発刊に際して
わが国は1961年から国民皆保険制度を堅持していますので,歯科臨床に従事するほぼ全ての歯科医師が医療保険制度と深い関わりがあります.現在の医療保険制度の仕組みでは,新規の歯科医師免許取得者であっても,保険医として登録された時点で直ちに関係法令や通知で定められた保険診療のルールを順守する義務が生じます.保険医には国民の保険診療を担うという重要な責務がありますが,臨床系の各学会が認定する専門医のように経験年数や症例数などを考慮した資格ではありませんので,臨床研修の開始時から適切に保険診療を行うためには,保険医登録の時点までに保険診療のルールに関して一定の知識を習得しておくことが必要となります.
一方,時代の要請に応え得る歯科医師を養成することが行政機関や歯科大学の責務となっていますので,歯学教育内容については最新の知見や社会的な動向を踏まえて定期的に見直しが行われています.歯学教育のガイドラインとして文部科学省から「歯学教育モデル・コア・カリキュラム」が公表されていますが,これには歯科大学卒業時までに身につけておくべき必須事項の到達目標が分かりやすく提示されています.ちなみに現在適用されている歯学教育モデル・コア・カリキュラムには「医療保険制度を説明できる」ことが到達目標の一つとして掲げられています.さらに厚生労働省から公表されている最新の「歯科医師国家試験出題基準」においても「医療保険」や「介護保険」が歯科医師国家試験の出題範囲として明記されています.このように歯学教育や国家試験の観点からも医療保険制度や介護保険制度に関する知識は今や不可欠とされています.
上記のような諸事情に対応し,歯学生や臨床研修歯科医の皆さんに分かりやすく必要な情報を提供するために,今回,医療保険制度の仕組みや保険診療に関する諸規定などを簡潔に取りまとめ本書を発刊することといたしました.本書は「歯科医師のための医療保険制度入門」と題していますが,医療保険制度に加えて介護保険制度についても要点を掲載していますので,歯科医療の第一線で活躍されている歯科医師の方々にとっても社会保険の仕組みに関わる知識の整理や確認に適した内容となっています.本書が歯学生の学習や歯科医療従事者の業務の充実に資することができれば幸いです.
2014年7月 著者一同
わが国は1961年から国民皆保険制度を堅持していますので,歯科臨床に従事するほぼ全ての歯科医師が医療保険制度と深い関わりがあります.現在の医療保険制度の仕組みでは,新規の歯科医師免許取得者であっても,保険医として登録された時点で直ちに関係法令や通知で定められた保険診療のルールを順守する義務が生じます.保険医には国民の保険診療を担うという重要な責務がありますが,臨床系の各学会が認定する専門医のように経験年数や症例数などを考慮した資格ではありませんので,臨床研修の開始時から適切に保険診療を行うためには,保険医登録の時点までに保険診療のルールに関して一定の知識を習得しておくことが必要となります.
一方,時代の要請に応え得る歯科医師を養成することが行政機関や歯科大学の責務となっていますので,歯学教育内容については最新の知見や社会的な動向を踏まえて定期的に見直しが行われています.歯学教育のガイドラインとして文部科学省から「歯学教育モデル・コア・カリキュラム」が公表されていますが,これには歯科大学卒業時までに身につけておくべき必須事項の到達目標が分かりやすく提示されています.ちなみに現在適用されている歯学教育モデル・コア・カリキュラムには「医療保険制度を説明できる」ことが到達目標の一つとして掲げられています.さらに厚生労働省から公表されている最新の「歯科医師国家試験出題基準」においても「医療保険」や「介護保険」が歯科医師国家試験の出題範囲として明記されています.このように歯学教育や国家試験の観点からも医療保険制度や介護保険制度に関する知識は今や不可欠とされています.
