)
 (13)カリウムを減らす調理法(兼平奈奈・平松史江)
 (14)リンコントロールの意義(奥野仙二)
 (15)リンコントロールの方法(兼平奈奈・平松史江)
 (16)治療用特殊食品の活用(高橋恵理香)
 (17)食事療法に必要なスプーン,はかり,参考書(高橋恵理香)
 (18)栄養価計算の方法(高橋恵理香)
 (19)外食時の工夫と注意点(高橋恵理香)
 (20)慢性腎臓病ステージG3a〜G5 の献立作成のポイント(兼平奈奈・高橋恵理香)
糖尿病性腎症
 (21)糖尿病性腎症の管理の重要性(奥野仙二)
 (22)糖尿病性腎症の食事療法基準(高橋恵理香・兼平奈奈)
 (23)糖尿病性腎症の食事療法のポイント(高橋恵理香・兼平奈奈)
血液透析期
 (24)血液透析の管理の重要性(飯田喜俊)
 (25)血液透析の食事療法基準(高橋恵理香・兼平奈奈)
 (26)血液透析の食事療法のポイント(高橋恵理香・兼平奈奈)
 (27)水分コントロールの方法(高橋恵理香・兼平奈奈)
腹膜透析期
 (28)腹膜透析の管理の重要性(奥野仙二)
 (29)腹膜透析の食事療法基準(高橋恵理香・兼平奈奈)
 (30)腹膜透析の食事療法のポイント(高橋恵理香・兼平奈奈)
高齢者
 (31)高齢者慢性腎臓病の管理の重要性(奥野仙二)
 (32)高齢者慢性腎臓病の食事療法のポイント(東山幸恵・兼平奈奈)
小児
 (33)小児慢性腎臓病の管理の重要性(谷澤隆邦)
 (34)小児慢性腎臓病の食事療法のポイント(東山幸恵・兼平奈奈)
移植者
 (35)腎移植の管理の重要性(飯田喜俊)
 (36)腎移植後の食事療法のポイント(東山幸恵・兼平奈奈)
付表
 (37)食品中のたんぱく質とエネルギー量(平松史江)
 (38)調味料と食品中の食塩量(平松史江)
 (39)食品中のカリウム量(平松史江)
 (40)食品中のリン量(平松史江)
 (41)外食の栄養成分値と利用時のワンポイント(東山幸恵・高橋恵理香)
 (42)治療用特殊食品の栄養成分値と使い方のワンポイント(1)(東山幸恵・高橋恵理香)
 (43)治療用特殊食品の栄養成分値と使い方のワンポイント(2)(東山幸恵・高橋恵理香)

 引用・参考文献 索引