やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

原著第8版著者序

 第7版の序文に述べたように,この教科書は主として歯科学生を対象として書かれてはいるが,本書の大部分が歯科技工士,歯科診療助手および開業している歯科医師にも役に立つことを希望している.本書の後半部分を改善するために,Angus Walls教授にこの版の共著者として同意して頂いたことを大変嬉しく思うしだいである.彼の寄稿により,材料の臨床的な指針と操作について示されている.また,追加された材料が材料科学と密接に合致することが望ましい.
 前と同じように,本書は,初めに実験室で使われる材料を復習して材料科学のある簡単な原理を理解し,最終的に歯科医師がチェアーサイドでよく用いる製品を理解することにより,自ずと進歩するようにレイアウトされている.
 本書では,シリケートセメントは今では歴史的なものであるので,それを独立した章から外すことにした.しかしながら,この材料の影響を考慮して組成と特性を20章の中で述べている.私たちがこのような伝統のある材料を経験し,学んだことを忘れてはならない.
 ほとんどの章は,前版と比べて改変もしくは変更されている.その一部分はAngus Walls教授の寄稿によるものである.さらに,本書は随所にISO規格を参考にした.これが,歯科材料の研究者および研究室で役に立つことが望まれる.接着剤とセラミックスに関する章は,これらの分野の近年にわたる進歩を反映させて大幅に改変した.グラスアイオノマーセメントは章に分けて紹介することで,その重要性が認識されるであろう.さらに,レジン改良型グラスアイオノマーのような新しい種類の製品は,その発展性を考慮して独自の章とした.
 各章の末尾に最新の参考文献リストを載せ,できるだけ総説文献を入れた.多くの同僚の意見により,リストは短くした.
 Angus Walls教授と私は,本書が読者にとって有用で読みやすいことを期待するしだいである.
 1998年 John F.McCabe

第5版(原著第8版)監訳者序

 このたび,原著『Applied Dental Materials』の第8版が,J.F.McCabe教授とAngus Walls教授の共著で上梓された.McCabe教授が序文の中で述べられているように,本書は新しく追加された材料の科学的知識と材料の臨床的指針,その取り扱いが有機的に整合することをねらって,Walls教授に共著者としての協力をお願いして本書の後半部分が改稿されている.
 近年,歯科材料は質的変化を伴って急速な進歩を遂げている.それを受けてISOでは在来からの歯科材料に関する見直しに加えて,新しく開発された材料に関するISO規格の作成も精力的に行われている.McCabe教授もイギリス代表のISO規格委員の一人としてISO/TC106(国際標準化機構/歯科専門委員会)会議で活躍されているが,このようなこともあってか,本書では新しいISO規格の情報が随所で参照されている.これは旧版には見られなかった第8版の大きな特徴であり,歯科材料を研究する人々にとっても有用な参考書となるであろう.
 この第8版では特に進歩の著しい接着剤とセラミックスの章についてはかなりの改変がなされており,また,進歩・発展性の著しいグラスアイオノマーセメントは新しく章を起こし(24章),さらに,レジン改良型グラスアイオノマーに関しても,今後の発展性を秘めた材料との認識から独立した章となっている(25章).
 いま歯科材料学の基礎的概念が歯科医学,歯科医療に強く要請されており,それを扱う歯科医師,歯科診療助手および歯科技工士は新しい材料を正しく評価し,的確に選択する能力を身に付けなければならない.本訳書が,旧訳書と同様に歯科材料を扱う人々に強い関心が持たれ,歯科材料学の入門書として,あるいは参考書として活用されることを切に希望するしだいである.
 本書の訳出には前回の訳者である大野弘機教授,小園凱夫教授,平野進助教授に加えて,新たに荒木吉馬教授に訳者として参加して頂いた.なお,各章の訳者の氏名は,目次に記載した.
 最後に,本訳書の出版の機会を与えられた医歯薬出版株式会社に厚く感謝の意を表します.
 1999年(平成11年)5月 平澤 忠
著者序(8th ed.)v
監訳者序(第5版)vii
訳者序(初版)ix
訳者序(第2版)xi
訳者序(第3版)xiii
監訳者序(第4版)xv
和文索引……337
欧文索引……348

