序文
日本において理学療法学教育が3 年制各種学校として開始されたのは,1963 年である.当初の指定規則(カリキュラム)は,科目ごとに時間数で定められており,その後,6 回改正されてきた.1999 年には教育の規制緩和の一環として「大綱化」と称し,時間数から単位制度になった.これは教育制度間の垣根を超えて,専修学校から大学への編入や大学院への進学に際して,互換性をもたせることに資することであった.それから19 年ぶりとなる2018 年10月に,「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」(カリキュラム)が新たに改正され,2020 年4 月から施行される.これは,前回の改正の意図を踏まえながらも,理学療法士に求められる資質のさらなる向上を目的にしている.
前回のカリキュラムの総単位数は93 であり,基礎分野14,専門基礎分野26,専門分野53(うち臨床実習18 単位)であった.今回の改定で総単位数は101 となり,基礎専門14,専門基礎分野30,専門分野57(うち臨床実習20 単位)となった.専門分野のなかに「理学療法管理学」が2 単位追加され,専門基礎分野の科目のなかで予防に関連しても教授されることになった.現在の大学では124 単位以上が卒業要件であるが,3 年間の教育で101 単位を履修するためには,各期に16.8 単位の履修が必要になり,教育は極めて苛酷な状況になろう.なお,2019 年度には新たに4 年制「専門職大学」が設置される予定であり,その成果が期待される.
本書を発刊する意図は,新たな科目として加わった「理学療法管理学」の教材として,初学者が学習しておく必要のある事項を考慮して整理することである.これまでも理学療法管理に関する知識は,「理学療法概論」のなかで教授されていた.しかし,本書では,狭義の「管理」だけではなく,その概念と方法論とを広義に理解・認識することで,将来的に理学療法士として,それぞれの現場で活動する際にも活かされることに配慮した.さらに,理学療法学教育に関連した事項も含めたのは,専門分野では教育水準が基盤となって学術や職能の発展につながるからである.
なお,本書では引用文献,法律用語などを除き,「訓練・障害・障害者」の使用を控え国際生活機能分類(ICF)に準じた用語を使用していることを付記しておく.
2018 年11 月
編著者代表 奈良 勲
日本において理学療法学教育が3 年制各種学校として開始されたのは,1963 年である.当初の指定規則(カリキュラム)は,科目ごとに時間数で定められており,その後,6 回改正されてきた.1999 年には教育の規制緩和の一環として「大綱化」と称し,時間数から単位制度になった.これは教育制度間の垣根を超えて,専修学校から大学への編入や大学院への進学に際して,互換性をもたせることに資することであった.それから19 年ぶりとなる2018 年10月に,「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」(カリキュラム)が新たに改正され,2020 年4 月から施行される.これは,前回の改正の意図を踏まえながらも,理学療法士に求められる資質のさらなる向上を目的にしている.
前回のカリキュラムの総単位数は93 であり,基礎分野14,専門基礎分野26,専門分野53(うち臨床実習18 単位)であった.今回の改定で総単位数は101 となり,基礎専門14,専門基礎分野30,専門分野57(うち臨床実習20 単位)となった.専門分野のなかに「理学療法管理学」が2 単位追加され,専門基礎分野の科目のなかで予防に関連しても教授されることになった.現在の大学では124 単位以上が卒業要件であるが,3 年間の教育で101 単位を履修するためには,各期に16.8 単位の履修が必要になり,教育は極めて苛酷な状況になろう.なお,2019 年度には新たに4 年制「専門職大学」が設置される予定であり,その成果が期待される.
本書を発刊する意図は,新たな科目として加わった「理学療法管理学」の教材として,初学者が学習しておく必要のある事項を考慮して整理することである.これまでも理学療法管理に関する知識は,「理学療法概論」のなかで教授されていた.しかし,本書では,狭義の「管理」だけではなく,その概念と方法論とを広義に理解・認識することで,将来的に理学療法士として,それぞれの現場で活動する際にも活かされることに配慮した.さらに,理学療法学教育に関連した事項も含めたのは,専門分野では教育水準が基盤となって学術や職能の発展につながるからである.
なお,本書では引用文献,法律用語などを除き,「訓練・障害・障害者」の使用を控え国際生活機能分類(ICF)に準じた用語を使用していることを付記しておく.
