やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

『保存修復学専門用語集』の発刊に寄せて
 日本歯科保存学会は1955年に設立され,歯科における基幹学会として発展し,2003年に特定非営利活動法人として認証を受け,2005年には設立50周年記念事業を挙行するに至っております.しかしながら,これまで学会主導での専門用語集を上梓したことがありませんでした.このたび,本会の学術用語委員会のメンバーが中心となり,初めて学会として編纂した『保存修復学専門用語集』を刊行する運びとなりました.
 一般に,専門学術用語の明確な定義と位置づけは,当該学術領域の着実な進歩・発展の基盤であり,それなくしてはいたずらに不要な混乱を招くばかりです.しかし,日本語特有の曖昧さを克服し,個々の専門学術用語に該当する英語をあてがいつつ,それらを明確に定義して簡潔に説明するのは,想像以上に困難な作業といえます.
 今般,本会学術用語委員会委員長の池見宅司教授(日本大学松戸歯学部)の卓越したリーダーシップのもと,同委員会委員である加藤喜郎教授(日本歯科大学新潟生命歯学部),千田 彰教授(愛知学院大学歯学部),田上順次教授(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科),出口眞二教授(神奈川歯科大学),久光 久教授(昭和大学歯学部),松島 潔教授(日本大学松戸歯学部),吉江弘正教授(新潟大学大学院医歯学総合研究科),ならびに吉山昌宏教授(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)が一丸となって協力し,さらに学会員各位の全面的な支援を頂戴して本書が出版される運びとなりました.この事業に立ち会った本会理事長として,深甚なる謝意を表し,厚く御礼を申し上げます.
 いうまでもなく学術用語は時代とともに変遷するものですが,とりわけ今日のように技術革新が急速に展開する時代においては,すぐにでも本書の改訂作業を視野に入れる必要があります.本書がそうした作業の原点となり,以降,継続的に用語集を見直すうえでの礎石となることは疑う余地がありません.また,今後の歯科医学教授要綱,歯科医学教育モデル・コア・カリキュラム,歯科医師国家試験出題基準などの改訂作業においても,大きな手助けになると確信しております.さらに,保存修復学を学ぶ学生,歯科保存治療に携わる歯科医師,歯科保存治療専門医,保存修復学の教育・研究者はじめ,関係の皆様の座右の書となることを期待しております.
 結びに,本用語集の刊行にあたり,惜しみないご支援ご協力を賜りました,医歯薬出版株式会社諸氏に厚く御礼申し上げます.
 2009年2月
 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
 理事長 須田英明

序文
 2007年度,特定非営利活動法人日本歯科保存学会の須田英明理事長からのご提案ならびに理事会の決定に従い,本用語集を編纂することになりました.背景として,各学会の用語集発刊が盛んに行われるようになったことがありました.歯周病専門用語集が発刊され,歯内療法重要語彙集は編集中でありました.そのなかで,保存修復の用語集に関する動きがなかったことに端を発したものであろうと推測されましたが,日本歯科保存学会は周知のように修復,歯周,歯内を総合した伝統的な学会であるために,修復学に限定したものを出版することに対して,個人的には多少のためらいがありました.しかし,本学会全会員の皆様の深遠かつ寛大なご理解のもとに,この編集作業が遂行されました.このことに対しまして,まずもってお礼申し上げます.そして,学術用語委員ならびに解説をご担当いただきました先生方,医歯薬出版編集部の皆様のご協力に,心より感謝申し上げます.
 以下に,本用語集の編集に関する工程等について記させていただきます.
 用語選定に関しましては,『学術用語集・歯学編』(文部省編)と各種保存修復学関連の教科書に収載されていた用語を参考にして約1,000語を選定する作業から開始しました.本用語集は歯科学生のため,また,教育・研究・臨床に役立つものをという観点からまとめさせていただきました.保存修復学の特性を考慮して,歯科理工学,組織学,病理学,細菌学等の基礎学問から必要と考えられる用語についても,用語委員の先生方と検討して抽出いたしました.これらの用語選定には,原案からアンケート結果をまとめるまでに約1年を要しました.
 用語解説に関しましては,選定された約830語を56項目に分類し,本邦の歯科大学・歯学部29大学の保存修復学担当の先生方に,平均29語の分担をお願いして解説文執筆のご協力をいただきました.分担依頼から校正を含めて約半年を要し,その後,さらに用語委員の先生方に校正していただき,発刊に至りました.
 本用語集は初版本でもあり,一から立ち上げ,2年間で発刊するという急ぎの作業となりました.その間,いかに専門用語の統一が重要であるかということと,難しいものであるかということを思い知らされました.専門用語は生き物で,年々変化しており,新しい用語や従来とは異なった概念に変わったもの等が出てきております.先生方によって意見の異なる用語や英文も存在し,重要な用語が欠落していることも容易に想像できますが,なにとぞ,ご容赦のほどをお願い申し上げます.そして,本用語集が次版の用語集のたたき台となり,充実した保存修復学専門用語集となりますことを,お願い申し上げる次第であります.
 平成21年2月
 特定非営利活動法人
 日本歯科保存学会
 学術用語委員会
 平成19年度〜平成20年度
 委員長 池見宅司
 委員 加藤喜郎 千田 彰 田上順次 出口眞二 久光 久 松島 潔 吉江弘正 吉山昌宏(五十音順)