1章 歯科材料の科学 大野弘機……1
  1-1 まえがき……1
  1-2 歯科材料の選択……2
  1-3 材料の評価……4
2章 材料の特性 大野弘機……5
  2-1 まえがき……5
  2-2 機械的性質……7
  2-3 レオロジー的性質……21
  2-4 熱的性質……24
  2-5 接 着……27
  2-6 その他の物理的性質……30
  2-7 化学的性質……31
  2-8 生物学的性質……35
  2-9 参考文献……36
3章 模型用石膏 大野弘機……37
  3-1 まえがき……37
  3-2 模型用材料の所要性質……37
  3-3 組 成……38
  3-4 操作法と硬化特性……39
  3-5 硬化体の性質……44
  3-6 応 用……45
  3-7 長所・短所……45
  3-8 参考文献……46
4章 ワックス 平野 進……47
  4-1 まえがき……47
  4-2 ワックスパターン材料の所要性質……47
  4-3 ワックスの組成……48
  4-4 歯科用ワックスの性質……49
  4-5 応 用……51
  4-6 参考文献……53
5章 埋没材と耐火模型材 平野 進……54
  5-1 まえがき……54
  5-2 合金鋳造用埋没材の所要性質……55
  5-3 市販材料……55
  5-4 埋没材の性質……59
  5-5 応 用……61
  5-6 参考文献……62
6章 金属と合金 平野 進……63
  6-1 まえがき……63
  6-2 金属の構造と性質……63
  6-3 合金の構造と性質……67
  6-4 冷却曲線……68
  6-5 状態図……69
  6-6 参考文献……73
7章 純金と金合金 平野 進……74
  7-1 まえがき……74
  7-2 純金充填物と凝着性金……74
  7-3 従来型鋳造用金合金……75
  7-4 硬化熱処理の理論的考察……78
  7-5 熱処理の実際的考察……80
  7-6 低カラット金合金……81
  7-7 銀-パラジウム合金……82
  7-8 貴金属合金用ろう材……82
  7-9 陶材焼付用貴金属合金……83
8章 鋳造用非貴金属合金 平野 進……84
  8-1 まえがき……84
  8-2 組 成……84
  8-3 鋳造用非貴金属合金の取り扱い法……85
  8-4 性 質……86
  8-5 鋳造用金合金との比較……87
  8-6 生体適合性……90
  8-7 インプラント用金属……90
  8-8 参考文献……91
9章 鋳造法 平野 進……92
  9-1 まえがき……92
  9-2 鋳 型……92
  9-3 鋳造機……93
  9-4 鋳造体の欠陥……94
  9-5 参考文献……96
10章 鋼と加工用合金 平野 進……97
  10-1 まえがき……97
  10-2 鋼……97
  10-3 ステンレス鋼……99
  10-4 ステンレス鋼の義歯床……99
  10-5 線 材……100
  10-6 参考文献……103
11章 セラミックスと金属焼付ポーセレン 大野弘機……104
  11-1 まえがき……104
  11-2 従来型歯科用ポーセレンの組成……104
  11-3 コンデンスと焼成……106
  11-4 ポーセレンの性質……107
  11-5 アルミナ板の挿入とアルミナスポーセレン……109
  11-6 焼結したアルミナのコアセラミックス……110
  11-7 射出成形セラミックス……111
  11-8 鋳造用ガラスセラミックス……112
  11-9 CAD-CAMシステムを用いて作製される修復物……113
  11-10 ポーセレンベニヤ……114
  11-11 金属焼付ポーセレン……115
  11-12 キャピラリーテクニック……118
  11-13 焼付用白金箔……119
  11-14 参考文献……119
12章 合成ポリマー 平野 進……120
  12-1 まえがき……120
  12-2 重 合……120
    ・付加重合(addition polymerization)……120
    ・縮合重合(condensation polymerization)……125
  12-3 重合中に起こる物理的変化……126
  12-4 ポリマーの加工法……131
  12-5 参考文献……132
13章 義歯床用ポリマー 荒木吉馬……133
  13-1 まえがき……133
  13-2 義歯床用ポリマーの所要性質……133
  13-3 アクリル義歯床用材料……135
    ・タイプ1とタイプ2の組成……136
    ・加熱重合レジンの混和と重合……138
    ・常温重合レジンの混和と重合……141
    ・硬化体の構造……143
    ・性 質……144
  13-4 改良型アクリルレジン材料……148
  13-5 その他のポリマー……149
  13-6 参考文献……150
14章 義歯裏装材 平野 進……151
  14-1 まえがき……151
  14-2 硬質裏装材……151
  14-3 粘膜調整材……153
  14-4 暫間軟質裏装材……156
  14-5 永久軟質裏装材……156
  14-6 患者が直接使用できる裏装材……161
  14-7 参考文献……161
15章 人工歯 平野 進……162
  15-1 まえがき……162
  15-2 所要性質……162
  15-3 市販されている材料……162
  15-4 性 質……163
  15-5 参考文献……165
16章 印象材の分類と所要性質 小園凱夫……166
  16-1 まえがき……166
  16-2 印象材の分類……166
  16-3 所要性質……168
  16-4 臨床的考察……174
  16-5 参考文献……178
17章 非弾性印象材 小園凱夫……179
  17-1 まえがき……179
  17-2 印象用石膏……179
