やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

第2版 序
 早いもので1993年に初版が発行されて以来,既に10年余りが過ぎた.諸般の事情により,第2版の発行がやや遅れたが,ここに無事発刊できたことは,関係各位のご支援,ご努力のお陰と,この場をお借りして厚く感謝の意を表したい.
 近年,皮膚科学の進歩はめざましく,たとえば尋常性乾癬の治療にはエトレチネートやシクロスポリンの内服,ビタミンD3外用剤が加わり,アトピー性皮膚炎の治療にはタクロリムス軟膏の使用が認められるようになっている.
 今回は編者も一部交代し,新しくよい本を作るという意気込みをもって3名で十分な検討をした結果,各分野でご活躍中の先生に新たにご執筆をお願いすることができた.さらにご執筆者には,歯科医師・歯学生の方々に焦点を合わせるために,皮膚科学の最新情報をできる限りわかりやすい内容でご執筆いただいた.当然,歯科特有の疾患については,歯科医の立場からご執筆いただいている.
 また全体のページ数を余り増やさずに内容を充実できるよう,疾患別にページ数の見直しを行い,たとえば局所麻酔のショック,薬疹,エイズなどについては,歯科医師にとっても避けては通れない問題と考えて,ページ数を割くようにした.
 皮膚疾患は身近な病気であるが,多彩で用語がわかりにくい面もあり,とっつきにくいと思われる方もいると思う.しかし,まずは本書で皮膚科疾患について少しでも慣れていただければ幸甚である.
 2004年2月
 山崎 雙次
 山本 浩嗣
 山根 源之



 近年,医学領域の診断および治療法の進歩はめざましい.もちろん歯科医学においても例外ではない.このような環境のなかで口腔疾患と全身症状,あるいは全身疾患と口腔病変の関連についての関心が高まってきている.歯科臨床教育でも,歯科医師国家試験制度,卒後臨床研修医制度の改革,高度先進歯科医療の充実,あるいはプライマリ・ケアの重要性など多くの課題が提供されている.
 先年“歯科医のための耳鼻咽喉科学“など歯科の隣接医学領域の書籍が数点出版されてから,皮膚科学についても必要かつ最小限の知識(minimum essential)を記載した教科書の必要性を感じていた.同時に最近の“性行為感染症(STD,sexual transmitted disease)”の新しい概念・疾患の見直しは,口腔病変との
 関連で必須のものとなってきている.このため本書では,とくにこの項目を各論2として独立させて掲載した.またここ数年間の講義ノートを再点検して,歯科・口腔疾患と皮膚病変とのかかわりあいの重要性を再認識した.さらに性行為感染症,とくにエイズなどの世界的蔓延の事実など,最新の正確な知識・情報を得ることは,歯学生ばかりではなく歯科医師の方々にとっても重要だと思う.
 以上の主旨から歯学生,さらには歯科医師の日常臨床にも参考となるように“歯科医のための皮膚科学”の出版が実現の運びとなった.
 本書の執筆では,歯学部で皮膚科学・外科学の講義を担当しておられる諸先生のご協力が得られた.深く感謝の意を表したい.
 本書の全般的な内容についての助言は,獨協医科大学皮膚科学,山撕ヤ次教授に,また病理組織所見,歯科医学との関連などについては,日本大学松戸歯学部病理学,山本浩嗣教授にご尽力をいただいた.
 なお,学生諸君のために本書では,難読文字や一部欧文にふりがなをふったり,国家試験対策のための項目や,幅広い知識が得られるように,トピックス,サイドメモ,ポイントのコラムを設けた.
 歯科臨床の実際面との関係などでは,さらに追加を要する分野があるかと思われるが,その点については今後少しずつ改訂し,内容を充実したものにしてゆきたいと考えている.
 最後に本書の刊行にあたり種々ご協力いただいた医歯薬出版の方々に厚く御礼申し上げる.
 1993年6月 編者を代表して
 鈴木 邦夫
第2版 歯科医のための皮膚科学 目次


■I 総論
1章 皮膚の構造と機能
 1.皮膚の構造
 2.皮膚の機能と構築
2章 皮膚科診断学ならびに治療学
 1.皮膚科診断学
 2.皮膚科検査法
 3.皮膚科治療学

