やさしさと健康の新世紀を開く 医歯薬出版株式会社

発刊にあたって
 “いつもと違う色のオシッコが出た”と言って,ときに尿を持参し,診療機関を訪れる例をよく見かけます.また,尿を冷蔵庫保存しておいたら黒色化が増強し,悪性黒色腫やアルカプトン尿症が発見された,尿試験紙が普段見られぬ着色を示したので精査したところ薬尿であった,といった事例は,尿検査と色調とが不可分の存在であることを物語っています.
 さて,このたび『月刊 Medical Technology別冊』として『新・カラーアトラス尿検査』を上梓出来る運びとなりました.
 前版の『カラーアトラス尿検査』(監修:高橋正宜,伊藤機一)は 1995年10月の発刊ですから,早くも9年の歳月が過ぎたことになります.この間,無侵襲で,試料として安全そのものである基本的な尿検査も,他の多くの臨床検査と同様,多大な進歩を遂げてまいりました.たとえば,2000 年の『JCCLS尿沈渣検査法(Yellow Book)』の発刊,2003 年の尿試験紙表示法統一の達成,尿中有形成分自動測定装置の普及など,枚挙にいとまがないほどです.
 今回の執筆者は,前版とは一部異なっていますが,いずれも尿検査に造詣の深い,わが国で指導的立場にある腎臓内科専門医,臨床検査専門医,臨床検査技師の方々です.冒頭に記したように,尿検査と色調(カラー写真)との結び付きがかくも大きく,これら日常尿検査から多大の身体情報が得られるということを読者の方々に少しでもお汲み取りいただければ,編者にとって望外の喜びです.
 本別冊発刊にあたり,編者の責任において語句の統一,最終的な臨床検査医学的チェックを行いましたが,編者の知識不足による記載もあるかと思われます.賢明な読者諸氏の忌憚のないご意見をお待ち申し上げております.なお,発刊にご協力いただいたメーカーのご担当者に感謝の言葉を,そして編集にご尽力いただいた医歯薬出版(株)編集部の桃井輝夫氏にこの場を借りて謝意を表します.
 2004年8月
 編者 伊藤機一
 野崎 司
月刊Medical Technology別冊 新・カラーアトラス尿検査 CONTENTS

■I.総論
 1.最近の尿検査の動向 伊藤機一
 2.検尿の勧め 飯野靖彦
 3.腎の生理と尿検査 富野康日己
 4.尿の採集法・保存法・容器 野崎 司・伊藤機一
■II.各論
1.一般検査
 肉眼的性状―色調,混濁― 今井宣子
 尿試験紙法 高橋勝幸・ 伊藤機一
 尿試験紙法における異常発色,着色 今井宣子
 尿試験紙法以外の尿定性試験 今井宣子
 代謝異常と尿検査 鈴木 健・大和田 操
2.生化学検査 芝 紀代子・町井涼子
 総蛋白測定法
 尿蛋白分画測定法
 アルブミン測定法
 尿中酵素―NAG測定法
 妊娠検査薬
 排卵予知検査薬(尿中LH検出検査薬)
3.腎機能検査 富野康日己
4.尿の微生物学的検査 三澤成毅・三宅一徳
5.アトラス尿沈渣の実際
 尿沈渣標本作製マニュアル 稲垣勇夫
 血球類 油野友二・佐藤 俊
 上皮細胞類 八木靖二
 円柱類 宿谷賢一
 結晶・塩類 稲垣勇夫・清島 満
 微生物・寄生虫類 野崎 司・伊藤機一
 その他の成分 野崎 司・伊藤機一
6.尿検査と精度管理 今井宣子
7.尿検査と先端技術
 全自動尿中有形成分分析装置UF-100 東野良昭・石井 剛・中山篤志
 6800 形日立尿自動分析装置 滝 美樹
 全自動尿中有形成分分析装置U-SCANNER 舛岡正二郎・勝間祥行・手嶋眞一

 話題 尿による乱用薬物スクリーニング検査 伊藤機一・野崎 司
付録
 1.尿検査の基準値・異常値と臨床的意義 伊藤機一・野崎 司
 2.各社尿試験紙色調表一覧