  17-3 インプレッションコンパウンド……181
  17-4 印象用ワックス……184
  17-5 酸化亜鉛ユージノール印象用ペースト……184
18章 弾性印象材ハイドロコロイド印象材 小園凱夫……188
  18-1 まえがき……188
  18-2 可逆性ハイドロコロイド印象材(寒天印象材)……189
  18-3 不可逆性ハイドロコロイド印象材(アルジネート印象材)……194
  18-4 寒天-アルジネート連合印象法……198
  18-5 改良型アルジネート印象材……198
  18-6 参考文献……198
19章 弾性印象材合成エラストマー印象材 小園凱夫……199
  19-1 まえがき……199
  19-2 ポリサルファイドゴム印象材……200
  19-3 シリコーンゴム印象材(縮合型)……203
  19-4 シリコーンゴム印象材(付加型)……206
  19-5 ポリエーテルゴム印象材……210
  19-6 エラストマー印象材の性質の比較……213
  19-7 参考文献……216
20章 直接充填材の所要性質および歴史的背景 大野弘機……217
  20-1 まえがき……217
  20-2 レオロジー的性質と硬化特性……217
  20-3 化学的性質……218
  20-4 熱的性質……218
  20-5 機械的性質……218
  20-6 接 着……219
  20-7 生物学的性質……219
  20-8 歴 史……219
21章 歯科用アマルガム 小園凱夫……221
  21-1 まえがき……221
  21-2 組 成……221
  21-3 硬化反応……223
  21-4 性 質……224
  21-5 歯科用アマルガムの臨床的操作上の注意……231
  21-6 操作上の変動因子……233
  21-7 参考文献……237
22章 レジン充填材 荒木吉馬……238
  22-1 まえがき……238
  22-2 アクリルレジン……238
  22-3 コンポジット材料……240
  22-4 コンポジットレジンの分類と組成……241
  22-5 コンポジットレジンの性質……246
  22-6 コンポジットレジンの臨床的操作の注意事項……257
    ・窩洞形態とエナメル質への接着……257
    ・象牙質に対するコンポジットレジンの接着……259
    ・材料の充填……261
    ・硬化度を高める方法……261
    ・重合収縮による悪影響を軽減する方法……262
    ・マトリックス法と隣接面接触点の設定……263
    ・仕上げ研磨……264
  22-7 コンポジットレジンの応用……265
  22-8 参考文献……267
23章 接着性修復材料 大野弘機……268
  23-1 まえがき……268
  23-2 エナメル質へ接着するための酸エッチング……268
  23-3 酸エッチング法の応用……270
  23-4 象牙質に対する接着―その歴史的背景……273
  23-5 化学的結合の試み……274
    ・象牙質の無機成分への接着……275
  23-6 象牙質の酸処理とスメアー層……278
  23-7 プライマーとボンディング剤の塗布……280
  23-8 現在における象牙質接着の考え―樹脂含浸層(hybrid layer)……280
  23-9 合金,アマルガムおよびセラミックスへの接着……283
  23-10 接着強さと辺縁漏洩の測定……284
  23-11 参考文献……285
24章 グラスアイオノマー修復材(ポリアルケノエート) 荒木吉馬……286
  24-1 まえがき……286
  24-2 組 成……286
  24-3 硬化反応……287
  24-4 性 質……289
  24-5 サーメット……293
  24-6 用途と臨床操作……294
  24-7 参考文献……299
25章 レジン改良型グラスアイオノマーと関連材料 荒木吉馬……300
  25-1 まえがき……300
  25-2 組成と分類……301
  25-3 硬化特性……303
  25-4 寸法変化と寸法安定性……304
  25-5 機械的性質……304
  25-6 接着性……305
  25-7 フッ化物の放出……305
  25-8 臨床操作の注意事項……307
  25-9 参考文献……307
26章 暫間クラウン・ブリッジ用レジン 小園凱夫……308
  26-1 まえがき……308
  26-2 所要性質……308
  26-3 市販材料……309
  26-4 性 質……309
27章 裏装用・ベース用・合着用セメントの所要性質 小園凱夫……311
  27-1 まえがき……311
  27-2 窩洞裏装材の所要性質……311
  27-3 合着材の所要性質……316
  27-4 歯内療法用セメントの所要性質……317
  27-5 矯正用セメントの所要性質……318
28章 リン酸を基剤とするセメント 荒木吉馬……319
  28-1 まえがき……319
  28-2 リン酸亜鉛セメント……319
  28-3 ケイリン酸塩セメント……324
  28-4 銅セメント……324
  28-5 参考文献……324
29章 金属キレート化合物を基剤とするセメント 小園凱夫……325
  29-1 まえがき……325
  29-2 酸化亜鉛ユージノールセメント……325
  29-3 オルトエトキシ安息香酸(EBA)セメント……327
  29-4 水酸化カルシウムセメント……328
  29-5 参考文献……331
30章 合着用・裏装用ポリカルボキシレート,グラスアイオノマー,レジン改良型グラスアイオノマー 荒木吉馬……332
  30-1 まえがき……332
  30-2 ポリカルボキシレートセメント……332
  30-3 グラスアイオノマーセメント……334
  30-4 レジン改良型グラスアイオノマーとコンポマー……335
  30-5 参考文献……335