やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

はじめに
 本別冊の前版となるデンタルハイジーン別冊『知ってて安心!全身疾患ガイド』が出版されたのは14年前の2001年のことになります.当時,編者の橋本は浜松医科大学に在籍しており,編集者から「歯科衛生士のための全身疾患についての本がないのでつくりたい」という相談を受けました.当初は歯科関係者数人での執筆を予定していましたが,具体的な検討をしていくなかで,学内にそれぞれ専門の先生がおられるのだから,と執筆をお願いすることにしました.その結果できたのが『知ってて安心!全身疾患ガイド』で,12刷を数えるベストセラーになりました.
 昨年,編集部より「増刷にあたって,語句等の修正をお願いしたい」と相談を受けました(出版後10年を過ぎると,修正はすべて編者に……).大学を定年で辞め,病院に勤務していたこともあり,はじめから最後までていねいに目をとおしたところ,この十数年間に診断基準やガイドラインなどが大幅に改訂され,発行当時は認知されていなかった「ビスフォスフォネート系薬剤による顎骨壊死」の問題,超高齢社会に入ったわが国の疾病構造の変化など,さまざまなことが変化していて修正では追いつかないことがわかってきました.そこで,大幅にリニューアルした新版を検討することとなり,今回の企画となりました.
 本別冊では,前版のコンセプトを引き継ぎつつ,(1)現在・将来的な疾病構造の変化を考えた項目立てとする,(2)わかりやすく,できるだけ簡潔な記載を心がける,(3)理解しやすいように,図表・イラストを多く取り入れる,(4)臨床写真をできる限り多く掲載し,疾患の特徴を目で見られるようにする,(5)それぞれの疾患と歯科との関連についても歯科の臨床写真を入れてわかりやすく伝える,などを目標に,歯科衛生士や歯科衛生士学校教員などの現場の意見も聴取し,歯科臨床で遭遇頻度の高いものを中心に,34疾患を選びました.分担執筆者は,今回も浜松医科大学の先生方を中心にお願いし,お陰さまで無事発行の運びとなりました.また,今回は“ガイドブック”ではなく,臨床現場のかたわらに置いて日常的に活用してほしいという願いを込めて“ハンドブック”を書名としました.読者の皆さんには,日常の臨床で,そして多職種協働の場で,お役立ていただければ幸いです.
 最後に企画に賛同し,お忙しいなか原稿やスライドをご用意いただいた先生方に深謝いたします.
 2015年4月
 橋本賢二,増本一真
 はじめに
INTRODUCTION
 なぜ歯科衛生士に全身疾患の知識が必要なのか?
知っておきたい!全身疾患の基礎知識と歯科診療における注意点
代謝・内分泌疾患
 (1)糖尿病
 (2)骨粗鬆症
 (3)甲状腺疾患
消化器疾患
 (1)胃食道逆流症(GERD)
 (2)胃炎・胃癌
 (3)胃潰瘍・十二指腸潰瘍(消化性潰瘍)
 (4)肝炎・肝硬変
循環器疾患
 (1)心疾患・不整脈
 (2)高血圧症・低血圧症
血液疾患
 血液疾患(貧血・白血病・血友病)
呼吸器疾患
 (1)肺炎
 (2)気管支喘息
 (3)慢性閉塞性肺疾患(COPD)
 (4)結核
 (5)睡眠時無呼吸症候群(SAS)
腎・泌尿器疾患
 (1)腎疾患
 (2)下部尿路疾患(蓄尿障害・排尿障害)
免疫疾患・膠原病
 (1)アレルギー
 (2)膠原病(シェーグレン症候群を除く)
 (3)シェーグレン症候群
 (4)アトピー性皮膚炎
感染症
 (1)インフルエンザ
 (2)カンジダ症
 (3)後天性免疫不全症候群(AIDS)
神経疾患
 (1)脳血管障害
 (2)てんかん
 (3)認知症
 (4)神経難病(パーキンソン病・筋萎縮性側索硬化症)
精神疾患
 (1)心身症・神経症
 (2)うつ病
 (3)統合失調症
 (4)発達障害
がん
 (1)がん
 (2)頭頸部がん
産科・婦人科疾患・妊娠
 (1)妊娠による身体の変化
 (2)更年期障害

付録
 (1)知っておきたい検査値一覧
 (2)紹介状・照会状について知ろう!
 (3)医療面接のポイント

 Column
  1 メタボリックシンドロームとは?
  2 女性のがん
  3 男性に増えている前立腺癌
  4 早産・低出生体重児出産と妊娠期の歯科の役割

 参考文献
 さくいん
 編著者・執筆者一覧