-Introduction-
パーシャルデンチャーの設計に関する情報を,歯科医師と歯科技工士の両サイドからとらえることは,患者に対し形態的かつ機能的により高度な人工臓器を提供するうえで,きわめて意義のあることである.しかし,今日のパーシャルデンチャー設計・製作の現場では,お互いに意志の疎通が十分でない状態でそれらが行われているのが実状ではないかと懸念され,このような状態では患者に喜んでいただける義歯の提供は困難と考えている.
このような事態を打開するためには,実際に歯科医師が診査,診断,設計,治療計画などにおいてどのように取り組んでいるか,一方それらに対して歯科技工士がどのように対応できるか,それぞれ蓄えてきた英知をどのように活かしていけるかについて,同じ土壌(誌面)で提供しあうことがまず必要であるという思いから,本書を企画した.
本書においては,いずれも現在の歯科医療のなかで,長年の臨床経験を通して実践的かつ理論的背景を豊富にお持ちの諸先生がたにご執筆をお願いした.短い時間のなかで,ご執筆ならびにご校正を賜り,何かとご無理をおかけしたことを深くお詫びを申しあげるとともに,ご提供いただいた臨床的事実をここに結集し,1冊の本として発刊できたことに深甚なる謝意を申しあげたい.
本書はPart1〜4と巻末の特別付録から構成されており,Part1では,パーシャルデンチャーとして構築するための設計の基本的な概念と製作過程における位置付けについて,またPart2では,パーシャルデンチャーを実際に製作する際に,臨床的な検討課題のなかから歯科技工上考慮しておくべき項目について概説している.さらにPart3では,実際の症例のなかから,遊離端欠損,前歯部欠損,少数歯欠損,多数歯欠損,特殊症例およびメインテナンスを取り上げ,パーシャルデンチャーの臨床を通してのチェアサイドとラボサイドとの実際の共同作業内容についてご提示・ご提言いただいた.そしてPart4では,機能性の高い,よりよいパーシャルデンチャーを患者に提供するための,歯科医師・歯科技工士相互の情報提供を基本として,それぞれの立場を概説している.また巻末の特別付録においては,パーシャルデンチャーの構造を構築するためには,先人たちの数々の業績を紐解く必要があろうと考え,温故知新の精神から歯学史において造詣の深い永田和弘先生に,わかりやすく年表として編集・解説していただいたので,時折過去を振り返りながら大いに活用していただければ幸いである.
各論文・資料に目を通させていただいたところ,歯科医師・歯科技工士がそれぞれの立場の専門的な知識と技術を出しあい,相互理解と最新情報のもとでパーシャルデンチャーが構築されてこそ,初めてパーシャルデンチャーを優れた人工臓器に導くことができるものと確信を新たにすることになった.
本書を通して,歯科医師と歯科技工士との両者間のより信頼関係を高めた状態でパーシャルデンチャーの設計および製作が行われることを期待するとともに,本書がそれらの一つの指針となれば,このうえない喜びである.
2000年5月
編集委員/
野首孝祠(大阪大学大学院歯学研究科 歯科補綴学第二講座)
宮地建夫(東京都千代田区・鉄鋼ビル歯科診療所)
堤 嵩詞(兵庫県芦屋市・PTDLABO)
パーシャルデンチャーの設計に関する情報を,歯科医師と歯科技工士の両サイドからとらえることは,患者に対し形態的かつ機能的により高度な人工臓器を提供するうえで,きわめて意義のあることである.しかし,今日のパーシャルデンチャー設計・製作の現場では,お互いに意志の疎通が十分でない状態でそれらが行われているのが実状ではないかと懸念され,このような状態では患者に喜んでいただける義歯の提供は困難と考えている.
このような事態を打開するためには,実際に歯科医師が診査,診断,設計,治療計画などにおいてどのように取り組んでいるか,一方それらに対して歯科技工士がどのように対応できるか,それぞれ蓄えてきた英知をどのように活かしていけるかについて,同じ土壌(誌面)で提供しあうことがまず必要であるという思いから,本書を企画した.
本書においては,いずれも現在の歯科医療のなかで,長年の臨床経験を通して実践的かつ理論的背景を豊富にお持ちの諸先生がたにご執筆をお願いした.短い時間のなかで,ご執筆ならびにご校正を賜り,何かとご無理をおかけしたことを深くお詫びを申しあげるとともに,ご提供いただいた臨床的事実をここに結集し,1冊の本として発刊できたことに深甚なる謝意を申しあげたい.