■II 各論1
1章 湿疹・皮膚炎群
 1.接触皮膚炎
 2.アトピー性皮膚炎
 3.その他の湿疹・皮膚炎群
2章 蕁麻疹
 1.蕁麻疹
 2.クインケ浮腫
 3.痒疹
 4.皮膚掻痒症
3章 紅斑症
 1.多形紅斑
 2.ベーチェット病
4章 紫斑病
 1.アナフィラクトイド紫斑病
 2.血管炎
 3.血小板減少性紫斑
5章 血行障害・物理的化学的障害
 1.化学物質による皮膚障害
 2.熱傷
 3.壊疽
 4.褥瘡
6章 薬疹・中毒疹
 1.固定薬疹
 2.播種状紅斑丘疹型薬疹
 3.Stevens-Johnson症候群型薬疹(SJS型薬疹)
 4.ライエル型薬疹
 5.薬物性歯肉増殖症
 6.ニコチン性白色角化症
 7.重金属による障害
 8.MCLS
 9.薬剤による障害
 10.局所麻酔薬アレルギー
7章 水疱症・膿疱症
 1.尋常性天疱瘡
 2.その他の水疱症
 3.剥離性歯肉口内炎
 4.掌蹠膿疱症
8章 角化症・炎症性角化
 1.魚鱗癬
 2.乾癬
 3.扁平苔癬
9章 膠原病
 1.シェーグレン症候群
 2.全身性エリテマトーデス
 3.全身性強皮症
 4.皮膚筋炎
10章 代謝異常症
 1.亜鉛欠乏症
 2.アジソン病
11章 色素異常症
 1.尋常性白斑
 2.老人性色素斑
12章 母 斑
 1.表皮母斑
 2.脂腺母斑
 3.色素細胞母斑
 4.太田母斑
 5.青色母斑
 6.蒙古斑
 7.扁平母斑
13章 母斑症
 1.レックリングハウゼン病
 2.プリングル病
 3.色素失調症
 4.ポイツ・ジェガース症候群
 5.スタージ・ウェーバー症候群
14章 皮膚粘膜腫瘍
 1.前癌病変
 2.前癌状態
 3.上皮性悪性腫瘍
 4.非上皮性悪性腫瘍
 5.上皮性良性腫瘍
 6.非上皮性良性腫瘍
 7.唾液腺腫瘍
 8.白血病
 9.膿疱
15章 毛包脂腺系疾患
 1.尋常性ざ瘡
16章 毛髪性疾患
 1.円形脱毛症
 2.トリコチロマニア
17章 細菌性皮膚疾患
 1.化膿性皮膚疾患
 2.抗酸菌症
 3.非結核性抗酸菌症
18章 ウイルス性疾患
 1.単純性疱疹
 2.カポジ水痘様発疹症
 3.帯状疱疹
 4.水痘
 5.手足口病
 6.尋常性疣贅
 7.青年性扁平疣贅
 8.伝染性軟属腫
 9.風疹
 10.麻疹
19章 皮膚真菌症
 1.白癬
 2.カンジダ症
 3.放線菌症
 4.アスペルギルス症
20章 動物性皮膚疾患
 1.疥癬
 2.ツツガムシ(恙虫)病
 3.シラミ症
21章 歯科用金属による粘膜病変
 1.歯科用金属による口腔粘膜の着色
 2.歯科用金属によるアレルギー反応
 3.亜砒酸による口内炎
 4.ガルバニー電流による口腔粘膜病変
22章 肉芽腫
 1.サルコイドーシス
 2.肉芽腫性口唇炎
 3.環状肉芽腫
23章 その他の病変
 1.フォアダイス状態
 2.正中菱形舌炎
 3.地図状舌
 4.溝状舌
 5.舌 苔
 6.黒毛舌
 7.剥脱性口唇炎
 8.光線口唇炎
 9.歯瘻(外歯瘻,内歯瘻)
 10.接触性口内炎

■III 各論2
1章 性行為感染症
 1.淋疾
 2.梅毒
 3.ウイルス肝炎
 4.非淋菌性尿道炎
 5.その他
2章 後天性免疫不全症候群(エイズ)

参考文献
索引
著者略歴