2018 年11 月
編著者代表 奈良 勲
序文(奈良 勲)
1章 管理・マネジメントの概観─理学療法士の視座から─
(奈良 勲)
1 理学療法士の法律と定義および国際生活機能分類
2 理学療法士の教育施設の変遷
3 理学療法士と管理・マネジメント
4 健康の定義
5 管理の類似用語の意味と概念
6 高等教育における3 つの方針
7 おわりに
コラム 国際的な理学療法士組織に関わる立場から(内山 靖)
2章 理学療法管理学とは
(橋元 隆)
1 「理学療法管理学」新設の経緯
2 「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」改正の概要
3 理学療法管理学の授業で学ぶこと
4 なぜ理学療法管理学が必要か
5 コミュニケーションのもつ力─頑張るのは誰?─
コラム 学生の基礎学力補充教育(石橋敏郎・廣滋恵一)
コラム 臨床実習中にトラブルが生じたら(久保 晃)
3章 理学療法士の職業倫理
(大峯三郎)
1 はじめに
2 職業倫理とは
3 理学療法士の職業倫理
4 おわりに
コラム 日本理学療法士協会会長の立場から(半田一登)
4章 組織運営とマネジメント
(橋元 隆)
1 組織とは
2 組織的集団(organized group)と非組織的集団(unorganized group)
3 病院組織と管理
4 医療安全管理のための取り組み
5 院内感染
コラム 災害・緊急時の避難所などにおけるマネジメント(小泉幸毅)
コラム 産業保健領域における理学療法管理の重要性(藤村昌彦)
5章 理学療法士の職場管理
(橋元 隆)
1 ヒトの管理
2 人材育成
3 モノの管理(設備を含む)
4 経済性の管理
5 情報の管理
6 研究・教育の管理
7 自己管理
コラム 理学療法士の教育課程の管理運営(淺井 仁)
6章 理学療法業務のマネジメント
(橋元 隆)
1 理学療法業務
2 診療録
3 処方箋
4 理学療法診療記録に含まれる主な内容
5 理学療法診療録の作成と保存目的
6 説明と同意
7 医療機能の分化とチーム医療
8 理学療法業務の質のマネジメント
コラム 学生主体のボランティア活動を介した地域への貢献(神谷晃央・木林 勉)
コラム 臨床教育におけるマネジメントのあり方(佐々木賢太郎・木林 勉・野口雅弘)
7章 教育・研究のマネジメント
(橋精一郎)
1 理学療法学教育に必要なマネジメント能力
2 教育現場・臨床実習現場でのハラスメント対策
3 理学療法研究のマネジメント
コラム 学生のメンタルヘルス・マネジメント(山本大誠)
コラム 学生の倫理・哲学的思考性の啓発(堀 寛史・森田恵美子・奈良 勲)
8章 保健・医療・福祉を取り巻く諸制度とマネジメント
(橋元 隆)
1 社会保障制度
2 社会保険制度
3 医療保険制度
4 介護保険制度
5 年金制度
6 雇用制度
7 労働者災害補償制度(労災保険)
8 生活保護制度
9 生活支援に関わる法的制度
10 健康増進法
11 おわりに
コラム 政治に関わる理学療法士の立場から(小川克巳)
9章 疾患別・病期別の理学療法マネジメント
1.疾患別のリスクマネジメント(森山英樹・井澤和大)
2.急性期病院での理学療法マネジメント(嶋田誠一郎)
3.回復期病院での理学療法マネジメント(津田浩史・山口昌夫)
4.介護老人保健施設での理学療法マネジメント(奈良和美)
コラム 生涯学習のマネジメント〜理学療法を学ぶ学生諸君へ〜(伊橋光二)
10章 生活期を支援する理学療法マネジメント
1.慢性期脊髄損傷の理学療法マネジメント(須堯敦史)
2.慢性期呼吸器疾患の理学療法マネジメント(神ア良子)
3.循環器疾患の理学療法マネジメント(日下さと美・高橋哲也)
4.重症心身障害児・者のケア(小児期から高齢期まで)(烏山亜紀・河ア洋子)
コラム 地域包括ケアに準じた虚弱高齢者の理学療法マネジメント(平岩和美)
コラム 行政における理学療法マネジメント(久保かおり)
11章 理学療法学を専攻する学生へのメッセージ
(奈良 勲)
1 己の心身の健康管理
2 専門職を目指す
3 共感
4 苦難に耐える
5 知と技の融合と無知の知
6 主体的な幅広い探究心を実践的な活動へ
7 コミュニケーションは必須
8 「刷り込まれた文化の功罪」を知り自己改革に挑む
9 次世代を背負う逞しい理学療法士に!