本書はPart1〜4と巻末の特別付録から構成されており,Part1では,パーシャルデンチャーとして構築するための設計の基本的な概念と製作過程における位置付けについて,またPart2では,パーシャルデンチャーを実際に製作する際に,臨床的な検討課題のなかから歯科技工上考慮しておくべき項目について概説している.さらにPart3では,実際の症例のなかから,遊離端欠損,前歯部欠損,少数歯欠損,多数歯欠損,特殊症例およびメインテナンスを取り上げ,パーシャルデンチャーの臨床を通してのチェアサイドとラボサイドとの実際の共同作業内容についてご提示・ご提言いただいた.そしてPart4では,機能性の高い,よりよいパーシャルデンチャーを患者に提供するための,歯科医師・歯科技工士相互の情報提供を基本として,それぞれの立場を概説している.また巻末の特別付録においては,パーシャルデンチャーの構造を構築するためには,先人たちの数々の業績を紐解く必要があろうと考え,温故知新の精神から歯学史において造詣の深い永田和弘先生に,わかりやすく年表として編集・解説していただいたので,時折過去を振り返りながら大いに活用していただければ幸いである.
各論文・資料に目を通させていただいたところ,歯科医師・歯科技工士がそれぞれの立場の専門的な知識と技術を出しあい,相互理解と最新情報のもとでパーシャルデンチャーが構築されてこそ,初めてパーシャルデンチャーを優れた人工臓器に導くことができるものと確信を新たにすることになった.
本書を通して,歯科医師と歯科技工士との両者間のより信頼関係を高めた状態でパーシャルデンチャーの設計および製作が行われることを期待するとともに,本書がそれらの一つの指針となれば,このうえない喜びである.
2000年5月
編集委員/
野首孝祠(大阪大学大学院歯学研究科 歯科補綴学第二講座)
宮地建夫(東京都千代田区・鉄鋼ビル歯科診療所)
堤 嵩詞(兵庫県芦屋市・PTDLABO)
Introduction
Part1 パーシャルデンチャー設計の概念
パーシャルデンチャー設計の理念と実際 野首孝祠
パーシャルデンチャーの構成要素 山下秀一郎・五十嵐順正・田村利政
パーシャルデンチャーができるまで──印象と咬合採得を中心として 真鍋 顕
プロビジョナルデンチャーからの移行 瀧口喜郎
Part2 構造製作と歯科技工
初診から診断が決まるまで 川崎貴生・三浦美文
チェアサイドからの指示情報の三次元化にあたっての構造製作 松平 浩
顎堤と人工歯との関係 川畑直嗣
パーシャルデンチャー製作に関する諸精度――印象材-模型材の寸法精度と鋳造精度および重合精度 喜多誠一・野首孝祠
ラボサイドでの歯科技工物のチェック 堤 嵩詞
パーシャルデンチャー設計の際の臨床的工夫
1.レジン床義歯と金属床義歯 長島 正・野首孝祠
2.キャストクラスプとワイヤクラスプの選択 安井 栄・池邉一典・野首孝祠
3.審美性を重視したレジンコーティングクラスプ 吉備政仁・野首孝祠
4.支台歯が天然歯の場合と人工歯の場合 小野高裕・野首孝祠
Part3 症例から考える臨床の流れ
■両側性遊離端欠損への対応例
1.上顎スイングロックアタッチメントを応用して審美性および発音の改善を図った症例 深水皓三
2.臼歯部の咬合支持の喪失に対しパーシャルデンチャーを用いて上顎前歯部の保護を図った症例 吉備政仁・野首孝祠
3.リジッドなデンチャーと咬合面一体型のパーシャルデンチャーを用いた2症例 瀧口喜郎
4.治療用義歯で得られた咬合位を正確に再現したパーシャルデンチャーを用いた症例 葭田秀夫
■片側性遊離端欠損への対応例
1.両側性支持の可撤性パーシャルデンチャーで対応した症例 法花堂 治
2.支台歯への負担より違和感の解決を優先させた症例 森本達也
■片側性遊離端様欠損への対応例
両側性遊離端欠損に対し片側のみパーシャルデンチャーで対応した症例 柳川 隆
■遊離端欠損を含む症例へのコンビネーション補綴による対応例
1.すべてのパーツを可変要素にした設計 斎藤純一
2.支台歯の負担能力を考慮した義歯の設計 須貝昭弘
■前歯部欠損への対応例