上記のような諸事情に対応し,歯学生や臨床研修歯科医の皆さんに分かりやすく必要な情報を提供するために,今回,医療保険制度の仕組みや保険診療に関する諸規定などを簡潔に取りまとめ本書を発刊することといたしました.本書は「歯科医師のための医療保険制度入門」と題していますが,医療保険制度に加えて介護保険制度についても要点を掲載していますので,歯科医療の第一線で活躍されている歯科医師の方々にとっても社会保険の仕組みに関わる知識の整理や確認に適した内容となっています.本書が歯学生の学習や歯科医療従事者の業務の充実に資することができれば幸いです.
2014年7月 著者一同
1 社会保障制度
(小林隆太郎)
1 「社会保障」言葉の由来
2 「社会保障」の定義
3 日本の社会保障制度の特徴と現状
1.日本の社会保険制度の特徴
2 医療保険制度
(日勝美)
1 社会保障制度の概要
2 国民医療費の概要
3 医療保険制度
1.医療保険の種類と特徴
2.健康保険
3.その他の被用者保険
4.国民健康保険
5.後期高齢者医療制度
4 診療報酬制度
1.保険診療と診療報酬
2.歯科診療報酬点数表
3.診療報酬の請求および審査支払
4.保険医療機関および保険医の責務
5.診療報酬改定の仕組み
3 保険診療と医事・薬事関係法令
(日勝美)
1 保険診療と医療法関連の規定
1.病院および診療所
2.医療安全の確保
2 保険診療と医薬品および医療機器に関連する規定
1.医薬品
2.医療機器
3.医薬品および医療機器の承認審査
3 保険診療と歯科医療従事者各法の規定
1.歯科医師法
2.歯科衛生士法
3.歯科技工士法
4 保険診療(療養の給付)
(日高勝美)
1 保険診療の基本的な考え方
2 保険診療の位置づけ(療養の給付)
3 保険医療機関と保険者の関係
4 保険医療機関の指定及び保険医の登録
5 保険診療の実際
5 保険外併用療養費制度(評価療養・選定療養)
(小林隆太郎)
1 保険外併用療養費制度の位置づけ
2 評価療養
1.評価療養の種類
3 選定療養
1.選定療養の種類
4 歯科領域の選定療養の取扱い
1.金属床による総義歯の提供に関する事項
2.う蝕に罹患している患者の指導管理に関する事項
3.前歯部の金属歯冠修復に使用する金合金又は白金加金の支給に関する事項
6 いわゆる「混合診療」問題に対する厚生労働省の基本的考え方
(梅村長生・小林隆太郎)
1 いわゆる「混合診療」問題に対する厚生労働省の基本的考え方
1.いわゆる「混合診療」を無制限に導入した場合
2.混合診療解禁議論の再燃
3.最高裁 混合診療「給付できないと解する」
7 保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)
(日勝美)
1 健康保険法に基づく療担規則の位置づけ
2 療担規則における保険医療機関の療養担当
3 療担規則における保険医の療養方針等(医師及び歯科医師に共通する部分)
4 療担規則における保険医の療養方針等(歯科診療の具体的方針)
(別添資料1)保険医療機関及び保険医療養担当規則
1 目次
2 第1章 保険医療機関の療養担当
3 第2章 保険医の診療方針等
4 改正省令附則〈抄〉
8 診療報酬の算定方法及び材料価格基準
(日勝美)
1 診療報酬の仕組み
2 歯科点数表の基本的な構成と算定の方法
3 基本診療料
4 特掲診療料
1.医科点数表と共通の点数が含まれる“部”
2.医科点数表の例で算定することが認められている“部”
3.歯科特有の点数のみで構成されている“部”
5 施設基準
6 材料価格基準
9 診療報酬明細書と診療録
(日勝美)
1 診療報酬明細書(レセプト)
2 診療報酬明細書と診療録との整合性の確保
3 歯科の診療録及び診療報酬明細書に使用できる略称
(別添資料2)歯科の診療録及び診療報酬明細書に使用できる
略称について
10 保険医療機関における院内掲示及び届出事項
(梅村長生・日勝美)