10 アルバイト
11 おわりに
コラム 理学療法学科卒業生の就職活動におけるマネジメント(村上忠洋・杉浦昌己)
索引
1章 管理・マネジメントの概観─理学療法士の視座から─
(奈良 勲)
1 理学療法士の法律と定義および国際生活機能分類
2 理学療法士の教育施設の変遷
3 理学療法士と管理・マネジメント
4 健康の定義
5 管理の類似用語の意味と概念
6 高等教育における3 つの方針
7 おわりに
コラム 国際的な理学療法士組織に関わる立場から(内山 靖)
2章 理学療法管理学とは
(橋元 隆)
1 「理学療法管理学」新設の経緯
2 「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」改正の概要
3 理学療法管理学の授業で学ぶこと
4 なぜ理学療法管理学が必要か
5 コミュニケーションのもつ力─頑張るのは誰?─
コラム 学生の基礎学力補充教育(石橋敏郎・廣滋恵一)
コラム 臨床実習中にトラブルが生じたら(久保 晃)
3章 理学療法士の職業倫理
(大峯三郎)
1 はじめに
2 職業倫理とは
3 理学療法士の職業倫理
4 おわりに
コラム 日本理学療法士協会会長の立場から(半田一登)
4章 組織運営とマネジメント
(橋元 隆)
1 組織とは
2 組織的集団(organized group)と非組織的集団(unorganized group)
3 病院組織と管理
4 医療安全管理のための取り組み
5 院内感染
コラム 災害・緊急時の避難所などにおけるマネジメント(小泉幸毅)
コラム 産業保健領域における理学療法管理の重要性(藤村昌彦)
5章 理学療法士の職場管理
(橋元 隆)
1 ヒトの管理
2 人材育成
3 モノの管理(設備を含む)
4 経済性の管理
5 情報の管理
6 研究・教育の管理
7 自己管理
コラム 理学療法士の教育課程の管理運営(淺井 仁)
6章 理学療法業務のマネジメント
(橋元 隆)
1 理学療法業務
2 診療録
3 処方箋
4 理学療法診療記録に含まれる主な内容
5 理学療法診療録の作成と保存目的
6 説明と同意
7 医療機能の分化とチーム医療
8 理学療法業務の質のマネジメント
コラム 学生主体のボランティア活動を介した地域への貢献(神谷晃央・木林 勉)
コラム 臨床教育におけるマネジメントのあり方(佐々木賢太郎・木林 勉・野口雅弘)
7章 教育・研究のマネジメント
(橋精一郎)
1 理学療法学教育に必要なマネジメント能力
2 教育現場・臨床実習現場でのハラスメント対策
3 理学療法研究のマネジメント
コラム 学生のメンタルヘルス・マネジメント(山本大誠)
コラム 学生の倫理・哲学的思考性の啓発(堀 寛史・森田恵美子・奈良 勲)
8章 保健・医療・福祉を取り巻く諸制度とマネジメント
(橋元 隆)
1 社会保障制度
2 社会保険制度
3 医療保険制度
4 介護保険制度
5 年金制度
6 雇用制度
7 労働者災害補償制度(労災保険)
8 生活保護制度
9 生活支援に関わる法的制度
10 健康増進法
11 おわりに
コラム 政治に関わる理学療法士の立場から(小川克巳)
9章 疾患別・病期別の理学療法マネジメント
1.疾患別のリスクマネジメント(森山英樹・井澤和大)
2.急性期病院での理学療法マネジメント(嶋田誠一郎)
3.回復期病院での理学療法マネジメント(津田浩史・山口昌夫)
4.介護老人保健施設での理学療法マネジメント(奈良和美)
コラム 生涯学習のマネジメント〜理学療法を学ぶ学生諸君へ〜(伊橋光二)
10章 生活期を支援する理学療法マネジメント
1.慢性期脊髄損傷の理学療法マネジメント(須堯敦史)
2.慢性期呼吸器疾患の理学療法マネジメント(神ア良子)
3.循環器疾患の理学療法マネジメント(日下さと美・高橋哲也)
4.重症心身障害児・者のケア(小児期から高齢期まで)(烏山亜紀・河ア洋子)
コラム 地域包括ケアに準じた虚弱高齢者の理学療法マネジメント(平岩和美)
コラム 行政における理学療法マネジメント(久保かおり)
11章 理学療法学を専攻する学生へのメッセージ
(奈良 勲)
1 己の心身の健康管理
2 専門職を目指す
3 共感
4 苦難に耐える
5 知と技の融合と無知の知
6 主体的な幅広い探究心を実践的な活動へ
7 コミュニケーションは必須
8 「刷り込まれた文化の功罪」を知り自己改革に挑む
9 次世代を背負う逞しい理学療法士に!
10 アルバイト
11 おわりに
コラム 理学療法学科卒業生の就職活動におけるマネジメント(村上忠洋・杉浦昌己)
索引