1.低位咬合による審美障害を改善した症例 上濱 正
2.25年経過中の上顎前歯義歯および咬合支持が悪化した下顎片側遊離端義歯 宮地建夫
■多数歯欠損への対応例
1.臼歯部咬合崩壊症例への上顎パーシャルデンチャーによる対応 藤関雅嗣
2.違和感と義歯の回転と強度設計で悩んだすれ違い咬合の症例 宮地建夫
■特殊症例への対応例
1.被蓋が大きく早期の咬合崩壊が予測された症例への対応 野嶋昌彦
2.金属床の修理を行った下顎少数歯残存の症例 木村敏之
■メインテナンス
1.トラブルに備えた設計と発生時の対応 谷本幸司・菊池利明
2.術後メインテナンスのバリエーション 瀧口喜郎
Part4 チェアサイド・ラボサイドの責任と情報の双方向化
有床義歯における診査・診断・設計の流れ 野首孝祠・安井 栄
チェアサイドからラボサイドに向けての情報発信 堤 嵩詞
ラボサイドからチェアサイドに向けての情報発信 堤 嵩詞
特別付録
特別編集 パーシャルデンチャーの歴史 永田和弘
Part1 パーシャルデンチャー設計の概念
パーシャルデンチャー設計の理念と実際 野首孝祠
パーシャルデンチャーの構成要素 山下秀一郎・五十嵐順正・田村利政
パーシャルデンチャーができるまで──印象と咬合採得を中心として 真鍋 顕
プロビジョナルデンチャーからの移行 瀧口喜郎
Part2 構造製作と歯科技工
初診から診断が決まるまで 川崎貴生・三浦美文
チェアサイドからの指示情報の三次元化にあたっての構造製作 松平 浩
顎堤と人工歯との関係 川畑直嗣
パーシャルデンチャー製作に関する諸精度――印象材-模型材の寸法精度と鋳造精度および重合精度 喜多誠一・野首孝祠
ラボサイドでの歯科技工物のチェック 堤 嵩詞
パーシャルデンチャー設計の際の臨床的工夫
1.レジン床義歯と金属床義歯 長島 正・野首孝祠
2.キャストクラスプとワイヤクラスプの選択 安井 栄・池邉一典・野首孝祠
3.審美性を重視したレジンコーティングクラスプ 吉備政仁・野首孝祠
4.支台歯が天然歯の場合と人工歯の場合 小野高裕・野首孝祠
Part3 症例から考える臨床の流れ
■両側性遊離端欠損への対応例
1.上顎スイングロックアタッチメントを応用して審美性および発音の改善を図った症例 深水皓三
2.臼歯部の咬合支持の喪失に対しパーシャルデンチャーを用いて上顎前歯部の保護を図った症例 吉備政仁・野首孝祠
3.リジッドなデンチャーと咬合面一体型のパーシャルデンチャーを用いた2症例 瀧口喜郎
4.治療用義歯で得られた咬合位を正確に再現したパーシャルデンチャーを用いた症例 葭田秀夫
■片側性遊離端欠損への対応例
1.両側性支持の可撤性パーシャルデンチャーで対応した症例 法花堂 治
2.支台歯への負担より違和感の解決を優先させた症例 森本達也
■片側性遊離端様欠損への対応例
両側性遊離端欠損に対し片側のみパーシャルデンチャーで対応した症例 柳川 隆
■遊離端欠損を含む症例へのコンビネーション補綴による対応例
1.すべてのパーツを可変要素にした設計 斎藤純一
2.支台歯の負担能力を考慮した義歯の設計 須貝昭弘
■前歯部欠損への対応例
1.低位咬合による審美障害を改善した症例 上濱 正
2.25年経過中の上顎前歯義歯および咬合支持が悪化した下顎片側遊離端義歯 宮地建夫
■多数歯欠損への対応例
1.臼歯部咬合崩壊症例への上顎パーシャルデンチャーによる対応 藤関雅嗣
2.違和感と義歯の回転と強度設計で悩んだすれ違い咬合の症例 宮地建夫
■特殊症例への対応例
1.被蓋が大きく早期の咬合崩壊が予測された症例への対応 野嶋昌彦
2.金属床の修理を行った下顎少数歯残存の症例 木村敏之
■メインテナンス
1.トラブルに備えた設計と発生時の対応 谷本幸司・菊池利明
2.術後メインテナンスのバリエーション 瀧口喜郎
Part4 チェアサイド・ラボサイドの責任と情報の双方向化
有床義歯における診査・診断・設計の流れ 野首孝祠・安井 栄
チェアサイドからラボサイドに向けての情報発信 堤 嵩詞
ラボサイドからチェアサイドに向けての情報発信 堤 嵩詞
特別付録
特別編集 パーシャルデンチャーの歴史 永田和弘