1 医療法に基づく病院や診療所の院内掲示
2 保険医療機関の院内掲示(主に歯科診療所の場合)
3 届出の実務
4 施設基準等の届出状況
11 保険診療における診療録の取扱い
(梅村長生・日勝美)
1 療担規則に定める歯科診療録の概要
2 保険診療における歯科診療録の記載のあり方
3 歯科診療録と診療報酬明細書との関係
4 保険外診療の診療録記載の取扱い
5 診療録の保存及び開示等に関する取扱い
6 保険診療における歯科診療録取扱いの留意事項
1.保険診療における歯科診療録の取扱いに関する留意事項(例)
12 レセプト審査の仕組み
(梅村長生・小林隆太郎)
1 医療保険制度における診療報酬の請求と審査・支払とは
2 審査委員会とは
3 審査とは何か
13 レセプトオンライン・電子請求とは
(小林隆太郎)
1 レセプト電算処理システムについて
1.レセプト電算処理システムの流れ
2.電子レセプトとは
3.保険医療機関・保険薬局からの電子レセプト請求
4.オンライン請求
2 2015(平成27)年4月より電子レセプト完全義務化
14 レセプト情報・特定健診等 情報データベース(NDB)の活用
(梅村長生)
1 NDBの活用
2 レセプト情報・特定健診等情報の収集経路
3 NDBを利用し医療費適正計画の策定
4 レセプトデータを活用し医療計画に反映
15 介護保険制度の仕組み
(梅村長生)
1 高齢者保健福祉政策の流れ
2 介護保険制度の仕組み
3 介護保険被保険者
4 利用者負担について
5 介護保険で受けられるサービス
1.在宅サービス
2.公的介護施設サービス(要介護1〜5の人が対象)
6 サービス利用の手続き
7 介護保険制度は3年のサイクルで見直し
8 地域包括ケアシステムの構築
16 訪問診療と介護サービスの提供について
(梅村長生)
1 保険医療機関は,居宅サービス事業
2 介護保険と医療保険の関係
3 医療給付と介護給付との給付の調整
4 介護保険用カルテの記載
5 チャートでみる訪問診療請求法
6 歯科訪問診療加算
7 訪問診療を行った場合の医療保険と介護保険で請求する項目のまとめ
17 介護給付請求方法
(梅村長生・小林隆太郎)
1 介護報酬の請求方法について
2 医療保険請求上の【摘要欄記載】について
3 交通費
参考文献
索引
(小林隆太郎)
1 「社会保障」言葉の由来
2 「社会保障」の定義
3 日本の社会保障制度の特徴と現状
1.日本の社会保険制度の特徴
2 医療保険制度
(日勝美)
1 社会保障制度の概要
2 国民医療費の概要
3 医療保険制度
1.医療保険の種類と特徴
2.健康保険
3.その他の被用者保険
4.国民健康保険
5.後期高齢者医療制度
4 診療報酬制度
1.保険診療と診療報酬
2.歯科診療報酬点数表
3.診療報酬の請求および審査支払
4.保険医療機関および保険医の責務
5.診療報酬改定の仕組み
3 保険診療と医事・薬事関係法令
(日勝美)
1 保険診療と医療法関連の規定
1.病院および診療所
2.医療安全の確保
2 保険診療と医薬品および医療機器に関連する規定
1.医薬品
2.医療機器
3.医薬品および医療機器の承認審査
3 保険診療と歯科医療従事者各法の規定
1.歯科医師法
2.歯科衛生士法
3.歯科技工士法
4 保険診療(療養の給付)
(日高勝美)
1 保険診療の基本的な考え方
2 保険診療の位置づけ(療養の給付)
3 保険医療機関と保険者の関係
4 保険医療機関の指定及び保険医の登録
5 保険診療の実際
5 保険外併用療養費制度(評価療養・選定療養)
(小林隆太郎)
1 保険外併用療養費制度の位置づけ
2 評価療養
1.評価療養の種類
3 選定療養
1.選定療養の種類
4 歯科領域の選定療養の取扱い
1.金属床による総義歯の提供に関する事項
2.う蝕に罹患している患者の指導管理に関する事項
3.前歯部の金属歯冠修復に使用する金合金又は白金加金の支給に関する事項
6 いわゆる「混合診療」問題に対する厚生労働省の基本的考え方
(梅村長生・小林隆太郎)
1 いわゆる「混合診療」問題に対する厚生労働省の基本的考え方
1.いわゆる「混合診療」を無制限に導入した場合
2.混合診療解禁議論の再燃
3.最高裁 混合診療「給付できないと解する」
7 保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)
(日勝美)
1 健康保険法に基づく療担規則の位置づけ
2 療担規則における保険医療機関の療養担当
3 療担規則における保険医の療養方針等(医師及び歯科医師に共通する部分)
4 療担規則における保険医の療養方針等(歯科診療の具体的方針)
(別添資料1)保険医療機関及び保険医療養担当規則
1 目次
2 第1章 保険医療機関の療養担当
3 第2章 保険医の診療方針等
4 改正省令附則〈抄〉
8 診療報酬の算定方法及び材料価格基準
(日勝美)
1 診療報酬の仕組み
2 歯科点数表の基本的な構成と算定の方法
3 基本診療料
4 特掲診療料
1.医科点数表と共通の点数が含まれる“部”
2.医科点数表の例で算定することが認められている“部”
3.歯科特有の点数のみで構成されている“部”
5 施設基準
6 材料価格基準
9 診療報酬明細書と診療録
(日勝美)
1 診療報酬明細書(レセプト)
2 診療報酬明細書と診療録との整合性の確保
3 歯科の診療録及び診療報酬明細書に使用できる略称
(別添資料2)歯科の診療録及び診療報酬明細書に使用できる
略称について
10 保険医療機関における院内掲示及び届出事項
(梅村長生・日勝美)
1 医療法に基づく病院や診療所の院内掲示
2 保険医療機関の院内掲示(主に歯科診療所の場合)
3 届出の実務
4 施設基準等の届出状況
11 保険診療における診療録の取扱い
(梅村長生・日勝美)
1 療担規則に定める歯科診療録の概要
2 保険診療における歯科診療録の記載のあり方
3 歯科診療録と診療報酬明細書との関係
4 保険外診療の診療録記載の取扱い
5 診療録の保存及び開示等に関する取扱い
6 保険診療における歯科診療録取扱いの留意事項
1.保険診療における歯科診療録の取扱いに関する留意事項(例)
12 レセプト審査の仕組み
(梅村長生・小林隆太郎)
1 医療保険制度における診療報酬の請求と審査・支払とは
2 審査委員会とは
3 審査とは何か
13 レセプトオンライン・電子請求とは
(小林隆太郎)
1 レセプト電算処理システムについて
1.レセプト電算処理システムの流れ
2.電子レセプトとは
3.保険医療機関・保険薬局からの電子レセプト請求
4.オンライン請求
2 2015(平成27)年4月より電子レセプト完全義務化
14 レセプト情報・特定健診等 情報データベース(NDB)の活用
(梅村長生)
1 NDBの活用
2 レセプト情報・特定健診等情報の収集経路
3 NDBを利用し医療費適正計画の策定
4 レセプトデータを活用し医療計画に反映
15 介護保険制度の仕組み
(梅村長生)
1 高齢者保健福祉政策の流れ
2 介護保険制度の仕組み
3 介護保険被保険者
4 利用者負担について
5 介護保険で受けられるサービス
1.在宅サービス
2.公的介護施設サービス(要介護1〜5の人が対象)
6 サービス利用の手続き
7 介護保険制度は3年のサイクルで見直し
8 地域包括ケアシステムの構築
16 訪問診療と介護サービスの提供について
(梅村長生)
1 保険医療機関は,居宅サービス事業
2 介護保険と医療保険の関係
3 医療給付と介護給付との給付の調整
4 介護保険用カルテの記載
5 チャートでみる訪問診療請求法
6 歯科訪問診療加算
7 訪問診療を行った場合の医療保険と介護保険で請求する項目のまとめ
17 介護給付請求方法
(梅村長生・小林隆太郎)
1 介護報酬の請求方法について
2 医療保険請求上の【摘要欄記載】について
3 交通費
参考文献
索引